Interview: 市岡あけみ

「菩薩のように生きたい」
人生を振り返ると役割を求めて七転八倒してきたという市岡あけみ。
辿り着いた答えは彼女が描く絵の中にある。

 
 

『巡り合う 銀河のかなた 金の舟』80号M(女流画家協会展入選)

 
“人と人の出合いは、神秘です。そこから、エネルギーが生まれます。金の舟は、私たちが生まれて来た目的を達成できるという意味です。
今も銀河の愛をテーマにメッセージ性の強い絵を描いています”

   
 
 
「小学校から何かを求めていたんです。私は人生の中で何をしていかないといけないのか、
生きていることってなんだろう。そんな作文を書く小学生でした。」

 
 
美大を志した高校時代、大切な友人が家出をしてしまった。友達を探しに行ったことで受験を逃した。
 
 
「多感な年頃ですからね。青春の傷を負って浪人する気にもなれず、とりあえず何か打ち込めることをと思ったときに、私、お洋服が好きだったなと思って地元秋田の洋服洋裁の学校に入ったんです。そうこうして東京に行くきっかけを探したときに、デザイン科に入れないかと先生に相談して文化服飾学院のファッションデザイン科に編入しました。」
 
 
卒業後は就職。大手企業ということもあり給料は申し分なかったものの駒のように働く日々にやりがいを見出せず退職。和服からイブニングドレスを作ったことをきっかけにヨーロッパに1年間滞在した。
帰国後は思想家の三木成夫らとともに、富田勲も巻き込みながら電子パイプオルガンの設計や装飾に携わるなど、積極的に挑戦をした20~30代。
 
 
「ヨーロッパに行ったことで日本の良い点、悪い点が見えました。
悪い点というのは、今の日本に哲学や宗教感がないことだと思っています。もともとあったのが、敗戦したことで宗教や哲学が一旦リセットされたと思いますね。日本に限らず神話を失った民族は滅びると歴史哲学者のトインビー博士が言っています。ありとあらゆる仏教や神道、日本のルーツはなんなんだろうと自分の中で模索するようになりました。電子パイプオルガンの試作品に関わったのも、宗教音楽の音響効果や宇宙の微妙な波動が人間を進化させているという理論に興味を持ったからというところが大きいです。」

 
 
ヨーロッパでの経験は現在に至るまで、その後の市岡さんの活動や作風の礎となっている。
日本のルーツや神話を学び、宗教・哲学を見直す作業の中で、イスラエル人から水墨画を教わるなど、自国を外国の視点から客観で見つめ、我々日本人が気付かなかった日本の心や歴史について理解を深め伝えていく。
 
 
「日本の神話を読んきたのですが、最近ようやく意味がわかってきましたのでそれを絵にしていきたい。これからのライフワークだと思っています。」
 
 
『和の遺伝子、宇宙を巡る』

 
“日本人には、YAP遺伝子と言われている特殊遺伝子があります。YAP遺伝子の祖は、縄文人です。
縄文人の特性は、「闘争心の無さ」だそうです。
さらに「YAP遺伝子は、自分を捨てて他人に尽くす遺伝子」
また、親切遺伝子。日本人特有の勤勉さや親切はこの遺伝子の影響があると言われています。”


 
 
神秘的で、見る人にストーリーを想像させる市岡さんの絵。
菩薩のように穏やかな表情をした人物画が彼女のひとつのトレードマークになっている。
作品にメッセージを込める作家もいるが、市岡さんの作品はメッセージはもとより、作品そのものに役割を持たせている。
 
 
「古代に人たちは、絵を描くとそれが実現すると純粋に信じていたんです。人類最古の絵画と言われているラスコーの壁画に牛や馬の絵が描かれているのは、食べていくために狩猟をしないといけないわけですが、牛がほしいときには牛の絵を描いていたからと言われています。絵は実現させる作用が強いんです。だからこそ有効に役立つ絵が描きたいんです。例えば器は使えますよね。絵は飾るだけというのがあるので意味ある絵を残していきたいです。」
 
 
依頼を受けてポートレートを描くことも多いという市岡さん。ポートレートそのものに意味を持たせるのが彼女の描き方だ。
 
 
「菩薩のような生き方ができたら最高だなと思いましてね。母が亡くなるときに苦しんだんですね。でも亡くなったときの顔が本当に菩薩のようで、それが人生の中で一番美しい顔だったんです。人間ってそういうものを持って生まれているんだと気付きました。
だから、持って生まれたものに気付くような絵にしていけたらと思って、オーダーで描いているものにはその方に似せて菩薩を描いています。
菩薩のような心でまわりを優しくあたためてと言う気持ちでその絵を見ながら、ご本人も生きていける。そうすると内面が充実します。菩薩に名前につけて、詩をつけています。」

 
 
『〇〇菩薩』

 
“〇〇には、オーダーを頂いた方のお名前が入ります。
オーダーを頂いた方の内面の菩薩と共に、輝くように描きます。
こちらの方は、まだまだ羽ばたける方なので、マットに孔雀模様の布を貼りました。”


 
 
女性は美しい姿 の自分を収めておきたいという思いがあるからこそ、飾って美しく意味のあるものを。市岡さんの思いだ。ファッションデザインに携わっていたからこその発想で装飾を加え、絵全体をデザインしている。
 
 
「最近描いた菩薩の絵ではジュエリーやビーズをはめこんだり、洋服の生地をデッサン画に貼ったりしています。その方の好きな色を聞いて、色合いを合わせています。
菩薩を描いているけど、宗教的な絵ではなく、ファッション的なきれいな絵を意識しています。飾って美しい、今日はお洋服をどれにしましょうかという感覚でそばにおいて頂けたらと思っています。そしてそれを見ることでご自身が菩薩のようだと感じて頂けたら嬉しいです。」

 
 
市岡さんご自身、還暦を迎えて発想が変わり、歳を重ねた良さ、これまでの経験が生かされて現在地にいる。振り返ると「挫折の人生」だと語るが、点と点が絵を通じて繋がり、若かった頃には見いだせなかった「自分流」が確立されつつある。
 
 
 
 
市岡さんにとって“アート”とは?


 
「天と地、人をつなぐもの」
 
 
 

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