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聰インタビュー

 
 

“ 木版画、そして木口木版との出会い „

 
 

――木版画と木口木版は、大学時代から続けていらっしゃるのでしょうか?

「大学では日本画を専攻していました。子どもの頃から絵を描くのが好きで、地元に芸術系の大学があることを知り進学しました。卒業する頃は「就職氷河期」と呼ばれていた時代で、絵に関する仕事がなく、一般企業へ入社。その後、結婚、子育てとライフスタイルが変化していき、絵を描くことからは遠ざかっていました」

 

――作品づくりを始めたきっかけを教えてください。

「子育てが一段落した頃、SNSで大学時代の友だちとつながるようになりました。それぞれが絵を描いたり切り絵をしたり、陶芸をやったりと、いろんな活動していたんです。それを見て、自分もまた何かやってみようと思ったのがきっかけです。みんながやっていないものがいいなと思い、いろいろ探しているうちに木版画にたどり着きました」

 

――最初は木版画から始められたのですね。

「そうです。木版画の教室を探して、今もそこに通いながら製作しています。
最初は木版画で年賀状を作って友人に送ったり、作品の交換会をしたりしていました。あるときインターネットでハンドメイドの作品を販売できるサイトを知り、その中で自分が描いた絵を出品している作家さんがいたんです。こういうやり方もあるんだと思い、自分も少しずつ作品を載せ始めました。
木版画の歴史を調べていくうちに木口木版という技法と出会い、作品の緻密さや繊細さに惹かれて作るようになりました」

 
 

 
 

“ 何気ない日常の一コマが作品のヒントになることも „

 
 

――木版画と木口木版では、どんな違いがありますか?

「木版画には素朴な風合いがあるのに対して、木口木版はより細かい部分まで表現できるのが特徴です。木口木版は銅版画用のとても細い彫刻刀を使いますし、版面の削り方も違います。
ただ木版画も木口木版も、原画を描く、彫る、刷ると、いろんな工程を経て一つの作品が完成します。だんだんと出来上がっていく過程が面白いですし、こうして作品づくりを再開してみて、やっぱり自分は絵で表現するのが一番しっくりくると感じました」

 

――木版画と木口木版では、作品を作る上での意識の違いはありますか?

「自分で意識して変えていることはありません。ただ木版画は色を使いますし、色の組み合わせを考えるのも楽しいですね。通っている教室ではテーマに沿って作品を作ることもあります。私の木版画を見ていただいた方からは、よく「絵本の世界みたい」って言っていただくことが多いです。
一方、木口木版はモノクロの濃淡を生かした作品になっています。木版画との違いを出そうとしているわけではないのですが、自然とそうなってしまうようで…。もともと緻密な作業が好きなので、どちらかというと今は木口木版の作品の方が多くなっています」

 

――どんなときに作品のアイディアが湧きますか?

「ふとした瞬間に浮かぶこともあれば、動物園でいろんな動物の写真を撮って、それをもとに作ることもあります。猫が丸くなっている「アンモニャイト」という作品は、野良猫がきっかけでした。たまたま庭に洗面器を出しっぱなしにしていたら、ちょうどいい具合に陽が当たって暖かくなっていたんでしょうね。気がついたら洗面器の中で、野良猫が丸まって寝ていたんです。それを見て「これ、いいいな」と思い作品にしました」

 
 

 
 

“ これからも心が癒やされるような作品を作りたい „

 
 

――作品づくりに煮詰まったときの気分転換を教えてください。

「ツーリングが趣味なので、バイクで海を眺めに行ったりしています。まだ免許を取って4~5年ほどですが、作品と向き合っていると家にこもってばかりになるので、これは良くないなと。自然に触れるとヒントになることもあるので、そういう時間を大切にしています。外に出て気持ちを切り替えることで、作品へのモチベーションを維持できる部分も大きいと思います」

 

――2023年は初めて銀座でのグループ展に参加されたほか、動物をテーマにしたアートブックにも掲載されました。とても忙しい1年だったのではないでしょうか。

「そうですね。東京でグループ展に参加させていただくのは初めてのことでしたし、私のSNSで作品を見て声をかけていただいたので、とてもうれしかったです。ほかの作家さんとお話することもできて、貴重な経験になりました。2024年も同じグループ展に参加する予定です。また、本への掲載も初めてのことで、こちらも非常にうれしかったですね」

 

――最後に今後の目標と、作品を見た方へのメッセージをお願いします。

「地元の名古屋で個展をやりたいと思っています。これが初めての個展になりますが、やるなら地元からスタートしたいなと…。日頃からお世話になっているギャラリーさんもあるので、場所探しを含めて実現に向けて準備をしている所です。
私の作品は動物をモチーフにしたものや、絵本の世界のようなテイストが多いので、それを見て少しでも癒しを感じていただけたらうれしいですね。お客様からは「温もりや温かさを感じる作品」と言っていただくことが多く、これからも心がほっとするような作品を作っていきたいです」

 
 

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