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Interview: 島内梨佐

一つ一つの点が見せる新しい色と形に魅了され点描画の世界に

 
 
「見る視点によって異なる点描の世界」をコンセプトに、点描画の作品を生み出す島内梨佐さん。作品を通して感じる温かみは、本人の朗らかな表情や口調からも伝わってくる。
 
 

“ 高校の頃はずっと嫌々描いていた気がします(笑) „

 
 


 
 
―「点描画」を始めたのはいつ頃でしょうか?
 
「高校の美術コースで色々な技法を教えていただくのですが、一年生の頃に先生から“あなたは点描を描きなさい”と言われて。私は風景画を描きたかったんですけど、まだ高一だったし何も言い返せず……。それが点描画を始めるきっかけでした。」
 
―先生は島内さんの点描画の才能を見抜いていたかもしれませんね。とはいえ、いきなり点描画と言われて、「やりたくないな」とか思いませんでしたか?
 
「思いました! “点描?”“あのドットですか?”みたいな感じで。とりあえず描いてみたんですけど、時間はかかるし、描いても描いても終わりがどこなのかも分からないし、ただただ疲れるっていうだけで。“こんなのやってられないな”って第一印象で嫌いになりました。ずっと嫌々描いていた気がします(笑)。」
 
―いつから描くのが嫌いじゃなくなったんですか?
 
「大学に入ってからです。最初は描きたいものが描けると思って、自由に点描とは全然違う描き方をしていたんですけど、3回生の時の自由課題で、ふと、もう一度点描に挑戦してみようって気持ちがなぜか湧き上がってきて。」
 
―描いてみたらしっくりきたと。
 
「あんなに嫌いだったのに、すごくしっくりきました。このやり方が合うなって。だからか、
その時の自由課題に対する先生の評価もすごく高くて、結構褒められた記憶はあります。それからですね、もしかしたら向いているかもしれないと感じて点描を本格的に始めたのは。4回生に上がった頃には点描画をずっとやっていました。」

 
 

“ 点描画の魅力は点を並べて見えてくる色彩と形 „

 
 


 
 
―大学3回生で再び点描画を始めて、改めて点描画の魅力に気付いたところはありますか?
 
「色彩かなと思います。点を並べるだけなのに人間の目が錯覚して、別の色に見えてきてしまうんです。プリンターとかテレビと同じような仕組みで、絵の具でもそれが表現できる。赤と青の点を置いているのに、それが並ぶとちょっと紫っぽく見えてくるみたいな。そういう色の不思議だったり、筆のタッチだけで点を並べているだけなのに、形が見えてくるということの面白さに気付きました。」
 
―島内さんの作品には、色が浮き出てる感じとか幻想的な感じもあって、穏やかな感じがするなと思いました。
 
「ありがとうございます。癒されるというのはよく言われます。すごく綺麗って言われることもありますし、意外とリラックス効果が出ているのかなって思います。」
 
―点描画を描くにあたって心がけていることはありますか?
 
「モチーフ自体はその時々で変えていますが、なるべく黒は使わないようにしています。ドットの大きさもその時々で変えていますし、絵の具も最近、色を混ぜてみたりしています。」
 
―ご自身の代表作や、特に思い入れのある作品があれば教えてください。
 
「大学3回生か4回生の頃に描いた沖縄のガジュマルの木です。赤、黄、青、白の4原色だけで表現しています。地元の愛媛の県展に出した作品で、高校生の頃から毎回出していて入選していたのに、大学生になった時に1回落ちてしまって。それが結構、私の中ではショックで。それで、もし今回も落ちたら、私は絵の道に向いていないから諦めよう、“この作品に賭けよう!”って気持ちで描いた作品なんです。それで、初めて特選をもらえました。」
 
―渾身の一枚ですね。

 
 

“ 八つ当たりのつもりで描いた作品が学長賞に „

 
 


 
 
―他にも、特に思い入れのある作品はありますか?
 
「卒業制作で描いた剣鉾(けんぼこ)の絵です。剣鉾は京都の祭礼に登場する伝統的な祭具なのですが、それを2メートル以上ある150号のキャンバスに描きました。」
 
―2メートルって、すごい迫力ありそうですね。
 
「元々、この絵は描く予定もなく、他の作品2点を卒業制作として出すつもりだったんです。だけど、提出までの間に友人が亡くなってしまって。何かしていないとずっと落ち込んでしまうので、気持ちをぶつけるじゃないですけど、八つ当たりみたいな感じで没頭しながら描いた作品です。さっきのガジュマルは半年間くらいでしたが、これは2カ月ほどで仕上げたのを覚えています。」
 
―剣鉾をモチーフに選んだ理由もあるんですか?
 
「今もこの剣鉾を実際に持たせていただいていて、思い入れもあったので、一度は絵に描きたいと思っていた気持ちと、とりあえず何か没頭して描きたいと思っていた気持ちが合わさって剣鉾を選びました。それで、他の2つの作品と一緒に卒展に出したらこの作品だけ学長賞をいただいて。私としてはただの八つ当たりで描いたので、賞をもらえると思ってなかったから、すごくポカーンとしてしまって。手数もかなり入れているし、先生によっては狂気があるとも言われました。」
 
―その話を聞くと、エネルギーやパッションというのが込められている気がします。
 
「あと、この絵は大きくて保管する場所もなかったので処分する予定だったんですけど、実際の祭礼を執り行っていた神社の方が譲り受けたいと言ってくださって、今、奉納させていただいています。」
 
―素敵な話ですね。最後に、今後の展開をお願いします。
 
「最近、点描で曼荼羅を描いていて、そこからも活動の幅を広げたいなと思っています。それともう1点、今すぐは出来ないと思っていますが、色に弱い、障害をもっている方向けの作品を描きたいと思っています。たまにお話に聞くんですけど、点描画は線が太かったり色が濃いわけではないので、色彩感覚が弱い方には、何が描かれているか分からないみたいで。だから、そういった方でも見られる作品。もしくは、その方と同じ視点で見られる作品を表現できたらいいなと思っています。」
 
―実現すると、より多くの方に点描画やアートを楽しんでいただけますね。
 
「今後はそっちの理解を深めていつか実現させたいです。」

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