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Interview: ムネアツシ

映画のようなストーリー、音楽のような力。 感覚をプリズム化するムネアツシのアート。

 
繊細で緻密なディテールで描かれる作品からグラフィックアート寄りのものまで、枠に捉われない幅広い技法で描く「人間らしさ」。リアルだったり、コミカルだったり、見るときどきでストーリーが変わる。彼の作品は見る人の心を映し出す鏡のようなものなのかもしれない。
 
 

「Que sera, sera」

 
 
 
 
今でこそ作家として活動をしているムネアツシさんだが、中学や高校時代は絵を描いて何かをするという発想は頭をかすめもしなかったという。それほどまでに絵を描くのが当たり前の日常だった。
 
 
「絵を描いて、というよりは絵ありきで他に何か、という意識のほうがあったかもしれないですね。高校も普通にスポーツの部活やったりバンド組んだりしていました。高校から大学に上がるタイミングでも将来やりたいことや専門的に学びたいものが特になかったのですが、大学には行きたいとは思っていました。で、『興味あることないの?』と聞かれたときに、人の心の動きには興味があったので、じゃあ心理学かな、と。短絡的に進路は決めましたね(笑)」
 
 
すでにネイティブレベルの英語を話す人が「話せるようになるための英会話学校」には行かない、例えるならそんな具合だろうか。幼少期、子供たちが楽しむ一般的な娯楽を制限された家庭で育った。
 
 
「思い返すと、絵を描くのが好きだったというのもあるんですが、周りがやっていた『ポケモン』や『遊☆戯☆王』といったカードゲームとかもあまり買い与えてもらえない家だったんですね。親の教育方針で。でも買ってもらえないなら自分たちで作ってしまえと、兄とそういうカードを作って遊んでいた記憶があります。
絵を描くのが遊びというより、遊ぶために絵を描いていた、という感覚です。本当はカードやゲームで遊びたいのが当時の本音だったんですが、今思い返せばそのおかげで想像力であったり、クリエイティブだったりを養うことができたのだと思えます。親に感謝です。」
 
 
家ではゲームはおろか、テレビ番組の視聴も制限されていた。しかし手放しで許された娯楽といえば手塚治虫の漫画と映画だった。
 
 
「ヒーロー戦隊ものとか戦うタイプのテレビ番組も禁止だったんですよ。でもその代わりに映画は好きなだけ見せてくれたんですよ。ジブリやディズニー映画など、そのあたりのアニメーションはストーリー作りのルーツになっている気がしますね。」
 
 
今でも週末になると映画3本立てをしてしまうほどの映画好きというムネさん。ブログでも度々映画の話題が登場している。ムネさんの作品はストーリーが見えるが、それと同時に「音楽」が鳴っているようでもある。
 
 
「絵を描くときに音楽は意識しています。というのもたまにライブイベント、音楽イベントの一角でライブペイントで出させていただく機会があるんですが、会場の様子を見ていると音楽の力ってすごい強いなっていつも感じるんですよね。音量だったりメロディだったり、使う楽器であったり、それに言葉がのっかって、直接的に人の心に触れられる力を持っていると思うんです、音楽って。
音楽に比べると絵はずっと間接的で、僕の絵には音楽ほど人の心に触れられる威力がまだないなと感じています。ただしこれから描く絵を音楽に置き換えるならそれはどんな音楽なのか、見てくださった方にどんな印象を与えたいのかなって考えています。
絵と音楽を繋げて例えるなら、絵にとっての音量はキャンバスのサイズだよね、って。筆のタッチがメロディで、使う画材が使う楽器の種類。多分このあたりが共通する部分だと感じるんです。色の使い方も然りで、例えば使う色によってその絵がロックになるなのかバラードになるのかという点も、音楽も絵も人の心に働きかける役割を持った沢山の要素で構成されているんだとすごく感じています。絵を描くときにどんな絵にしたいか、どういう伝わり方をしたい絵なのか、描く前、そして描きながらも音楽に例えて描いています。」
 
 
「“LOVE”つなぐ“MUSIC”」

 
 
 
 
ストーリーがイメージできる。音楽が鳴る。
絵1枚から浮かび上がる感覚のプリズム。
人間だからこそ成せる技であり、とても有機質だ。ムネさんの作品には無機質なスクラップをモチーフにしているものが数多くあるが、おもしろいのはそんな無機質な素材に温度を与えている点だ。「人間らしさ」がテーマとなっている所以なのかと想像するが、テーマありきで制作しているのではないという。

 
 
「2年3年と描いてきて自分の作品を見返したときにそういう共通点があることに気付いたんですよね。 どう表現したら良いのかわからないぼやっとした感情や感覚は誰もが持っていると思うんです。楽しい瞬間、悲しい瞬間。感情の起伏。沸き上がってくる、言葉で表現できないモヤモヤをどうやったら表せるのかな、という感覚を持った上でキャンバスに向かっているときもあります。いいことも悪いことも、強い感情衝動は忘れない。心の経験として根強い感情をもとに絵を描いています。スケッチブックに描きためたりもするときも、そのときの感情をちゃんと表現できるまで何度も描いていますね。」
 
 
「怒り〜WRATH〜」


 
 
スポーツ系の部活に入り、バンド活動も行った高校時代、バイクでの野宿旅や海外旅行などの旅に明け暮れた大学時代と、とにかく興味を持ったことはすべて試してきたムネさん。その中で残り続けたのが「絵を描くこと」だった。
 
 
「社会人になってから、ギターを弾くわけでもなく、まとまったお休みができたら必ずどこかに旅行に行くわけでもなく、定期的に運動するわけでもなく…でも絵だけは描いていたんです。なのでやっぱり自分の軸がそこにあるのかなと感じました。そうすると今度は自分が描いた絵を人に見てもらいたくなったんでしょうね。ずっと自分で描き貯めていたものが作家やイラストレーターとして通用するのかどうかが気になりました。僕の絵は人から見たらどうなのだろう?と。それで外に出してみようと思いました。」
 
 
作家として活動していく中で、ムネさんは自身の役割をこう定義した。
― 誰もがアートや表現を楽しめる世界にすること ―

 
 
「『絵を描いています』と言うと、『私も“昔”描いていたんだよね』とか『私は絵が下手だから、描ける人すごいね』という言葉をたくさん耳にします。僕は、絵って誰でも描けると思うんですよ。本当に。みんな小さい頃は絵を描いてたと思うんですよね、色鉛筆とかで。でもそこから大人になってどうして苦手だとか描けないと思ってしまうのが不思議ですし、すごくもったいないなと思うんです。
そう言いながら絵しりとりとかするとめちゃくちゃ盛り上がるんですよ(笑)。だから “絵を描く”ってみんなが思うよりもずっと楽しいことなんです。だから「下手だ」とか「苦手だ」とか言わずもっと絵を描くことを楽しめるようになればいいのになと思います。
絵に限らず、実は何かしらの表現活動や創作活動、新しい挑戦をしてみたいけど、何から始めたらいいかわからないという人が結構いると思うんです。だから、そんな人に向けて僕は自身の活動を通してやりたいことにスッと挑戦できたり、感じたことを自由に表現できるような世の中にしたいなと思います。
『僕も描いているから一緒にやろうぜ!』というか。硬く考えずに、見てくださった方が『僕も絵を描こう!』とか『じゃあ私は何をやろう!』とか、沢山の方がアート活動や表現、発信をしてみたくなったときに、それを自由にできる世界になればいいのに、そんな世界に変えていきたいというのが今感じていることで、僕の作家活動のテーマです。」
 
 
「OCTET」


 
 
 
ムネさん自身、コンテストを探して参加したり、周りに積極的にアプローチすることで、作家としての道を自ら切り拓いていった。「発信することで繋がっていく」と語るが、それでもやはり新しいことを始めるのは気合がいる。
 
 
「そうですね、『自分、こういうことしています』って言うのは勇気がいりますよね。嫌なこと言われたり、批判されたらどうしようとか怖い気持ちもあると思うのですが、だからこそ人から『こんな活動をしています!』とか『こんなことをしたいです!』って教えてもらったらそれをもっときちんと迎え入れたいですよね。僕自身も会社勤めの身でもありますし、“画家”と名乗ることが超怖かったし、なんなら今でもビビりながら言ってます。
 “画家”になる前に芸大出身の友達のところに行って、『どうやったら画家になれるの?』と聞いたことがあるんです。そしたら『画家になるには、まずは“名乗る”ことや。』と言われたんです(私)『私は画家です』と。でも、そう言われても自信ないですし、画家で食べているわけでもないし『いやいや!おかしいやろ!』と思いましたが、それで本当に画家になれるんだったらと、人へ名乗るというよりも自分に言い聞かすという気持ちで言い始めましたね。」
 
 
現在は「日本昔話」をテーマにした絵に取り組んでいるムネさん。今後さらに描き貯めていった際には紙芝居なのか絵本なのか形式は未定だがまとめていきたいという。またその展示会も視野に入れている。
 
 
「日本の色彩や構図がきれいだなと思うんです。外国の伝統的な絵と比べて日本の浮世絵や絵巻物って写実的に描くものではなくてデフォルメの文化だと感じます。それが今の漫画やアニメのカルチャーに繋がっているルーツなのかな、と。絵巻物のデフォルメって本当に独特で、何でこういう描き方をしたのかなと不思議に思うところがたくさんありながらもそれを自分で描くことでたまに納得できる部分もあります。そういった意味で新しい自分にとっての気づきも得られますね。そういった魅力的な日本特有の表現や物語を、今後僕自身の『アート』という形で国内外に向けて発信していけたらなと思っています。」
 
 
「THE SARUKANI WARS」


 
 
 
ムネアツシにとって“アート”とは?


 
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