WORKS作品
INTERVIEWインタビュー
“その子らしさ”が伝わる絵を目指して
日本ならではの絵画を学んだ大学時代
――絵を描き始めたきっかけについて教えてください。
「子どもの頃から絵を描くのが好きで、最初は漫画家になりたいと思っていたんです。中学時代は、女子美術大学付属高校に進学するため予備校に通っていて、そこで本格的な絵画を勉強。予備校での学びをきっかけに、漫画よりも絵画に対する興味が大きくなっていきました。その後、無事に希望校へ進学し、高校では水彩画や油絵などを基礎から学びました」
――大学では日本画コースを選択していらっしゃいますが、その理由はなんですか?
「美大附属の高校でしたが、通っているうちに『外の大学で学んでみたい』と考えるようになり、受験勉強を始めました。そのとき、せっかく日本人として生まれたのだから日本画を勉強したいと思ったんです。日本画は、海外からの影響を受けながらも独自の文化として発達した日本ならではの技法です。それを深く学びたくて、大学では日本画コースを選択しました」
――大学で日本画に触れたときの印象はいかがでしたか?
「日本画の知識自体はありましたが、実際に描き始めたらとても大変でした。日本画はとにかく作業工程が多く、色を作るにしても自分で調合する所から始めます。あまりの工程の多さに、大学時代は『面倒くさい…』と思ったこともあります(笑)。でも同時に、興味深い世界だとも感じました。工程の一つ一つに作家の心を込められるので、それが日本画の魅力だと感じています」
自分の目で見て湧き上がる思いを表現
――最近は魚などの水生生物を描くことが多いと伺いました。
「私の祖父が魚好きで、実家の庭には池がありました。新型コロナウイルス感染症が流行して外出しづらくなったとき、改めて自分が好きなものを見つめ直したら、子どもの頃から身近な存在だった魚に惹かれていることに気がついたんです。『この子たちを作品にしていきたい』という思いが強くなり、そこから魚の絵を描くようになりました」
――魚の作品を手掛ける際は写真や動画などを見て描かれるのでしょうか?
「水族館へ行って、目の前で泳ぐ魚を観察する所から始めます。私は大学で、日本画家の松本哲男先生に師事していたのですが、先生が写生を大切になさる方だったんです。先生は現場で写生するときに『大地の息吹を感じたいから』と、地面に直接座って、その温もりを感じながらスケッチされていました。そうした先生の教えがとても腑に落ちて、それ以来、自分が感じたものを作品に反映させることを大切にしています」
――写生にかける時間は、だいたいどれくらいですか?
「具体的な時間はまちまちで、写生そのものよりも魚を観察する時間の方が長いです。水族館へ行ったらすぐにスケッチするのではなく、まずはじっくりと観察するところから始めます。眺めているうちに『この子はここで寝るクセがある』とか、『この子とあの子は仲がいい』など、それぞれの特徴がわかってきます。よく、魚には個性がないと言われることがありますが、私は子どもの頃から魚を見てきたためか、とても個性的だと感じています。魚を見つめているうちに湧き上がってくる感覚を絵にすることが、作品を作る上で重要なポイントになっています」
唯一無二の輝きが伝わる作品を
――とても丁寧に、時間をかけて作品と向き合っていらっしゃるんですね。制作に明け暮れる日も珍しくないのでしょうか?
「今は家族の介護や作家以外の仕事もしているため、時間を確保するのが難しいときが多々あります。でもスキマ時間を上手く活用しながら、作品づくりを進めています。これまで日本美術院展覧会(院展)で何度か入選させていただきましたが、実は風景画がほとんどなんです。今後は魚の絵で入選することを目指しています」
――魚の絵を描くようになってから、周囲の評価は変わりましたか?
「以前の絵を知っている方から、『魚を描くようになってから、絵が生き生きしている』と言われたことがあります。また、作品を購入していただいた方からも『まるで魚が生きているようで、心が楽しくなる』と言われて、とても嬉しく思っています」
――これから魚の絵を通して、どんなことを実現していきたいですか?
「やはり魚の個性というか、“その子ならではの魅力”を表現できる作家になりたいです。ときどき、『水族館に行ったりしないで、写真を見て描いた方が楽じゃない?』と言われることがありますが、実際に出会って、観察して、そこから湧き上がった思いを乗せてこそ作品として成立すると考えています。造形としての美しさを伝えるだけでなく、唯一無二の“その子らしさ”が伝わるような作品を作り続けていきたいです」
EXHIBITIONS展覧会情報
2023.07.01 ~ 2023.07.31
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