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Interview: 森山幹予

森山幹予インタビュー

 
 

“ 今この瞬間の思いを文字に乗せる自由な書道 „

 
 

―書道と出会ったのはいつの頃でしたか?

「最初は7歳のときで、書道教室に通っていました。
大人になってから一度、離れた時期もありましたが「やっぱり書道が好き」という思いがあり復活。そこから20年以上続けています。」

 

―現在は書道教室をされていらっしゃるんですね。ちょっと変わった教室のようですが、どのような内容ですか?

「書道教室というと、月に何度か通って月謝を払って…という形が一般的ですね。でも私の教室は、基本的に一回で完結。大人からお子さんまで、いろんな方がいらっしゃいます。
最初は大人の女性向けに、文字を書くことで心の解放につなげることをイメージしていました。だんだんと「子どもにも教えてほしい」という声をいただくようになって、今は親子で楽しめるスタイルも取り入れています。

教室では、“正しくきれいな文字”を書くことを目的にしていません。
初心者の方には筆の持ち方や使い方のレクチャーをして、あとは自由に、自分の思いを乗せて好きな字を書いてもらっています。」

 

―感情を文字に乗せるということですよね。慣れるまではちょっと大変そうです。

「確かに大人の方は、少し難しいと感じる人もいるかもしれません。大人になるといろんな知識や経験があるから、どうしても正しく書こうとしてしまうんです。
でも、だからこそ自由に書けたときの解放感は大きいと思います。
その一方で、子どもたちの発想力にはいつも驚かされます。大人には書けない魅力的な字を書く子が多く、なかには「楽しかった。また行きたい」と、リピーターになってくれる子もいるんですよ。こうした子どもたちの様子を目にする度に、これは想像力を豊かにし、情操教育につながることだと強く感じます」

 
 

 
 

“ 自分が本当に“楽しい”と感じる道を選ぶ „

 
 

―現在のスタイルに行き着くまでに、どんな心境の変化がありましたか?

「書道を始めてしばらくの間は、きれいに書きたいという気持ちがありました。でもある時、大好きな書道を通して自分が本当にやりたいことはなんだろうって思ったんです。
文字はたくさんの力を持っていて、一つの漢字にもさまざまな意味が込められています。そこに自分の心をしっかり乗せて書けたらすごく気持ちいいだろうなと考え、だんだんとアート寄りの書道に変化していきました。特に2015年に師範免許を取得してからは、文字を通して何かを表現する方が自分にとって楽しいことなんだと感じるようになりました。」

 

―森山さんの作品は、どのように作られるのでしょうか。

「日頃からピンと来る文字や言葉を書き留めておくようにしています。
個展をする際は、ある程度「こんな文字を書こう、こういう書体にしよう」と決めて、ざっと練習します。その後で並べてみて、似たような文字が続かないようにバランスを見て決めていくんです。

書道は一発勝負の世界。一つの作品に向き合うときは、エネルギーを溜めるように意識を集中させて一気に仕上げます。文字と向き合うその時、その瞬間の気持ちを正直に表現したいと思っています。」

 

―そうしたスタイルが評価され、2022年にはフランスのパリで開かれた「11th Discover The One Japanese Art 2022 in Paris」で、審査員特別賞を受賞されました。

「このときは掛け軸に「破壊、再生、我が道」という言葉を書きました。
普通は掛け軸に対して真っ直ぐな文字を書かないといけないんですが、決まった枠の中で表現することに違和感があり、カーブさせて書いたんです。
そうしたら審査員の方から「文字の力強さと強弱、空間の使い方がとても良い」と評価していただきました。
こうした展示会に出るのは初めてだったので、受賞したときには本当に驚きました。」

 
 

 
 

“ たくさんの人が幸せに笑顔で過ごせる未来へ „

 
 

―最後に、今後の目標や活動について教えてください。

「私の活動のベースになっているのは、みんなが元気に、ハッピーになってほしいという思いです。
世の中に癒しを与えるものはたくさんあるし大切なものだけど、私は文字を通して元気や活力をプレゼントしたいんです。実際に私の文字を見た人から「不思議と元気になる、楽しくなる」という言葉をいただくことがあり、とてもうれしく思っています。

私は作品以外にも、その方が必要とする言葉を書いてお守りにできる「文字守り」もお作りしています。
自分自身が文字を書くことで意識が変化し、より気楽に生きられるようになってきたと実感しています。そのため私の書と出会っていただいた皆さんにも、そっと背中を押せるような文字をお渡ししていきたいと考えています。

あとは2拠点生活のように、もう一つ活動の場を作りたいという目標もあります。田舎にある古民家のような場所をギャラリーとしても利用しながら、子どもたちが自由な発想で書道と向き合える教室を開きたいです。

私の人生のテーマは『機嫌の良い女』なので、これからも自分が楽しいと思えることを表現し、皆さんにもご機嫌で幸せになっていただきたいです。」

 
 

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