—吉崎さんの絵は不思議な作風が多いです。ご自身の内面や、精神世界を描いているのでしょうか。
「はい、作品によっては。でも、どちらかというと、ぼく達の生きるこの世界とは、いったい何なのだろうと。むしろ現実世界を客観視して、それを描いている部分が大きいです。あえて言葉にするなら、並行世界のようなものでしょうか。次元のどこかにリアル世界の本体があり、それが現実に投影されていて・・その本体を、実際にある光景と感じ、描いているところがあります。」
—そうしたイメージは、どのような切っ掛けで生まれるのでしょうか。
「決まった条件はないですね。日常生活で断片がふと浮かび、その輪郭が次第に鮮明になることもありますし、とつぜん何かが降りてきたように、身体が勝手に描き始めることもあります。
だから外出するときはミニスケッチブックを、いつも持ち歩いているんです。ふと浮かんだとき、すぐ描き留められるように。でもアトリエに戻って絵にしたら、まるで違った形になることも。とにかく固定されたものはなく、自由に描いていますね。」
—吉崎さんはSNSでも、作品を発信されています。こちらの、現在Twitterのヘッダーとなっている絵は、想い入れのある作品なのでしょうか。
—画家以外にも、まったく違うお仕事の経験があると伺いました。
「はい、20代前半は建設現場で。30歳のときには夢だった自分の店、ピッツェリア&バーをオープンしました。オーナーシェフとして腕をふるい、一生懸命に盛り立てました。しかし新型コロナウイルス等の影響から、行き詰まりまして。でも、そのタイミングで新しい出会いや、身近なアーティストからの触発があり、絵の道を行こうと決めました。」
―人生の大きな方向転換ですね。不安は無かったのですか。
「実は、そんなにありませんでした。何でも、先のことをあれこれ悩むより、目の前だけを見据えて、つき進む性格なので。いまは画家と並行して、総合格闘技にも入れ込んでいます。もともとキックボクシングのライセンスを持っていまして。自らリングにも上がっていましたが、今はインストラクターとしても働いています。」
―そんな意外な一面もあったのですね、驚きました。そうした経験も、どこか作品に投影されるのでしょうか。
「絵のためにやっているわけではありませんが、まったく無関係でもないですね。格闘技だけではありません。芸術と関係ないように見える人生のすべても、どこかで繋がっていると感じます。」
—モチーフには猫もよく登場します、お好きなのでしょうか。
「実家で飼っていまして。しかし、単に好きだからというのでなく、世界を客観視する存在として、表現しているところが大きいです。あるいは、自分をネコに投影している部分もあると思います。ネコは哲学をするといいますからね。」