「MojiBa®︎」(Moji Base art®︎の略)という、文字を使った絵を描いています。短大の授業で課された「動物をアルファベットで描く」という課題をきっかけに、この技法を見いだしました。
課題では、当時飼っていたミニチュアダックスフンドの「ちょこ」を描くことにしました。本来ならば「A」や「B」など、アルファベットの単体を使わなければならなかったのですが、どうしても上手くいかなくて。「うちの子はもっとかわいいのに」って(笑)
そこで、アルファベット単体ではなく「CHOCO」や「ちょこ」など、名前を使って描くことにしたんです。
そうして出来上がった作品を提出すると、「課題とは異なるけど、とても良い」と先生が賞賛してくれて。そのときに「この描き方に価値があるのかも」と思いました。
この絵が初めてMojiBa®︎で描いた絵であり、MojiBa®︎誕生のきっかけになりました。
長男が5歳の頃のことでした。ウミガメがビニール袋を食べて苦しそうにしている映像を見て、長男が「どうして苦しそうなの?」と聞いてきたんです。私は「人間の捨てたゴミが海に流れ着いて、この子たちが犠牲になっているんだよ」と教えました。
するとある日、長男が外に落ちているゴミを拾い始めたんです。すごく汚いゴミまで拾おうとしていたので、思わず「触っちゃダメだよ!」と止めてしまって。息子は「何で?このゴミのせいでウミガメが死んじゃうかもしれないのに」と泣きそうになってしまって…。
そのときは「汚いものに触れてほしくない」という親心が勝ってしまったのですが、息子の言う通りなんですよね。「なんて矛盾したことを言ってしまったんだろう」と。何かしなければならないと思いました。
もしかしたら、自分が出したゴミのせいで動物が死んでしまっているかもしれない。そのことに気付いていない人って、世の中にはたくさんいると思うんですよね。「気付いてもらうためにはどうしたら良いのか」と考えました。
私にはMojiBa®︎があるし、動物を描くことも好き。そこで、「ゴミを捨てないで」「海を汚さないで」など、動物目線に立ったメッセージで絵を描くことにしたんです。そうしてプラスチックを背負ったウミガメの絵が出来上がりました。
ウミガメの絵は、プラスチック=「凶器」のように辛辣な表現で描きました。やはり残酷なシーンが一番響きやすいとは思うのですが、それだとなかなか辿り着かないというか。環境問題に興味がある人の目にしか入らないんですよね。「もう少しポップに、楽しい感じに描いた方が、多くの人の目に止まるかも」と。
パリのアートフェアに出展のお声がけいただいたときに、アシカがファッションショーをしている絵を描きました。パリといえばパリコレなどのファッション文化が盛んなので、それと引っ掛けてみたんです。
一見、明るい絵に見えるのですが、アシカが身にまとっているのはプラスチックのゴミで、「これが私たちの最新ファッションだけど?」とでも言うかのように、皮肉な形で。