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Interview: mayu!

心にあるもの、身の周りにあるものを、自分らしく表現したい

“ 子どもの頃に感じた畏怖 „

 
 


 
 
「子ども頃に怖かったもの」って誰でもありますよね。私は暗い場所や影がそれでした。
夜ひとりで眠りにつこうとしているとき、暗い部屋の中にいると、まるで闇の中に自分が包まれてしまったような、親や友だちから隔絶されてしまったような不安が押し寄せてきて。
 
夕方に自分の手をかざすと下についてくる影を見て「何でついてくるんだろう」「誰だろう」と、影も怖かったですね。
大人になってから、ふと夕方の歩道に伸びている自分の影を見たときに、そんな子どもの頃に感じた畏怖を思い出しました。
 
暗い場所や影は黒色でできていますよね。でも、黒色じゃなくて白色だったらどうでしょうか。「もしかしたらお友達になれたかもしれない」と私は思うんです。
そうして黒色のキャンバスに白色の少女を描いた『星廻り』という作品ができました。
 
私は基本的に顔を描きません。以前、顔を描きたいと思ったときに、絵の技術が足りなくて描けなかったんですよね。
思い切って「やめちゃえ!」と白く塗り潰してみたら「あれ?これ素敵かも?」と思える表現に出会えました。
 
以前はリアリズムやシュールレアリズムなどの画風に憧れていたのですが「こういう絵が描きたい」という構想があっても、どうしても自分の技術が追いつかなくて。
理想の絵を描けずに悩む日々でしたが、ある日「ま、いっか。自分らしい絵を描こう」と思えるようになったんです。
 
 
 

“ 使い慣れた化粧品で色を作る „

 
 


 
 
ファンタジーな世界が好きで、身の周りにあるものをかわいらしく描きたいという気持ちもあります。
カラフルでファンタジックな世界を表現したいときは、キャンバスに水を張って、上からインクを雨のようにポタポタと垂らすんです。
あえて分離色を組み合わせて、インクの滲みだけで表現したい色を作っていきます。
 
「子どもの頃の畏怖」を描きたいときは、子どもの頃の気持ちに近づけるように、クレヨンも使うようになりました。親に初めて与えられた画材がクレヨンだったんですよね。
黒色のクレヨンでキャンバスを塗り潰してみると、まさに理想の黒色が表現できました。
 
『香るクレヨン画』というシリーズは、ベビーオイルでクレヨンを伸ばして描いているので、キャンパスから良い香りがします。
あるアニメのセル画に女性スタッフのチークが使われていたことを知り、その影響で化粧品を画材として使うようになりました。
 
白色を描くときには、下にチークを塗っておいたり、上からラメパウダーを重ねたりしています。
化粧品を使うようになってから、理想の色を早く表現できるようになりました。毎日お化粧をするので、化粧品を使い慣れているからかもしれませんね。
 
ちょっと遠慮して購入を控えている化粧品でも、画材としても使うなら買っちゃおう!と思えるところも嬉しいですね(笑)
 
 
 

“ 自由に感じて、想像して欲しい „

 
 


 
 
以前、ゲーム会社のイラストレーションの部署で働いていたとき、子どもの頃に怖かったものを絵に描いて上司に見せたんです。
すると、何の説明もなしに「畏怖を感じる」と言ってくださって。「絵って感情が伝わるんだ」と思って、嬉しかったですね。
 
畏怖だけじゃなくて「喜」を表現している絵だったら、絵を見てくださった人に喜びの記憶を思い出して欲しいんです。
同じ「喜」の感情に限らず、何かしらの記憶を呼び起こしたり、感じてもらえたりしたら嬉しいですね。
 
黒い背景に白い少女が描いてある『花と踊り子』という作品は、主人公=鑑賞者の目線で描いています。
花の丘の上で踊る少女の姿が描かれていて、その姿を見てしまった主人公は、森の一部になって帰れなくなってしまう。そんな畏怖をイメージして描きました。
 
この顔のない少女は、どんな顔をしているのか、どんな表情をして踊っているのか。なぜ森から帰れなくなってしまうのか。それは作者である私にもわかりません。
 
白い少女は私にとってお友達なので怖くはありませんが、黒い世界に住んでいるものなので、誰かにとっては怖いものかもしれません。
森から帰れなくなってしまうことは、非常に怖いことですよね。でも現実に目をそむけたくなるような悩みを抱えている人にとっては、幸福なことになり得るんです。
 
私にとって、アートは「感情」です。絵を見てくださった方が、自由に何かを感じ取ったり、自由に想像して欲しいと思って絵を描いています。

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