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Interview: TOMOHIKO YOSHINO GALLERY

美大を出ていない作家さんでも活躍できるよう、私を踏み台にしてほしいと思っています

どのようなギャラリーですか?

性別、学歴問わず、年齢も基本問わないのですが大体私と年齢の近い作家さんとお付き合いさせていただいてます。他には芸術大学を出ていない、ライブペインティングをやっていますとかデザインやってました、ストリートで作品を販売していますという経歴の方が中心です。

一般的なギャラリーは作家さんの経歴を見ることが多いと思うのですが、画家としてやっていきたいと思っていても色々な事情で美大とかって入れない方もいるので、そういった方々の作品を私の目でセレクトして世界に発信していきたいと考えております。それが当ギャラリーの基本コンセプトです。

今年は9月に延期になってしまいましたがアートフェア東京の裏で毎年開催されているART in PARK HOTEL TOKYOに出展が決まっていて、ART OSKAとアート台北、ART KAOHSIUNGにapplyしようと思っています。

 

ギャラリーは設立間もないですが、そういったアートフェアへのアプローチはどのような経緯で実現したのですか?

画商をやっている父の繋がりで交換会に参加させてもらい、そこで仲良くなった方に組合に誘われ「日本現代版画商協同組合」と「現代美術商協同組合」の2つに吉野美術で加入しているのですが、現代美術商協同組合から新しい販路を開拓するために海外のアートフェアにみんなで出ないか?というお声掛けを頂きまして。
また先日「うちのガヤがすみません」という番組に出演させて頂いたのも「現代美術商協同組合」でお世話になっている先輩が出る予定だったのですが、マイアミで仕事が入ってしまったようで出られないから出てほしいと代役を任された経緯があります。

 

元々は美術業界出身ではないと伺っております。美術業界に入る前はどのようなことをされていましたか?

まず美術業界に入ったのは2016年です。それまでは大手飲食チェーンの会社にアルバイト含めて10年以上勤めていました。退職したときは営業部で主任の上にあたる係長位だったと思います。

 

そこを退職して美術業界に入ろうと思った理由はなんですか?

そこの会社が所謂典型定期な「ブラック企業」として有名な会社だったのですが、労働環境等を改善するために「労働時間を短くします」と通達が出ました。一見前向きに見えるのですがふたを開けてみると、ただ時間が短くなっただけで対策の一切ない物理的な無理難題だったわけです。ただトップダウンで降りただけの指示なので、結局サービス残業が増え実質収入が大きく落ちてしまったことや、役職が上の方とお話をした時に「このままだと未来はないな」と感じてしまい身の振り方を考えました。

それで自分にできることは何かな?と考えた時に高校まで野球をやっていたのでスポーツ系・飲食・父がやっていた美術の選択肢が浮かびました。まず過去にやっていた野球関係で考えていたのですが野球関係の仕事が当時見つけられなくて、飲食は結果的に同じことの繰り返しになるかと考えました。美術は「親父でもやっているからできるだろう」という考えもあって美術の道に進むことにしました。

 

前職には未来を感じなかったけど、美術業界には未来を感じたのでしょうか?

父から時々聞いていたのが「日本のアート業界は鎖国気味」ということです。だからもっとワールドワイドに発信できるようになったらもっと未来は明るいのではないか?と考えていたの、でそういう意味で未来は感じていました。

 

お父さんから結構美術やお仕事のお話は聞いていましたか?

いや、全然ですね。親同士で話していることをそばで聞いていたりしていたくらいです。自宅に絵は川合玉堂や横山大観、伊東深水などの絵が飾ってあったのでそれを見ていたという意味では美術に囲まれてはいたと思います。

 

美術業界に入ってからは色々苦労はされたと思いますが実際入ってみていかがでしたか?

最初は苦労どころではなかったですよ。元々お客様がいたわけでもなかったので最初の3ヶ月くらい交換会以外での売り上げはなかったと思います。お客様がゼロの状態から始めても続けてこれたのは交換会の存在が本当に大きかったです。

最初は仕入れ先もなかったので、父に作品を借りて交換会や自力で販売したりを続けていました。ある程度波が少なくなってきたのは本当最近ですね。毎月必ず売れるという業態でもないなかでやっとやり方がわかってきたかなという感じです。

 

今はどのように作品の販売をしていますか?

交換会、アートフェア、ネットからの販売、企画展ですね。企画展の作家さんは自分で色々な展覧会を見に行くのはもちろん、ご紹介を頂くことも多いです。

 

作家さんを選ぶポイントはなんですか?

基本は作品を見た時の直感です(笑)
後はコンセプトにもあるように芸術系の大学に行っていない方ですね。
まだまだ先輩方と比べるとお客さんも少ないので作品を販売してあげられる保証はないのですが、一緒に切磋琢磨してくれる作家さんが良いですね。
ある一定のレベルまで到達した作家さんには僕を踏み台にして成り上がってほしいと思っています。

 

飲食業という全く別の業界から美術業界に入るにあたって、美術に親しむために意識的に取り組んだことはありますか?

特には無いのですが、、、小さいころから自宅に飾ってあったのでそれほど意識はしていなかったですね。ただ絵を描くのは嫌いでした笑

この業界に入るまでは画廊や美術館も行ったことなかったことなかったです。
正直前職の時は全く見に行く暇なかったのもあります。

 

この業界に入ってから学び始めたというわけですね。どのように学びましたか?

気に入ったアーティストが一人いればその方を徹底的に調べるようにしました。
深く調べていくと必ず師弟関係や親族など横の広がりが出てくるので、そこも調べて・・・という風に知識を広げていきました。

逆に興味ないことは一切興味を持てないタイプですね。

 

この業界に入ってよかったことはどんな点ですか?

もともといた業界がものすごいスケジュールで動いている業界だったので、自分でスケジュールを決めて動けるという点や当然経営者とのつながりは増えたので、そういった方々に色々なお話をお聞かせいただける点や、社交場や初めて海外に行ったこと、テレビにも出られたことなど。。。前職では絶対にできなかった体験をしている点ですね。

画商、アートディラーという職業は希少性も高く重宝がられますし、若いという点で交換会で非常にかわいがっていただけてます。

 

アートのお仕事は仕入れて売るという非常にシンプルな仕組みだと思います。これだけシンプルな仕組みなので若い人が入ってくる余地は多々あると思うのですが。

そうですね。業界全体として閉鎖的な部分が多々あるので、もっと透明化をするべきだと思うのですよね。そういったところが必要以上に参入障壁を上げているように思います。

 

吉野さんはこの業界に何を求めて入りましたか?

正直入った時は生活できれば良いなと思って入りましたが、入ったら入ったで日本の美術業界はこのままではダメだ。と思うようになり、今はどれだけワールドワイドにできるか?と今まで来ていなかった人がアートを購入しやすいような文化を作るかを考えています。

台湾に行って驚いたのが小中学生がアートフェアに社会科見学に来ていたことです。アートフェアはアートの取引の最前線なので小中学生がその現場にいるというのはすばらしいことだと思いました。

今のアートフェア東京は通路も狭くて、観る環境もそれほど良いとは言えないですから。

 

画廊のオーナーとして師匠のような方はいますか?

沢山いるのですが、最も学ばせて頂いている方がロイドワークスギャラリーの井浦さんです。井浦さんが主催している交換会のオークショニアをやらせて頂いたりして今の私があるのは井浦さんのおかげと思っています。
「そういう言い方やめて」と言われるのですが、師匠です。

 

美術業界を「こう盛り上げていきたい」というお考えはありますか?

海外ではアートを担保にできたり、不動産と同じように扱われています。それは海外ではちゃんとした査定ができる所がある一方日本では状況は全く逆です。では日本ではなぜ不動産と同じように扱われないかと言ったら、結局それは「この作品はオークションに出したらいくらになるからここまで保証できますよ」という信頼のようなものが無いからだと思います。そういうことができるようになったら投資目的にはなりますが、そういう目的でも購入するコレクターさんがもっと増えるのではないかなと思っています。

もう一つはこの鎖国的業界をもっと広くしたいです。しかも敷居を低くしながら。
今画商をしていると周りに言うと、「1万円の絵を100万円で売るような商売でしょ」とか言われ、日常で絵画や画廊、美術品は悪いイメージを持たれていることや、勘違いや認識されていない事が良くわかります。実際そんな業者は当然淘汰されているのですが、、、

ただこの現状は私一人だけの力ではどうにもならないので、同世代の仲間たちと一緒にどうにか変えていきたいと思っています。

 

TOMOHIKO YOSHINO GALLERYに来るお客さんには何を期待してきてもらいたいですか?

京橋というと古美術のイメージが強いかと思うのですが、私のように現代アートを中心に扱っているお店もあるということを知っていただきたいなと思っています。

また初めて入ったギャラリーが私のギャラリーだったらこれをきっかけに、色々なギャラリーに気軽にはいってもらいたいです。もちろんうちのギャラリーで買う買わないは別で。

 

この業界に入った時から美術業界を何とかしたいという想いは持っていたのですか?

想いが弱くなったわけではないのですが、そういった想いは入った時の方が強かったかもしれません。

もともともこのギャラリーも美術系の大学に行っていないから発表の場がなかなか作れないとか、銀座、京橋あたりで発表したいけど資金が苦しくて出せないとか、そういった方の踏み台になるために創業したというのもあるので。

作家さんとの取り分に関して例を挙げると作家さんを大事にするという意味で、画商と作家は2:8位が良いんじゃないかと思っていたのですが、正直それは商売にならないことが分かったりとかお互いに商売を成り立たせるためにはもっとフラットに見るようにはなりました。

 

今後TOMOHIKO YOSHINO GALLERYとしてどのような方向性で活動をしていきたいですか?

なるべく芸術系大学を出ていない作家さんと中心に組んで、企画展を年に4回ほど、国内・海外のアートフェアなどに出展して世界に質の高い作品を発信をしていきたいです。

余裕が出てきたら企画を月1回ペースに増やしたいとも思っています。

今はまだ台湾しか海外のアートフェアには出ていないですが、来年以降は他の国にも出展していこうと考えています。
「努力すると報われる」ではなく「報われるために努力する。報われた人は須らく努力をしている」私はそう思います。

 

今後美術業界が盛り上げっていくためには業界としてどのような取り組みをしたら良いと思いますか?

難しい事と重々承知していますが、業界での動きというより業界がもっと国を動かさないといけないと思っています。

例えば数年前に企業が経費で美術品を購入できる金額が上がりましたが、まだ足りないと思います。
他には美術館に寄贈したら税金が控除されるというのも議論されていますが、個人が美術品を購入したら確定申告で控除できるという制度を作るとかも有りだと思います。
私はよく海外と比べてしまうのですが、例えば商業施設などを建築したら建築費用の1%をアートに使いなさいという法律があります。例えば100億円であれば必ずそこで1億円分はアートを購入することになるわけでそこで流通が起こります。
そうするとみんなが行くところにパブリックアートができて、アートが日常になっていくのではないかと思います。
相続税の話などもっと国の制度で見直していくべき点は多々あると考えています。

いずれにしろ業界主導でさらに国を動かしていくことは必要かと思います。

他にも海外のギャラリーをもっと日本のアートフェアにも招待すべきかと思います。アートフェア東京においても海外ギャラリーの出店数が他国のアートフェアに比べると少ないんですよね。海外のギャラリーが少ないと当然海外のギャラリーは出展しづらくなってしますので。他の国のギャラリーが出展してくれれば関係者やお客さんは絶対に日本に来てくれますし、もっと海外のギャラリーにアプローチをしても良いかと考えています。

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吉野美術の現代美術・プライマリー部門として2019年にとして設立。
同世代(20代~30代)を中心に学歴・国籍・性別等のあらゆる概念に捕らわれず、まだ世界に紹介されていない、現代(いま)を生きる優秀なアーティストの発掘と育成、質の高い作品を発表する場と空間を作る事を理念に運営をしています。

TOMOHIKO YOSHINO GALLERY
住所:東京都中央区京橋2-7-11
電話番号:03-6663-9796
営業時間:展覧会時11:00~19:00 その他お問合せください。
休廊日:展覧会情報に準ずる その他お問合せください。

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TOMOHIKO YOSHINO GALLERY 
オーナー吉野智彦

1983/8/20生まれ(36才)高卒。9才と3才の息子がいる2児の父プロ野球選手を夢見て小学生から始めた野球を高校まで打ち込む。

高校卒業後からバイトをしていた大手飲食チェーン店の社員登用試験に推薦され、社員になる。
2016年に延べ10年以上働いたが未来を感じなくなり、退職をし、父が東京・京橋で30年以上画商をやっていた縁もあり、全く未経験の美術業界に身を置く事にする。
2019年から国内外のアートフェアに出展を始める。

2020年現在は、吉野美術で父がやっているセカンダリー(二次流通)の仕事をしながら、現代美術・プライマリー部門としてTOMOHIKO YOSHINO GALLERYを設立し、通販サイトとしてギャラリーアフライトを運営している。

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