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Interview: 山田浩也

目指すところは「視覚的言語」

 
 

“ わたしが絵を描き始めたころ „

 
 
「小学校の低学年から絵を始めました。近所に絵を教えているお教室があったんです。そのスクールは、もともと学校の先生をしていて美術を教えていらっしゃる先生が日曜日に開いているスクールでした。
小学校6年生までその絵のスクールに通いながら、市や県の展覧会に参加をさせてもらい賞をいただきました。それらの出来事は自分にとって、絵を続けるきっかけになっていると思います。」
 
ごく小さい頃から絵に親しんできたという山田さん。その後中学生になると進路について悩むようになり、絵を描く道がご自分にとって自然ではないかなと感じるようになったという。”自分は絵をやりたいかな”と思い立った中学生くらいの年代のことを、山田さんは”希望や夢が見えてくる年頃”だと話した。山田さんはその後22歳で芸術の本場フランスへ絵を学びにいく。約5年半のフランス滞在をこう語った。
 
「フランスで絵を学びました。ポール・セザンヌが絵を描いて暮らしたといわれる辺りの街で美術の学校(ボザール)に通い、その後芸術大学校へ進学しました。様々な国と隣り合っているフランスという地形のおかげでたくさんの人と話ができる生活環境でした。
またフランスで学んでいる間に日本で感じていたものとはまったく違う見え方でいろいろなものが自分の中に入ってきました。海を見ても、果物をみても、鮮やかに感じましたね。味ももちろん違いましたし。色彩に溢れたところで学びました。」
 
 

 
 

“ 日常生活から取り込んだものが色や形となる。 „

 
 
「私の作品はいわゆるミクストメディアと言われるものです。その時の表現したいものに合わせて自由に画材を選びます。アクリル、油絵の具、パステル、水彩、クレヨン、鉛筆のほかに、新聞紙をコラージュしたり、発泡スチロールや段ボールを使用することもあります。自分に合う表現を追求して自分のしたい表現を目の前に広げていくんです。
最近は四角い画面の中に収まるものが多いですが、時々カンヴァスを平面方向にはみ出したり、立体的に斗出をさせたりと四方八方に飛び出るものも制作してきました。」
 
フランスの美術学生時代に海外の先生にかけられた”この絵の中にお前自身はどこにいるんだ?”ということばは、その作風の中にいまも生きているという。制作するのは抽象的な作品が多く、すべてが山田さんの心象風景だという。曲線や円といったモチーフが多く登場しているが、これらはすべてフリーハンドで描いているのだそう。曲線についてのこだわりを山田さんは以下のように話した。
 
「フランスから帰国をして、デザイン設計の会社に一度就職をしました。定規でまっすぐときっちりとした線を描く仕事を行っていたその反動があったのか、曲線の流れやうねりを自由に表現した作品が多いですね。手のストロークを使って描いています。
コンセプトは視覚的言語。目の前にモチーフを置いて描くのではなく、自分の感情や視界を表現する作品たちばかりです。日常生活の中で見たもの、感じたもの、人間関係の中で起こったことなどを取り込んでいくと知らぬ間に自分の中で色や形に変わってくるんです。作品が抽象的なためにタイトルがとても重要になってきますが、タイトルが”自分の心象”と”見てくださる方との思い”を共鳴させてくれるといいかなと考えています。」
 
 

 
 

“ 共通したモチーフを扱う連作 „

 
 
「いくつか連作を制作しています。 『涙ノ理由(わけ)』のコンセプトは、誰もが感じるさまざまな喜怒哀楽です。人間の涙にはいろいろなわけがあります。いろいろな種類の涙に自分の経験値をかけ合わせていったらモチーフになるんじゃないかなと考えました。嬉しかったことや悲しかったこと、自らの経験を反映させながら制作しているシリーズです。」
 
他の連作に『四角のオしゃべり』『いくつもの言いワケ。。』というものがあるという。こちらはどちらも混在しあうごちゃごちゃとしたものたちをテーマとして取り扱った作品たちだ。特に情報や思想の混雑である”新聞紙”のコラージュは面白い発想だなと思い、お話を聞いた中でも筆者の印象によく残っている。
 
「『四角のオしゃべり』は画面の中に四角をたくさん構成したシリーズです。組み合わせたり傾けたり、飛び上がらせたりとそれぞれに表情をつけていきます。ガチャガチャっとした感じで、騒がしいおしゃべりの感覚を保存した作品です。新聞紙を四角くコラージュして使用することもありますよ。
『いくつもの言いワケ。。』では普段の生活の中ですることもあればされることもある言い訳がモチーフです。そのような理由付けは一色の感情ではなく、とてもぐしゃぐしゃと混じりあったものではないでしょうか。そうした自分の感情の中でぐしゃぐしゃとしているものひとつひとつに色や形を持たせて構成したシリーズが『いくつもの言い訳』です。
私の作品制作のモチベーションは、日常生活に根源があります。そこから目指すところは”視覚的言語”とすることです。すべての事象や空気感を視覚的言語として表現していきたいと思って活動しています。」
 
 

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