Interview: ほんじょうれいこ

「美しく、まっすぐに生きたい」

 

“ 魂の自由を描く „

 
ほんじょうさんの絵は、お花や猫など自然のモチーフが多い印象ですが、子どもの頃から絵を描くのは好きでしたか?また、絵を描くスタンスや作風はずっと変わらない感じでしょうか?
 
 
ー子どものころから絵を描くのは好きで、近所にある絵画教室に通っていました。母が美術館が好きで、よく連れて行ってくれたのが今思えばとても良かったと思います。
中学は美術部に入部。高校ではすでに美大に行くつもりだったので、美大受験専門のコースに入学しました。美大に入った頃には風景画を良く描いていましたが、卒業してからすぐに今のベースになるような植物画を描くようになりました。
12~3年前に抽象画に寄ったときもあったのですが、この7~8年で今のような半抽象画の作風になりました。
 
実は東日本大震災のころ、作風が不穏な感じになったことがあり、暗く沈んでいた時期もあったんです。でも、絵ってもっと優しいものじゃないといけないんじゃないかと思い直して、それ以降はそれまで以上に明るい絵を描くようになりました。
 
 
ほんじょうさんは魂の自由を描きたいとおっしゃられていますが、それはどういうところから、そう思われるようになったのでしょうか?
 
 
ー昔から社会問題に興味があったんです。本来人は平等なはずなのに例えば男女差別などのように差をつけられたり、優位に立とうとしたり、世界では理解に苦しむことが起こっています。それはもしかしたら肉体という限界があるからなのかもしれないと思い、それなら肉体を取ってしまえば魂は分かり合えるのでは?と思いました。
 
わかりやすいものではなく、ボーダーラインがなくなるような、あいまいさを含んだ絵を描きたいと思います。
 
 
 

“ 様々な表現に影響を受けて „

 
 
プロフィールを拝見しましたが、絵に限らず様々な音楽や本、演劇、映像作品などにインスパイアされることが多いようですね。例えばどんな作品にこれまで影響を受けてきましたか?
 
 
ー映像作品では日本の映画やフランス映画も好きで、特にゴダールが好きです。
小説では、江國香織さんにとても影響を受けています。「融点」という作品は彼女の『神様のボート』という小説からインスピレーションを得て描いたものです。
 
 


 
 
江國香織さんは、はっきりとわかりやすく書くというよりは曖昧でわかりにくいような、繊細な感覚の世界を描いていて、インスピレーションを掻き立てられます。
 
また、音楽も好きで、一番好きなアーティストはスピッツなのですが、「これを絵にしたい!」と強く感じたのはUruさんの歌声です。ファルセットがとても美しくて、、、、。絵を描かずにはいられませんでした。
これはバラを一輪だけ描いたその名も「Falsetto」という作品になりました。
 
 


 
 
プロフィールには職業はイラストレーター/美術講師で、職業として「画家」を名乗らないということも書かれていますが、これはほんじょうさんにとってどのような思いがあるのでしょうか?
 
 
ー仕事をもらうための絵を描きたくない、という思いです。イラストレーターの仕事はお客様の意向に添うように作品を作ります。お客様の望みを叶える仕事です。私にとって絵を描くとは、内側から湧き上がるものであって、他者の期待に沿うことではないのです。
 
ただ写し取るだけではなく、哲学とか、言葉にならない情熱とか、そういうものを表現したい。
職業ではなく、生き方=表現者でありたいと思っています。
 
 
 

“ 日常の中にある美しさ „

 
 


 
 
ほんじょうさんは、普段学校で美術の講師をされていますね。それはご自分の表現活動に活かされていると感じますか?
 
 
ーはい、とても役立っています。全体的なことをすべてわかっていないと教えられないので、常に勉強ですね。立体は苦手意識があったのですが、知らないことも調べて試行錯誤して教えています。でも、もともと器用な方なので苦になりませんし、新しい発見にもなります。
 
 
地に足をつけて生きていらっしゃる感じがします。作品のインスピレーションが来るタイミングなど、何かありますか?
 
 
ーそうですね、先ほどお話した通り音楽やいろいろな作品に触れたときもそうですが、アイディアが来るのは寝入りばなとか、お風呂に入っているときとか、そういう日常のふとした瞬間が多いですね。
 
 
日常生活はアーティストにとっても大切なのですね。お花の作品が多く、素直に「美しいなぁ」と感じる作品が多いですが、ご自分を花にたとえると何だと思われますか?
 
 
ー(笑)考えたことがなかったですが、黄色いバラかな。
生家に黄色いバラの木が植えてあったのですが、実は由来がありまして。
私が生まれたときに父が母に黄色いバラをプレゼントしたそうなんです。
そのせいか、バラが一番好きな花ですし、私自身も美しく、まっすぐに生きたいと思っています。
 
 
どこか凛とした佇まいのほんじょうさんは、優しさを愛し、素直で自然体の心地よさを持っている女性でした。
 
その裏にある繊細な感受性と、日常を愛しながらこだわりを持ちすぎない姿勢が、彼女の作品をまっすぐに美しいものにしている気がしました。
だからこそ彼女の作品は人を心地よくさせるのかもしれません。

 
 

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