日本文化を継承するアート販売Webメディア

葉脈の向こうに見え隠れする本当の気持ちを問う。
常識を疑い、ひっくり返すNIMの挑戦。
鬼灯(ほおずき)のモチーフで知られるアーティスト、NIM。
様々な色合いの鬼灯をこれまで140作ほど描いてきた

 
 

國宗恭史 – ホオズキ【紙風船】2021-4-F20キャンバス-アクリル


 
 
「何でこんなに同じものばかり描いているのかといいますと、普通はやらないことをやりたいからです。誰もやらないこと。その行動こそがアートだと思っています。」
 
 
これだけ同じものを描くなら、シルクスクリーンなどで複製することもやぶさかではないのではないかと想像したが、そもそもシルクスクリーンでは葉脈部分のゴールドの発色やきらめきが上手に出ないそうだ。
40歳で絵を描き始めたNIMはそれまで映像を中心としたデジタルアートの世界にいた。手描きにこだわる所以はここにもある。

 
 
「パソコンでやったら1秒で終わる作業が何時間もかかるわけじゃないですか。パソコンだったら気に入らなかったら戻って修正することも可能です。手描きだと戻るわけにはいかない。デジタルだとコピーも簡単にできて、同じものを作ろうと思ったら30分あればできちゃいます。ちょっと面倒なのが手描きの面白さなんですよね。」
 
 
國宗恭史 – ホオズキ【無】台日藝術博覧会2019-3-F20キャンバス-アクリル


 
 
 
映像デザイン会社を設立し、ビジネスも軌道に乗っていた中で突然の方向転換。ゲームの開発からCMやミュージシャンのPV制作までを手掛け、ベテランの域に達していたNIMがなぜその道を捨てたのか。
 
 
「アーティストとしてビジネスはできないんですよね。クライアントさんがいて、発注を受けなければビジネスとして成立しないことをやっていたので、僕自身の作品を残すことができない。いくら僕がやっていたとしても、ビジネスである以上は100%僕にはならないんですよね。お金のためにやっているというか。当たり前なんですけどね、生きていかないといけないので。そんな時にスティーブ・ジョブズの言葉に出会いました。『あなたの時間は限られている。だから他人の人生を生きたりして無駄に過ごしてはいけない。」『もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろこの二つの言葉と真剣に向き合い、本当に自分がやりたいことに時間を費やそうと決意しました。」
 
 
初期作品


 
 
 
「すごく充実していますね。絵は100%自分じゃないですか。僕が考えたものを僕が描いて完結できる。言葉もいらないし、僕の描いたものを観てくれた人の感性で評価してくれる世界が魅力的ですね。」
 
 
いつまでも心に嘘をつき、自身が本気で取り組みたいと思った現代アートの表現を封じ込めることができなかった。
多くの人がそうなのではないかとNIMは考え、鬼灯の絵に強いメッセージを込めている。

 
 
「鬼灯の花言葉には”嘘”や”偽り”というネガティブな表現がされています。それなのに何故モチーフに選んだのかというと、鬼灯は枯れると葉脈だけが残り中の実が丸見えになります。この姿こそ嘘偽りのない真実を表していると思うのです。」
NIMが描く鬼灯は葉脈の隙間から中の果実が見えている。それは人の心であり、真実の心を表現している。
 
 
國宗恭史 – ホオズキ【無】台日藝術博覧会2019-3-F20キャンバス-アクリル


 
 
 
「現代アートときくとネガティブな印象があるのか、周りからは『食べていけないだろ』とか、そういう感想しか出てこないんですよね。何でなんですかね?僕にはわからないです。みんなフェイクを信じてそれが常識になってしまっています。小学校とかの美術の授業で『ピカソは死んでから作品の価値が出て、生きているときは貧乏で・・・』と教えられるから刷り込まれているんですよね。
おかしなことをやっているのはわかっているんです。40歳から絵を描き始めて挑戦するって周りからしたら変だと思われる。だけどわからないじゃないですか。結果が出たらすべて変わるんです。今非常識って思われていることも結果が出ることによって変わります。僕は自分の行動を持って証明したいんです。」
 
 
そうして自己流で始めた創作活動だったが、最初はこれで良いのかという自信はなかったという。
フランス・パリの『サロン・ド・アール・ジャポネ2019』で、グランプリを受賞したことをきっかけに、自身のやり方で大丈夫なんだと確信できた。

 
 
「勉強してきた人たちからすれば素人だと思われるかもしれないけど、アートってそもそも変なほうがいいと僕は思うんですよね。何も習っていない子供が描いた絵がすごかったりしますし、型にはまらないのがちょうどいい。僕はそっちかな。うまいとかきれいとかではなくて、変とか自由とか。」
 
 
刷り込まれた常識を覆すのは、挑戦者たちの心意気だ。
あなたはNIMの描く鬼灯を見て何を思うのだろうか。

 
 
 
國宗恭史 – ホオズキ【真】2021-5-F20キャンバス-アクリル


 
 
 
 

戻る