田村久美子

「画家」という枠に縛られずに、企業に企画やアイデアを提供したり、「出会い」を大切に誰かの一枚を見つけるお手伝いが出来ればいいな、と思っています


 

-簡単に自己紹介をお願い致します。

長野で生まれ育ち、18歳の時に美術予備校に通うため上京しました。日本大学芸術学部美術学科に進み、在学中にどうしても「美術」という枠でなく「ART」を学びたいと意識し、卒業後はロンドンに渡英しました。在学中に感じた閉塞感から、海外のアートシーンに興味を持ち始め、世界に出た時には自分の作品を自分で伝えられるようになりたいと思ったからです。それにはやはり英語を話せるようにならないと、とか。ちょうどミレニアムの景気でロンドンの現代アートがとても活気があったことも。結局ロンドンの美術学校には一年しか通わず、その後はフリーで活動していましたが、本当に人との出会いは財産だな、と思います。大変なこと、思いがけないチャンスや何でも、自分から飛び込んでいって体験することが大事だと実感出来ました。あの時の自分のバイタリティは自分でもちょっと感心してしまいます(笑)。若かったんですね。

帰国後は油絵を主な素材として作品を制作しています。ロンドンで幅広くアートを学べたことで、油彩=平面という概念を超えて、平面の可能性を広げながら自然界の花や草木が創りだす独自の空間に魅了された作品を描き続けています。2016年からはその活動をもっと企業や社会とつなげられるようにと、EnoR,LLCという会社を設立し、活動しています。

 

-絵を描き始めたきっかけはなんですか?

幼いころから「お絵描き」が好きでした。長野の田舎で育ったので、遊び場だった野山や空き地は大きなキャンバスで、枝や軽石でどこにでも落書きが出来ました。両親が小学校の教員だったこともあり、使わない図工の教材などをおもちゃの替わりに沢山与えてもらえたこと、祖父が趣味で油絵を描いていたこと、大好きな小学校の担任の先生が図工の先生だったこと、近しい叔父が版画工房をしていたので、画家の話や作品が身近なものだったこと。
自然に絵を描く機会や興味を持つことに恵まれていた気がします。

-作品にはどのような想いを込めていますか?

主な素材として油彩で描いています。それは油彩の不変的な色の美しさによって、何年も前の一枚が現代の私たちも鑑賞できるいうことに感銘を受けていることも要因です。
自然と対峙した時、なにか言いようのない畏敬の存在を感じます。それはこの世界でずっと繋がってきて、その時代時代の人々が見てきた風景が、見えない中にも体感できている神秘、偉大さであり、一枚の絵画もそういうものになり得るのではないだろうかと思っています。
受け継がれていくもののひとつとして遺る作品を生み出したいです。

-印象に残っている展覧会や出来事はありますか?

個人的には、展示のたびにとても印象深い出来事ばかりです(笑)
昨年末にインテリアショップで開催した個展のオープニングには、今までで一番沢山の方が足を運んでくださり、とても心暖まる会になりました。
オープニングというものは何回やっても緊張やプレッシャーでドキドキするものです。

最近ではネットでもアート購入は普通のことになりつつありますが、10年ほど前にはじめてネットで販売を始めた時に購入してくださった方が、その後の個展にその時お付き合いしていた方と一緒に来てくださり、ご結婚して次はお子様を連れてきてくれてと、記念になるように作品を購入してくれたり、今でも展覧会の度にご家族で足を運んでくださっているのですが、誰かの人生の一部になっているのかと思うと、本当に作家冥利に尽きるなと、励まされます。

-絵を描いていない時間(お休みの日など)は何をしていますか?

普通に過ごしています。何でもつくることが好きなので、料理を良くします。
友人を招いてご飯会をすることが多いので、その準備というか家のことをしています。
かなり普通です(笑)

-法人を立ち上げていますが、制作以外ではどのような活動をされていらっしゃいますか?

いわゆる「ひとりの画家」としての活動だけでなく、企画・提案のアイデアをまとめたり、デザイン画を制作したり、打ち合わせをしたりと、デザイナーさんに近いことをしています。
法人を立ち上げたのも、作品が公共の場や世の中に幅広く広がっていけばいいなと思ったからです。絵のマネージメントをしているので、特に「違う仕事」をしているという感覚はありません。

-影響を受けた画家さんはいますか?

沢山います! それこそ、作品に影響を受けているという意味では、特定の画家を上げるのは難しいですが、Joan Mitchell というアメリカ人の抽象表現主義の作家が大好きです。キャンバスに油彩の筆跡が残っている作品にとても惹かれます。筆跡を追うと目線というか感覚がふっと自分でも体験できるような気がします。

-画家として最もうれしかった時、最もつらかった時は?

嬉しい時は、作品が誰かの心を動かした瞬間に立ち会えた時です。個展など直接会場でお会い出来た時は勿論ですが、なにか「届いた」ことを感じられるのは本当に感動的です。
あと、自分の作品を通じて人と出会えることですね。

つらかったのは、まだ学生時代に自分が表現したい事と技術が伴わず、納得のいく作品が出来なかい歯がゆい時期がありました。それは簡単なことではなく、本当に経験や時間が必要だったんだと今は思います。
今でもありますが(笑)

-絵を描くヒントを得るために何かしていることはありますか?

ヒントはどこにでもあるので、あらゆることにアンテナを張っています。自分の興味のあること、引っかかることは後回しにしない様にしています。

-今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。また、そう思う理由なども教えてください。

これ!と一枚選ぶのは難しいですね、いつでも「自分らしい作品」を目指しています。
今回発表したものが、今の自分に一番「らしい」といいな、と思っています。

掲載済みの作品「Decipher no.1」:線と色彩で一枚の絵の中に空間を生み出すことが出来た最初の一枚です。
題名の「Decipher」とは「 読み解く・判読する」という意味です。
花や、木々のカタチは美しい。目に見える形だけでなく、目に映る印象としての線や色を読み解いてキャンバスに描きうつす。
それは瞬に、筆のストロークに置き換えられ、余白の白が光になる。見えているカタチだけを追うのではなく、そこに息づいているひとつ存在が醸し出す色や温度を読み解くように塗り重ねられていく作品です。

-これからどんなことに挑戦していきたいですか?

自分の描きたい一枚を、迷うことなく描ききれるように沢山のものを見たり、経験し続けたいと思います。
絵は人の心をとても豊かなものにします。自分の好きな一枚を所有する喜びを体験してもらいたいです。そのために、「画家」という枠に縛られずに、時には企業に企画やアイデアを提供したり、誰かの一枚を見つけるお手伝いが出来ればいいな、と思っています。

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田村久美子
自然界の花や草木が作り出す独自の空間に魅了され、油絵・平面の可能性を広げながら、そこにしっかりとした生命力を放つ作品として、ひとりひとりの「時」を思い起すことのできる作品を描き続けています。

コンセプト:自然界の花や草木が作り出す独自の空間に魅了され、油絵・平面の可能性を広げながら、そこにしっかりとした生命力を放つ作品として、ひとりひとりの「時」を思い起すことのできる作品を描き続けています。

▼経歴
【1979年】
長野県生まれ

【2003年】
日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業

【2003年 – 2005年】
渡英、Byam Shaw School of Art London在籍/修了

◆個展
【2001年】
「もののけ」 空木画廊、東京

【2007年】
「Holy Garden」 AISHO MIURA ARTS、東京

【2009年】
「out of the mountain」 AISHO MIURA ARTS、東京

【2012年】
「The remains of the moment」 H.P FRANCE WINDOW GALLERY Marunouchi、東京

【2013年】
「plant in Ananda」Hair salon Anand、東京

【2016年】
「森になる」 SMART SHIP GALLERY、東京

【2018年】
「東京 greenline」H.P FRANCE WINDOW GALLERY Marunouchi、東京

【2019年】
「RIGNA ART PORT vol.14」RIGNA Terrace Tokyo、東京
※国内外のグループ展、海外アートフェア参加多数

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