日本文化を継承するアート販売Webメディア

Interview: 郷崎基

デジタルアートがもっと気軽に受け入れられる一端を担いたい

 
 

“ 成長の瞬間を捉える子どもの絵を描く幸せ „

 
 
「デジタルアートは、描いたものを重ねながら制作していくのが基本です。まず線画にベタ塗りをして、その上に絵を重ねていく、この一つひとつの工程がレイヤーとなり、1枚の絵を仕上げるために私が使用しているレイヤー数は130を超えます。覆い焼きや加算などレイヤーモードを調整することで、効果に違いが出てきます。あとはアナログと一緒で、とにかく納得がいくまで描き加えます。ただ、アナログだと1枚の中で制作するのに対して、部分ごとに分けながら、重ねて制作していくのがデジタルアートの特徴です。」
 
幼稚園に入園される前の幼少期から絵を描き始めてきた郷崎基さん。現在メインで行っているデジタルアートを始めたのは、4年程前。昨年の3月頃、デジタルアートをインスタグラムに投稿していたところ、ある海外出展の仲介会社様からオファーがあり、それが画家活動本格化の転機だったと話す。その後、国内の展示会へ出展したり、個展を開いたりする機会も増え、大賞を取った経験もある実績者。
 
「描く絵のスタイルはアイコニックなものやリアル風のものまで様々ですが、私が共通してずっと描いているのは子どもの絵ですね。今の私にとって、自分の子どもは非常に大きな存在なのです。目の前で1人の人間が成長していく、子どもが見せてくれる表情や動き、言動などそういった成長一つひとつは、今しか見られない、私にとって貴重なものです。見ているだけで、この先何にでもなれるという可能性の塊のように見えます。子どもが成長して後で振り返った時に、私の絵から何か懐かしいものを感じ取ってほしいと思います。本人が歩んできた自分の子ども時代の懐かしさを感じ、思い出してほしいですね。また、未来に多くの可能性を秘めていることを気づかせてあげる絵でもありたいとも思っています。」
 
 

 
 

“ 地元個展で感じた喜びと絵画に対する葛藤 „

 
 
「画業をしてきて一番嬉しかったのは、地元で個展を開いたときに見てくださった方の生の声が聞けたことです。遠いところではなく身近なところで、自分の描いた絵を人に見てもらえる場があり、見に来てくださる方の感想が直接聞けるのは格別に嬉しいことでした。さらに、その場で手に取っていただける光景を見て、感動したことを今でも覚えています。購入していただいた方の家に飾られることを思ったときに、制作して良かったなという気持ちになりました。また、見てくださった方の感じ取ってもらうものが、自分の意図したものではないことだったときに、気づきを得られるのも嬉しいですね。」
 
絵に自分の内面が露骨に現れることに対して、悩むこともあるそうだ。今回の絵は、なんだか裏がありそうな作品だなという時に、悩みや何か不安・不満などを抱えているということも。自分との対話だからきつい・難しいと思う一方で、向き合いたいからこそ絵を描いて楽しんでもいるそうだ。名古屋市美術館へよく足を運んでいたと話す郷崎基さんから、影響を受けた画家について伺った。
 
「好きな画家は挙げだしたらきりがないのですが、ルネ・マグリットの「光の帝国」シリーズ、クロード・モネの「睡蓮」シリーズ、東山魁夷の「白馬の森」シリーズの3作品は鉄板で好きですね。また、「Belle&Boo」や「ピーターラビット」「PEANUTS」などの作品は、自分の画家活動をする上でも影響を受けました。プロの絵は真似できるものではないですが、自分の感性にリフレクションさせる、インスピレーションを得ることに寄与しています。」
 
 

 
 

“ 広い世界でアートを楽しみたい „

 
 
「人間には誰しも知能があり、様々なことを考えるからこそ、人によって違う世界が頭の中にあるのだと思います。それを絵に表現したとき、それぞれ違う世界が映し出されるのです。私にとって絵を描くことは、頭の中で完結するはずの1人遊びのような、考えることができる生き物に許された特権だと思っています。」
 
海外出展の仲介会社様との繋がりがあり、台湾への出展についてのオファーもある郷崎基さん。ただ、現在は息子を育てる1児の母でもあり自身が渡航できないため、今は難しいと話す。将来的なビジョンは、国内だけではなく海外に自身の絵を広げ、多くの方に見ていただきたい想いを巡らせている。最後に、海外市場を含めた今後の画業に対する展望をお聞きした。
 
「活動範囲や制作する絵の範囲も、狭い世界で終わらせたくないと思っています。日本はアートの場として素晴らしいものの、生活にアートを取り入れる習慣が薄く感じます。それも含めて、将来的には海外でも活動したいですね。現在のアート市場で中心となっているのが、抽象画あるいは風景画、この2本柱ですが、他にも表現の仕方はたくさんあります。だからこそ、私はこれらだけに留まりたくないと思っています。デジタルアートも、もっと気軽なものとして受け入れてもらえるような市場にさせたいと構想しています。デジタルアート市場は、まだまだ周知されていないので、その一端を私が担っていきたいです。」
 
 

戻る