イラストを中心に幅広く活動するTONTENKANさんが絵を描くことに目覚めたのは幼稚園の時だったという。
「その幼稚園では、年少クラスと年長クラスで使えるクレヨンが違っていたんです。年少クラスの時は、お兄さんお姉さんが使っているそのクレヨンにずっと憧れを抱いていて。『あのクレヨンを使いさえすれば、私もお兄さんお姉さんのように上手に絵が描けるはずだ』って(笑)でも、いざ年長クラスのクレヨンを使って絵を描いても、思ったようにうまくは描けなかったんです。『あれ、なんで?』とすごく悔しくて、何枚も何枚も絵を描いて練習したのをすごく覚えています。それが絵を描くきっかけでしたね。」
絵を描く楽しさに目覚めて以来ずっと、関わり方を変えながらも、ものづくりを続けてきた。
「デザインの専門学校では、立体物のデザインを学ぶ学科に入学しました。そこで車や家電などの硬くて大きいものを扱っていたのですが、時間が経つにつれて『自分がやりたいことってこれなのか?』という思いが湧いてきて。色々考え抜いた結果、”私はキャラクターに関わるものづくりがしたいんだ”と思い至りました。」
「卒業後はキャラクターグッズを製作する会社に就職したのですが、残念ながら環境があまり合わず、1年ほどで退職することになりました。その後『やっぱり絵の力をもっとつけたい!』という思いで人物デッサンなどを学ぶ絵の学校へ通いました。」
絵に対する愛情を片時も忘れず、自身がやりたいことを突き詰める姿勢に尊敬の念を抱く。創作活動を続ける上でのモチベーションについても聞いてみた。
「やっぱり人からの言葉は励みになりますね。ネットショップで注文してくれたり、SNSを通じていいねやコメントをくれたり、ハンドメイドイベントに出展した作品を見て『かわいい〜』って言ってもらえたり。そういうひとつひとつがあるから続けられるんだと思います。」
絵の学校でイラストを勉強し直したTONTENKANさんだが、イラストやキャラクターデザインの活動を本格化したのは最近のことだという。
「学校を卒業してすぐ子どもができたので、家庭に入ったんです。子育てをしながらも『絵を描きたい』という気持ちはずっとあったのですが、子育てがひと段落し、アーティストとしての活動に時間を使えるようになったのは最近です。」
忙しい子育ての合間も、時間を見つけては創作活動に励み、アーティストへの夢を温めた。
「子どもが小さいときは、本当に合間合間の時間を大事にしていましたね。あの頃に作った作品を見返すと、『これは昼寝してる時に作ったな』とか『これは完成までに半年もかかったな』などの思い出が蘇ります(笑)当時はSNSもこれほどまでに広まってはいなかったので、時間をかけて作った作品をハンドメイドショップに出品してみたり、アートフリマに出してみたり、ちょこちょことではありますが活動していましたね。」
子どもは、作品のインスピレーションでもあったとのこと。
「子どもはどこにいても可愛くて絵になるので、よく描いていましたね。そこまで意識しているつもりはなかったのですが、子どもが成長するに従って絵の中の女の子も大きくなっている気がします(笑)」
子育てがひと段落した今、活動はますます精力的に行っているという。
「最近だと、ブライダルのイベントから海外の展覧会まで、声をかけてもらえたものにはできるだけ参加するようにしています。日本橋アートさんに声をかけてもらったのも良いきっかけだと、思い切って参加しました。今は、自分の絵そのものを買ってくれる人に出会いたいという気持ちが強いです。」
絵に対する情熱を存分に発揮できるようになった今、TONTENKANさんのこれからの活躍がますます楽しみに感じられた。
TONTENKANさんの作品の最大の特徴は、その色合いにあるだろう。絵本の世界を想起させるシンプルで柔らかい色遣いながら、キャラクターが動き出しそうな深みの秘密は、”愛用の色鉛筆”にあった。
「この色鉛筆に初めて出会ったのは、専門学校に入学した時でした。立体物のデザイン用だったので、学校側から購入指示があったのは”黒”と”白”の2色だったのですが、その使い心地の良さに惚れ込んでしまって。気づいたら学校関係なく自分で集めるようになっていました。最初は確か24色セットを買ったのですが、それでも足りなくて48色セットを買ったり、バラでも買ったりして、多分100色以上はあると思います(笑)」
画材へのこだわりは、色鉛筆だけではないという。
「実は紙にもこだわりがあって。あえて表面に凹凸のあるマーメイド紙という紙を選んでいます。どうしても塗りきれない部分があるのですが、だからこそ醸し出される風合いが好きなんです。色も1色だけで表現することはあまりなくて、多いときだと5,6色重ねて、深みが出るように工夫しています。」
最近では新しい表現手段にも挑戦しているそうだ。
「少し前から、コピックやデジタルにも挑戦しています。コピックも重ね塗りとか滲む感じがすごく良くて楽しいです。デジタルも手描きの風合いを出すことができるみたいなので、こちらはまだ研究中ですが、取り組んでいるところですね。デジタルだと納品するのが楽だったりというメリットも大きいので、活用していきたいと思っています。」
さらに、自分で額まで作ることもあるというから驚きだ。
「専門学校での経験のおかげでノコギリの扱いなども得意で、全ての作品ではないですが、額を作ることもあります。そういう時は額まで含めて自分の作品というところはあるかもしれないですね。」
細部にわたりこだわりが散りばめられたTONTENKANさんの作品をこれからも楽しみにしたい。