日本文化を継承するアート販売Webメディア

Interview: SAHO

自然との共鳴を色鉛筆で鮮やかに描き出すSAHO

 
 

“ マインドフルネスを通じた絵画表現との出会い „

 
 
色鉛筆やアクリルをメインに、自然から得たインスピレーションを作品に落とし込む画家、SAHO。絵画を描き始めたのは、2019年からという。
 
「元々はコンテンポラリーダンサーを経て、企業等のアドバイザーを務めながらマインドフルネスを学ぶ中で、絵画という表現方法を見つけたんです。
 
マインドフルネスは、瞑想を通じて「価値判断は脇に置いて、今この瞬間を味わう」ことで、 物事をありのままに観たり、自分の中心に戻ってきたりするトレーニング。固定概念や他者の評価に捉われず、自身の内面や物事の本質に気づく力を養います。欧米では大企業や義務教育にも既に普及していて、日本でも教育に組み込めないかと考えていました。
 
ただ、マインドフルネスは実践がすべて。言葉で伝えるのが難しいこともあるんですね。日々方法を模索する中で、ある時鉛筆でラフを描いて紙芝居を作ってみたんです。それを見た恩師から「あなたには絵で何かを表現する力が秀でている」とおっしゃっていただいたのが、画業に入るきっかけでした。」
 
それから、毎日1枚は作品を描くことを自分に課したSAHO。さらに転機となったのは、ドイツの老舗メーカー・ファーバーカステル社の色鉛筆との出会いだった。
 
「私の父は昔、画家として活動していたんです。なので家に昔の画材がいくつか眠っていて、偶然、父が40年前に使っていた色鉛筆の72色セットを見つけました。日本の湿気が多い住環境ではカビているかも……と思いながらも早速使ってみたら、本当にきれいな発色で感動しました。
 
その感動をぜひ伝えようと思って、ファーバーカステル社に連絡しようとしたら、偶然同社ではアンバサダーを募集していました。ものすごい勇気が必要でしたが、緊張しつつも電話してアンバサダーに立候補し、そのご縁で同社の260周年記念ポスターを描く流れになったんです。」
 
こうした出会いもあり、SAHOはより画業に力を注ぎ、プロのアーティストとして活動を広げていった。
 
 

 
 

“ 自然との「共鳴」を描き、純粋な自分に戻る „

 
 
ファーバーカステル社の創立記念イベントのため、7点のシリーズ作品を描いたSAHO。中でも「Butterfly」は、SAHOの魅力が詰まった作品。
 
「「Butterfly」は、私の中でアーティストとして自分を押し上げてくれたと感じる作品のひとつです。蝶の羽根の文様にさまざまなストーリーを織り込んだり、こっそり隠れキャラや「FABER CASTELL」という文字を忍ばせてみたり。見ている方が絵の中でいろいろな発見を楽しめる作品に仕上げました。
 
また、ファーバーカステル社製色鉛筆の発色の良さを表現するためになるべく原色のみを使っています。当時初めて描いたサイズの大きい作品ということもあり、思い入れが強い作品ですね。」
 
そんなSAHOは、11月16日~30日に日本橋Art.jp上でWeb個展「共鳴マジック」を開催する。タイトルに入っているキーワード「共鳴」は、SAHOが作品を制作する上で常に大切にしていることだと言う。
 
「アーティストになる前から、私の中では自然の小さな神秘を見つけたり、自然と共鳴したりするような、いわば”センス・オブ・ワンダー”を感じていました。絵を描き始めてからは、その自然と共鳴した感覚を自分なりのフィルターを通じて絵に落とし込むという循環が、呼吸のリズムと同じように常にあります。
 
昔は、そうした絵で誰かが癒されればいいな、と思っていたんですが、最近では絵を描いている自分が一番癒されていると感じます。ある種、自然からのメッセージに従って「描かされている」という感覚があるのですが、その過程こそ、本来の純粋な自分に戻れる「癒し」だと気づきました。」
 
個展では、今年の受賞作「Resonance」シリーズと新作を含む10数点ほどを展示する予定。各作品とともに短歌も発表し、異なる表現方法にも挑戦する。
 
 

 
 

“ 見る人のセンス・オブ・ワンダーにタッチしたい „

 
 
アーティストとしての活動を始めて4年目の今も、SAHOの作風はどんどん変化を遂げているという。
 
「自分で「作風を変えよう」と意識している訳ではないのですが、改めて自分の作品を見返すと初期と現在ではずいぶん違うなと感じます。その時その時の自分を出し切っているんでしょうね。今もマインドフルネスの国際資格を取るために勉強を重ねているのですが、そこで得た学びや気づきが作品に反映されているという面もあるのかもしれません。
 
毎回作品を描き上げる度に、燃え尽きる感覚を味わいます。それは、「疲れた」というネガティブなものではなく、「今の自分でやり切った」という充足感や、被写体と調和できた喜びの方が大きいです。」
 
自身の変化を受け入れ、作品の世界観をどんどん豊かにしていくSAHO。今後のアーティスト活動での目標についてもお聞きした。
 
「見てくださる方に、ある種の気づきをもたらせるような作品を創り続けたいと考えています。私の絵が安らぎとなったり、自然界とのつながりを感じたり、本来のご自身の姿を見たりするためのツールとなれば嬉しいですね。そのためには、キャンバスの上に絵を描くだけでなく、ファッションデザインや飛行機のラッピングイラストなど、さまざまな分野に挑戦してみたいです。」
 
また、元々、マインドフルネスを教育現場に広げる手段として絵画表現に辿り着いたSAHOは、ワークショップも今後企画しているという。
 
「参加者の方が自分のセンス・オブ・ワンダーを引き出せるようなワークショップの開催を考えています。「上手に描く」というより、ご自身が自然に触れて感動したものを描くような”感受性”を大切にしたいですね。私自身実感していることですが、絵を描く過程で培われたセンスは、まるで絵具の色彩が溶け込むかのように、その後の人生を豊かにします。
 
私の作品やワークショップが、たくさんの方のセンス・オブ・ワンダーを刺激するきっかけになったらとても嬉しいです。」
 
 

戻る