WORKS作品
.jpeg)
.jpeg)
.jpeg)
.jpeg)










.jpeg)
INTERVIEWインタビュー
横に柔らかく広がるイメージで、光と色を取り扱う
鑑賞者に、色を味わってほしい
「子どもの時からお絵かきや工作が好きで、小学4年生から油絵を習いました。10年間絵画研究所に通い、デッサンの基礎を学びます。一度芸術とは異なる分野の大学に入学し、企業就職をしました。その後親になり、子どもと絵本を読んでお絵かきをして遊ぶ時間がきっかけになって、子どものための造形教室も開講しました。自分が子どもの頃にアートが好きだったのでそうした環境をつい当たり前のように考えていましたが、のびのび表現できる場があるのは普通のことではなく、恵まれた豊かな場だったのだなと大人になって気がついたため、"子どもたちに豊かな場を提供できたらいいな"と15年ほど教えてきました」
ご自分が生まれ育った環境に対する感謝の気持ちを滲ませながら、あたたかいお気持ちを話してくれた山本さん。残念ながら現在は開講されていないそうだが、実際に学校教育で用いられることもあるという1つの理念をもとに指導されていたそうだ。山本さんの作風に心が和んだ方はきっと、次の話に大いに納得されるだろう。ご本人からも、セラピーに関するコメントがあった。
「教室では、ドイツの哲学者シュタイナーの教育と色彩論をもとに指導していました。シュタイナー教育は成長段階に合わせてその子に必要な造形芸術を提供する教え方です。色彩に対する扱いや考えが、これまで学んできたものとは少し違いますね。色はセラピーに使われることも多く、奥深い題材だと気が付き、精神科学にも興味を持つようになりました。そうして自分の表現を探りたくなって通信の芸術大学を卒業した後に、本格的な作家活動をスタート。それぞれの色が発する力があり、どうしてその色として存在しているのかということを考えています。光の分光に興味があり、混じり合うごとに白くなったり、印象が変わったりする光と色を制作作品の基盤としています。見てくれる方に色を味わってもらえたら嬉しいです」

光と色の関係性に魅了されて
「"色彩は色の行為と受苦である"といった人がいます。 光はいろいろ重なるほどどんどん明るく、白くなっていきます。私も光に興味を持って作品を生みますが、色を合わせるごとに暗くなっていってしまう絵の具を使用するため、矛盾が生じるんです。物質としての絵の具には限界があるので"どこに到達できるのか""どのように立ち向かっていくのか"というのが、創作の中で1つの挑戦になっています。アクリル絵の具をメインに使用して、色の純粋性について強く意識しながら作品を作っています。光を組み合わせたり映像を使ったりといろいろな表現をする人がいますが、私は子どもの頃から自分の手で描くことに親しんできたので、自分の体を使って"自分らしい表現"に喜びを感じながら、色と光を取り扱っていきたいです」
絵画のスタートは油絵だったものの、学生時代に体質に合わなくなってしまい、メインの仕様をアクリルへ変更をされたそうだ。絵の具をパレットの上で混ぜ合わせる難しさを想像すれば、絵の具を使って光にアプローチしていく制作方法がいかに難しく深いテーマであるか、お分かりいただけることだろう。驚くべきは山本さんの作品が発する透明感だ。アクリル絵の具を使用して透明感を大切に表現するためには、入念な下準備が欠かせないという。
「土台できての透明感だと思っています。入念に下準備を行いますが、厚塗りには見えないように工夫しています。重くなりすぎず、表現として成立するバランスを見極めるのが重要です。見た人がすーっと色の中に入っていけるように、テクスチャーも静かに。明確なメッセージはないもののあくまで視覚芸術なので、雑音にとらわれず、見ることに集中してほしいと私は思っています」

感覚を常に探っていきながら
「絵を描くというのはある種の単純な行為ですが、人生の中で助けられたと感じる瞬間も多いです。コアな自分自身を感じられるのは描いている時だと思います。コツコツ書きながら、仕上がる直前には画面の中に自分が入っているような感覚があります。私は20世紀半ばのアメリカの抽象表現主義の作家たちが好きです。なかでも、力強い縦のラインが入るとても素晴らしい作品があります。この絵をみると自分の背筋が伸びるようで、パワーや圧、エネルギーをひしひしと感じました。垂直のラインにはズドンとした力強さがあるのだなと感じ、自分の人間性を踏まえて、私は横方向のラインを意識した抽象画に辿り着きました」
目の前に縦に力強く伸びるラインがあれば、人の気分もしゃっきり伸びるもの。 インタビュー中に山本さんの柔らかいく穏やかで心優しいお人柄がたっぷりと伝わってきたため、横方向が似合うというお話に著者は大いに納得させられた。はじめに使用する色を選び、幅や割合、構成などはエスキースで試していくのだそうだ。その段階を、紙に乗せていくことで、漠然としたイメージを整理し"自分がしたいのはこういう感じだったな"と見つけていく作業だと話してくれた。
「"色と色の響きあいや対比をいろいろ試してみようかな""1本の線でもその絵の前に立った時に受け取る感覚は変わるからな”と考えています。作風については今後、変わっていく可能性もあるかもしれません。自分の表現を常に探っていて、どんな絵の具で、どんな色を使うのか?その時々で判断するのが1番大事かなと思っています。自分の感覚とマッチするものを常に探しているような感覚です。見ている人に、色を味わっていただけるような作品を生み出していけたら嬉しいと思います」

EXHIBITIONS展覧会情報
2023.08.01 ~ 2023.08.31
WEB GROUP EXHIBITION
鮮やかな色彩の幻想 展
色彩を主役としたアート作品を展示するアート展覧会です。 色彩を通じて、現実と非現実の境界を超えた、幻想的な世界を表現しています。 展覧会では、様々なジャンル...
2023.06.01 ~ 2023.06.30
GROUP EXHIBITION / 白の美意識と感性展
白は、無限の可能性を秘めた色であり、色の欠如と解釈されることもありますが、 その自由度の高さから私たちは自分自身の想像力を表現することができます。 素材...
2023.04.01 ~ 2023.04.30