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Interview: Shea.

インスピレーションに導かれるまま、宇宙の神秘を描き出す

 

“ 18年ぶりに描き始めた絵を通して、心と向き合う „

「作品を通じて伝えたいのは”宇宙の神秘”なんです。」

と話すアーティストのShea.が絵画を本格的に描き始めたのは、工業高校でデザインを学んで以来、実に18年ぶりだという。それまではアパレルの販売員やアクセサリーショップの立ち上げなど、子どもの頃から好きだったファッション関連の様々な職業に携わってきた。

現在は、天然石を販売するWebストアを運営するかたわら、自然や宇宙の神秘から得るインスピレーションをキャンバス上に表現するアーティストとして活動している。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより家で過ごす時間が長くなる中で、持て余した時間に何をしようかと考え思いついたのが、絵を描くことだったという。画材に選んだのは、高校時代に慣れ親しんでいたアクリル絵の具だった。

Shea.の創作活動の根源はインスピレーション。絵を描く際の心境について聞かれると、「並べられた絵の具の中に、”今日使った方がいい絵の具”が光って見えるようなイメージです。なんとなく『ピンクっぽい絵が描きたいな』と思っていた日でも、キャンバスの前に座った時に緑色の絵の具が光っていたら、それを使った方が絶対に納得いく絵が描けるんです。」と話す。

「時間や場所の制約が無ければ、作品が完成することはないのかもしれません。」

Shea.の創作の特徴は、ほとんどの作品が何層にも塗り重ねられていること。インスピレーションに導かれるままにキャンバスの上で踊る色たちは、納得がいくまで何度でも上から新たな色が乗せられた結果できあがったものだという。

同時に3つから5つの作品を描くこともあるそうで、新たな作品に取り掛かる際に、創作スペースの都合によって完成とされる作品もある。もし時間にも場所にも制限がなければ、彼女の作品がどのようにアップデートされ続けるのか思いを馳せると、ついワクワクしてしまう。

 

 

“ 自分にしか描けない、”色が持つ力”を表現した連作「Chakras」 „

「絵と向き合う行為は、私にとって瞑想に近いところもあるんです。」

普段はショップ経営に関する考え事が多かったり、お客様とのやり取りやSNSの更新のため、スマホを通じてオンラインの状態が常である。対照的に、絵と向き合っている時間は外界から切り離されて自身の心の内と向き合えるため、瞑想のような状態になるそう。

「特定のものを写実的に描くことは、私は一生しないと思います。」

インスピレーションを何よりも大切にするShea.は、心の内から湧き出るスピリチュアルなイメージを絵に写し取るスタイルを貫いている。

しかし、意外にも「昔は全くスピリチュアルなものを信じておらず、目に見えるものしか信じないような人間でした。」とのこと。「でも、とある出来事をきっかけに、スピリチュアルな世界に興味を持って調べ始めるようになりました。その出来事自体は決して幸せなものではありませんが、この世には目に見えない世界があるのだと信じざるを得ないような体験でした。」と、自身の原体験について語った。

今では周りにもスピリチュアルな感性を持っている人も多く、自身も感じやすい部分があるというShea.は、作品のテーマにもスピリチュアルな要素を据えることが多い。

中でも9つの連作からなる「Chakras」は、「自分にしか描けない作品だったと思う。」と振り返る。

「チャクラというのは人間の体を縦に走るエネルギーセンターです。複数の見解がありますが、一般的には1から7まであるとされており、それぞれに対応する色があります。そしてチャクラを活性化させるには、対応する色を見るだけでもいいと言われているんです。このように、色にはそれぞれ力があるんです。」

「スピリチュアルな文脈から離れたとしても、例えば赤色を見れば『暖かそう』、青色を見れば『涼しそう』など、何かしらの感情が想起されますよね。」彼女に言われて、改めて人間が色から受け取る影響の多大さに思い至る。

高校時代に色彩検定を取ったりなど、色とその力について、スピリチュアルな感性と学問的知識の両方を備えているShea.だからこそ、「Chakras」という連作を描き切ることができたのだ。

 

“ 日本画に影響を受け、アップデートされていく作風 „

「何かから影響を受けて絵を描くことは、これまで全くと言っていいほどありませでした。」

これまで記してきたように、Shea.の作品はインスピレーションに導かれるままに、彼女自身の心の中から生み出されてきており、他の美術作品などから影響を受けることはほとんどなかったという。しかし、そんな彼女に転機が訪れた。

「美術鑑賞の習慣もほとんどなかったんですが、この間、旅行先の美術館で日本画の展示を観たんです。対象物をどこまでも繊細に描こうとする日本画と、自分が描く抽象画は対極といってもいいほど違うはずなのですが、その時出会った日本画のタッチに非常に感銘を受けました。」

その出会いをきっかけに、新たな作風にも取り組み始めたという。

「これまでの描き方は3種類でした。筆で点を”ペンペン”と打っていくものと、キャンバスに垂らした絵の具を”ウニョウニョ”と広げていくもの、絵の具を全面に塗った後に”シャッシャッシャッ”と削り取っていくもの。」自身の作画について擬音を交えながら話す彼女は、目を輝かせ笑みが溢れる。

日本画との出会いで、作風にどのような影響を与えられたのか問うと、「自分なりにですが、日本画の要素を取り入れるようになりましたね。例えば日本を思わせるような色使いをしてみたり、厚く塗り重ねた絵の具を菊の花のような形に仕立てたり。」と答えた。

作品から受けたインスピレーションを通じて、自身の作風をアップデートしていくShea.のこれからの作品が、さらに楽しみになる言葉だった。

「オンラインとオフラインだと、絵を見た時に受ける印象は違うと思います。」

自身の作品を通じて”癒し”や”温かみ”を感じてもらいたいというShea.は、先日初めてオフラインでの展覧会を実施した。その際、訪れた人々からの言葉を直接聞くことができ、「自分の感覚は間違ってなかったんだと嬉しく思いました。」と話す。

自身の心の内が描き出されたShea.の作品が纏う温かみは、彼女自身の人柄が成せる技だろう。特に、塗り重ねた絵の具で形取られた作品などは、ぜひ目の前でその立体的な表現や、そこに込められた宇宙の神秘を味わいたいと思わされる。

 

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