WORKS作品
INTERVIEWインタビュー
「何だってヒーローになれる」希望を運ぶ“卵ヒーロー”
再び、創作の道へ
「母親がピアノの先生をしていたため、幼少期からピアノを習っていました。音楽に触れる機会が多い環境で育ちましたが、次第に絵画表現に強く興味を持つようになり、高校卒業後は東京デザイナー学院に進学。コンピューターグラフィックを専攻し、デジタルで絵を描く技術を学びました。ですが、デジタルの制作では、描いた箇所を拡大して線と線が重なっているかを確認し修正するなど、細部の調整を重ねることが多いです。それに対し、アナログは一発勝負の要素も大きいため、大胆かつ自由な表現ができると魅力を感じるようになりました。自分にはアナログの手法が合っていることに気づきましたね」
専門学校卒業後は、デザイン業界へ進むのではなく、一般企業に勤務。それ以降、絵は趣味の範囲で続けていたとsugimaruさんはいいます。しかし、約15年前に大きな転機が訪れます。芸術全般に心を寄せる夫との結婚をきっかけに、再び創作活動へと向き合うようになっていったのです。
「最初はSNSを活用した100日間毎日投稿といった企画を何度か実施し、継続的に作品を作り続けました。2018年にはオーストラリアの展示会に出展し、翌年にはアメリカ・ロサンゼルスのビバリーヒルズ地区にあるThe Loft at Liz’sでのグループ展示にも参加しました。それ以降も毎年、名古屋、東京、大阪などで個展やグループ展示を開催。現在は主に大阪にあるギャラリーIYNを中心に作品発表を続けています」

主婦の視点から生み出された“卵ヒーロー”
「普段はアクリル絵具を用いて、“卵ヒーロー”を描いています。主婦になってからは、日常の中で価格の手ごろさや食材の価値を実感するようになりました。特に卵は、今でこそ物価高騰で価格が上がってしまっていますが、かつては10個100円ほどで購入でき、一つあれば料理の幅が広がります。それってすごいことだなと感動し、卵をモチーフにしたキャラクターを生み出すことを決めたんです。『何だってヒーローになれる』というメッセージも込めています」
身近なものから着想を得て、“卵ヒーロー”というオリジナルキャラクターを生み出したsugimaruさん。作品には“卵ヒーロー”のほかにも、動物や植物、食べ物、乗り物、星など小さくてゆるいさまざまなイラストがギュギュっと詰め込まれています。じっと見つめていると、各々のキャラクターがいまにも動き出しそう。色彩の鮮やかさとコミカルな表現によって、見る者に元気を届けます。一方で、“卵ヒーロー”のかわいらしさとは対極的な作品として、現代アートにも取り組んでいます。
「“卵ヒーロー”はオリジナルキャラクターなので、全く異なる作品を描きたいと思うこともあり、現代アートを始めるようになりました。三角・丸・四角といった図形を組み合わせ、抽象的な表現をしています。アメコミのように楽しく描く“卵ヒーロー”に対し、現代アートは自身の経験や社会情勢からヒントを得て、本質を捉えながら創作に取り組んでいます。現在進めているのは、先日訪れた森林の風景をモチーフにした作品作りです。光が差して美しい情景を絵に昇華できつつあるので、お気に入り作品に仲間入りしそうです」

“卵ヒーロー”の漫画化という新たな挑戦
「“卵ヒーロー”のシリーズで一番思い入れのある作品は『eggマン』です。卵のヒーローを書こうと考えて、初期に制作した作品で、はじめて理想の形を具現化できたものでもあるので、印象に残っています。また、eggマンは自身の夢や理想を叶えてくれる存在でもあります。例えば、私自身が宇宙に行くのは相当難しい。だけど、eggマンなら作品のなかで宇宙へと飛び立つことができる。そういった希望やワクワクが詰まった、原点の作品でもありますね」
“卵ヒーロー”の制作は、sugimaruさんにとって何より楽しい時間だといいます。それは、eggマンが単なるキャラクターではなく、夢や可能性を象徴する存在だからかもしれません。制作時は、コーヒーを飲みながら心を落ち着かせつつ、気持ちを切り替えて「描くぞ!」と意欲を高めることがルーティンだそう。また、日常的にインプットを重視し、創作へと向き合っています。
「ジャンル問わず多様な展示会に足を運ぶことで刺激をもらっていますね。加えて、水族館や動物園に行くのも好きで、動物たちの姿を観察して創作に必要なヒントをもらうことも多いです」
こうした刺激が作品へと反映され、表現の幅を広げていくのでしょう。そして、その創作の延長線上には、新たな挑戦も待っているといいます。
「今後は、同人誌という形でもいいので、“卵ヒーロー”の漫画制作に挑戦したいと思っています。そのために、多様なポージングの“卵ヒーロー”を描きつつ、ラーメンをキャラクター化するなど、新たなキャラクターも積極的に生み出していきたいです。イラストは1枚で作品が完結する一方で、漫画は複数コマを必要とします。その分のストーリーや構成の組み立ても欠かせません。そうした要素を独学で学びながら、漫画という新しい表現にも挑戦できたらうれしいです」

EXHIBITIONS展覧会情報
2023.08.01 ~ 2023.08.31
WEB GROUP EXHIBITION
鮮やかな色彩の幻想 展
色彩を主役としたアート作品を展示するアート展覧会です。 色彩を通じて、現実と非現実の境界を超えた、幻想的な世界を表現しています。 展覧会では、様々なジャンル...