Interview: 舟木愛

「絵は、絵は人間の写し鏡だと思っています。」

 
自分を取り戻す手段としての絵―
もともと画家を目指していたわけではなく、自分を見失いかけた時期に何かを始めてみようと思ったのがスタートで、独学で描き始めたという舟木さん。

 
 
「だから画材のこともわかっていなくて、最初は家にある鉛筆やスケッチブックを使って描いていました。ご縁があって初めて個展を開催する機会をいただいたときに気持ちが変わっていきました。」
 
 

初期の鉛筆画


 
 
描いている枚数の少なさ、画力も無ければ経験もないことにコンプレックスを感じたという。
鉛筆だけでも画力のある方は素晴らしい展示が出来るが、自分にはそれが出来ないと思い知ったという。カルチャーセンターで石膏デッサンを学ぶことから始まり、単発のスクールやスケッチ会への参加など、少しずつ絵についての教養を増やしていった。

 
 
「世の中にはこういう絵の描き方があるんだな、と。当時、永山裕子さんの水彩画に感銘を受けて、水彩画を描いていた時期もありました。ですが水彩画はたとえ永山先生のように上手に描ける日が来たとしても永山先生がすでに画風を確立されているので、同じように描いても誰にも見てもらえないんじゃないかという気がして。自然と水彩画をあまり描かなくなりました。」
 
 
自分が表現したい世界に最適な画材を選定するには“様々な作品を見る”という作業がある。インスタグラムで情報収集したり、銀座の画廊やギャラリーカフェなど、気になる展示に積極的に足を運び、「この絵は何で描いているのだろう」「どういう順番で描いているのだろう」と、推理しながら絵を観察するようになったという。そんな経緯から現在は油彩画を中心としているが、実は舟木さんの伯父が油彩画家だ。
 
 
「そういえば伯父が油彩画家だったことを思い出して。伯父の展示会を家族で見に行っていました。今でも油絵の匂いを嗅ぐと当時の展示会の空間を思い出します。」
 
 
メインとする画材が決まり具体的に動き出した舟木さん。鉛筆とスケッチブック描き始め当時から3年が経っていた。「絵を描いているときはすごく正直で素直なんですよね。言葉よりも誤解を招かずに相手にまっすぐ届けることができると思っています。」という舟木さんだが、ダイレクトに心の中が画面上に描き出されてしまうからこそ「気持ちをただ垂れ流すだけの作品」にならないよう注意が必要だとも語る。
 
 
「冷たい手」


 
 
 
「昔は感情をそのまま吐き出すことが表現だと思っていたので、怖くて暗い絵になったりすることもあって、そんな作品を発表していました。年齢を重ねるごとに悩みも深刻になったり、その結果、自分のコントロールも上手にできなくなったりして。そのときに絵を描いたら楽になったところから私の表現活動は始まっています。自分が何を考えて、どこに意志があるのかなどを整理することができる。だから描いているのですが、自分の心の傷だけを表現する絵のその先に何があるのだろうと考えるようになりました。傷のその先のストーリーまで考えて見せないと、気持ちがどんどん闇に飲まれてしまいそうな気がして。苦しいときって大抵周りに流されそうになっているときで、そんなときに絵を描くことで精神統一が出来ます。私にとって絵を描くことは、自分と向き合う時間であり、生きていく上でとても大切な時間です。
生き方とか、考え方がそのまま絵に反映されていると思います。私が変わると絵も一緒に変わります。」
 
 
舟木さんの代表作『青の森』では暗い森のその先に小さいながら「光」が描かれている。
その光に希望を乗せて表現しているが、それまでの舟木さんは光や希望を考えて絵を描いたことはなかったという。

 
 
「青の森」


 
 
 
「人生の中でどんなに希望が持てない時期があっても、孤独を感じても、それが一生続くかどうかなんて分からないです。何かをきっかけに幸せになれる日も来るかもしれない。それはきっと誰の人生にも言えることだと信じたいです。結局前向きに生きることが長い目で見て自分自身を救ってくれると思うので『希望』を持った絵を描きたいです。真っ暗な場所に停滞するだけじゃなくて、そこから違う場所へ移動出来るような表現がしたいです。」
 
 
「人間にも表情があるように自然にも豊か表現がある」と語る舟木さん。アンテナを張り巡らせ、自然から感じ取ったメッセージをいかに表現するかを模索する毎日だが近頃は森モチーフの他にも猫を描くことが多い。猫モチーフは楽しんで描ける被写体のひとつで、和やかか気持ちに生まれる感情を猫に乗せているという。
 
 
「家の事情で猫が飼えないのですが、私にとって猫はとても魅力的な存在です。お散歩の道中、出会った猫の写真を撮ってそれをモチーフに描いています。コロナ禍により外出が難しくなった今、地元をお散歩する時間がとても貴重に思えます。そんな中、道ですれ違う猫たちの姿にとても癒されている自分がいます。思わず微笑んでしまうその癒しの時間を切り取って描くことをテーマにしています。
最近、おうち時間が増えたけど仕事が忙しく、猫を飼うことができないという方から猫の絵を購入していただくことがありました。
自分の描いた絵が人の心を少しでも豊かに出来ることを知り、とても嬉しかったです。
こんな状況下ではありますが、次に個展を開催することができたら「お散歩」をテーマにコロナ禍と向き合う展示がしたいです。同じ時代を生きる人間に対して、また次の世代に『こんな時代があったんだよ、だからこういう表現を考えたんだ』と、絵描きとして何かを残せたらいいなと思います。」
 
 
「猫と椿」


 
 
 
 
舟木愛にとって“アート”とは?


 
「  心や生き様が反映されるべきもの  」
 
 

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