以前は漫画家を目指していたのですが、起承転結がある作品ではなく自分の中にある一瞬の感覚や空気感、距離感などを1枚の絵で描きたいと思ったのがきっかけです。 マンガは印刷を前提とした作品ですが、原画を見てほしいと思ったことも一つのきっかけです。 マンガ家デビューに区切りをつけて、、でも表現をすることはやめたくなかったので絵を描いたり、粘土とかで立体を作ってみたり写真をポストカードなどにしてみたり色々やっていたんですけど、それを東京で展示していたときに原画を売っている人がいて「原画っていいな」と思ったのがきっかけでした。 それまでの自分の作品は印刷を前提にしていたので、余計に原画に惹かれました。それが5年くらい前の話です。 ある程度はばっさり切り替わりましたね。少年マンガ雑誌の編集さんとのやり取りをスパッとやめましたし。表現としてマンガを描いていたのが今は「1枚の絵」に替わったという感じですね。 いやぁ~、特別・・・(笑) 小さいころはマンガより動物が大好きでテレビ番組で動物を見るのも好きだったし、自宅で動物は飼っていなかったんですけどその分学校で飼育係をやっていました。一年前に16年一緒にいた愛犬が亡くなって、今は自宅でメダカを飼っています。 最初のころはマンガに寄ったイラストを描いていたのですが、1枚の絵で描きたいと強く思ってからは動物がほぼ入っていますね。 イラストを描いていた時は人間も入っていましたが、1枚の絵に転身してからは動物のみになりました。 このお話をするとなると、「HAZAMA」のシリーズについての説明からしないといけないですね。 絵を描くかどうかは別として動物をテレビや本、映像やもちろん実際に見るのも好きで、その中でも興味を持った動物は、そのしぐさや生態など細部まで興味がわいて色々調べていくうちに、この動物はこういう生活をしているんだとか少しずつ知識の蓄積が出来てきます。 この「ハザマの世界」というシリーズは自分も含め「絵の前に立った人」と「絵の中の生き物」との間にできる、空間を描きたいと思って描いています。 今回の「展覧会に寄せて」の中にもあるのですが、 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ここが作品を作る上での出発点です。 絵に描いている風景は私が実際に足を運んだ場所です。日常的に作品目的とかではなくスナップ写真を撮るのが好きで、撮り溜まった中から「この景色良いな」と思ったら今回この場所を作品にしようと決めます。 それから動物が、、「通る」という言い方をするんですが(笑) 言葉で言ってしまうとすごく独特なんですけど、(風景の中に)描きたい動物がいて、「この動物だったらここでどんな動きをしてくれるだろう」と頭の中で考えると動いてくれる。 もしその時、ライオンではしっくりこなかったら別の動物が通るのを待って、しっくり来たら脳内のシャッターを切ります。だから最初に「この子を描きたいな」と思っても、しっくりこなければ他の子を描くことも多々あります。 あと描いている動物は実在しますが基本的に日本にいない動物です。雀とかカラスは普段の日常から目にする機会は非常に多いですが、私が描く動物たちの多くは日本にいない、出会うことはまずないけど、今この地球上で生きている動物たちです。 自分を人間という一つの生き物と捉えた時に、人間とは全く異なる生き方をする動物に強く惹かれます。 目の前に動物がいたら~と想像はしますが、自分のところに来てほしいという願望はないんです。それぞれの動物たちが本来暮らしている場所にいてこそだと思っています。 この地球のどこかに住んでいる生き物と、自分とがつながることができる不思議な空間を絵に描きたいんです。 動物ってすぐ逃げるというか、例えばワンちゃんとかみたいに呼んだらすぐ来るとかっていうことはほとんどなくて、私がリスペクトしている動物は野生に生きている子たちなんです。 向こうもこっちを見ているので、これ以上足を踏み入れたら逃げてしまうかもしれないし、もしかしたら向かってくるかもしれない。その微妙な距離感を大事にしながら作品を描いています。 あ、そうです。風景と実際に存在する動物なので、ほぼほぼ絵の建物や動物の寸法は合わせています。 あと、私自身絵の中にあえて人間は描いていないです。そもそも作品として描きたいと思っているのが私と動物だけがつながっている「空間」なので、他の人がいないんです。でも人間の存在は感じるんです。生活感があるというか。 意識的に人間を排除しているわけではないです。 「ここに人間は必要ない!その理由は・・」とか考えていたわけではないんです。 写真をもとに作品を描いていますが、元々撮影したそれぞれの場所に人は写ってはいるんです。作品は絵を見てくれている方や私と動物とのパーソナルなスペースを描いていて、その中には自然と他に人がいなくなっていくんですよね。 本当そうだと思います。 人によっては「ファンタジーでしょ」って思う方もいるとは思うのですが、私の中では1から作られた世界という意味でのファンタジーと「ハザマの世界」は区別しています。 私の作品で言えば実際にある場所であり、動物も今自分の目の前にいなくてもこの地球上のどこかに生きているしサイズもほぼ実際の大きさをもとに描いています。だから私の中ではそんなハザマの世界を「面白いな」と思って見てもらえたら嬉しいんです。 例えばこの30号の作品だと・・・延べ1ヶ月半くらいですね。 HAZAMA-16 Argali 制作年:2018年 1日階段1段しか進まなかったときは正直どうしようという感じでした(笑)。本当に終わるのかなと。 制作年:2018年 1週間かかったかなくらいかな? ただ、矛盾していることではあるのですが・・・実は薄くても時間がかかります。 ペン先を墨汁に付けて和紙に描いているのですが、「HAZAMA-19 Shoebill」でいうと 壁の部分にうっすら線を入れています。線を同じ細さで描かないと同じ壁の色に見えなくなってしまうので、同じ細さや色味で描くことに時間をかける必要があります。なので、うっすら色を入れるというのも神経を使うし時間もかかるのです。 特に和紙に墨で描いているので修正がききません。間違えたら1から書き直しです。墨がぼたっと落ちてしまったりとかしたら、もう・・・。だからすごく神経を使って描いています。 私が1枚の絵でやっていくようになってからそれほど時間が経っていないので、平均を出すことは難しいのですが今のスタイルになって1年ちょっとくらいの間で21作かな?あと、小さいサイズの作品は合間にちょっとずつ描いてはいますね。 誰かに師事したりとかはないです。漫画の専門学校を出てはいますが、美術としての美大や美術関係の学校は出ていないです。あとは特に画家さんで影響を受けたって言われると。。特にはいないですかね。正直に言うと画家さんの名前とかを言われてもあまり詳しくなくて・・・ カメラとかも好きなんですけど、特段誰が好きというのはなくて。絵もそうだし、写真とか工芸品とか日々色々な方から影響を受けていると思います。 そうですね。そう在りたいという気持ちはあります。 一生自分の中の感覚を表現していきたいです。 作品を見た方から「おもしろいですね」と言ってもらえたことですね。私が描いている世界観とかを楽しんでもらっているということがわかるとすごくうれしいです。 私自身は感情を糧にして作品を描くことはしていなくて、絵は心地良い空間にしたいと思っています。あまり使わない言葉だと思うのですが、私が最近意識している言葉で「目ざわりが良い」というのがあって。和紙の手触りが心地良いと思うように、目で「触る」と心地良い・・・と思う作品を描きたいんです。 そういう感覚はずっとあったと思うのですが、ここ1年くらいで何とか言葉にしようと思って、やっとそれが最近言葉にできたんだと思います。 自分の感覚をなんとか伝えたくて。でもたまに親とかにも「その言葉何?」と言われるのですが、何とか自分の中の感覚を伝えたくてそういう言葉がでてきているだけなんです(笑) 絵を描くこと自体は好きです。 でも自分の感覚を外に出す、伝わるように出す、それが難しい。なのでうまく伝わっていないことがわかると自分の中にもどかしさはありますね。 それか・・・1日で階段1段分しか進まなかったとかですね(笑)どうしても時間がかかることをやっているので。 以前、知り合いの油絵画家さんに「沢山作品を仕上げるにはどうすれば良いですか?」って聞いた時に、「いくつも並行して描けば良いんだよ!」と言われ早速実行しようと思ったのですが、私は油絵のように絵の具を乾かす時間が必要ないんですよ。墨なので。 だから並行して描いても意味がない(笑)なので基本的には1枚の絵を仕上げて次に行くという感じです。 一番自分のハザマの世界を出せたなと思うのはArgaliですね。 HAZAMA-16 Argali 制作年:2018年 距離感が一番うまく取れたなと思います。 他の動物もそうなんですがそういう距離感のやり取りなんかをしつつ作品を描いています。 挑戦という意味では、色を使った作品はやりたいです。今はモノトーンがメインでどこかに1色から数色入ってはいるんですけど・・・ 自分なりにもう少し色を表現としてうまく使いたいと思っています。 表現の一つです。 今作品として個展に絵を出していますけど、日常的に言葉であったり、写真であったり、ジェスチャーであったり、なにかしら表現はしているわけじゃないですか? 今は絵がその中でもメインという感じですね。絵を描き始めたきっかけはなんですか?
原画を見てほしいと思ったきっかけはなんですか?
マンガから絵にはバッサリ切り替わったのですか?
小さいころから漫画が好きだったのですね?
黒木さんの作品の中には必ずと言っていいほど動物が入っています。1枚の絵を描くようになってからずっと動物が入っているのですか?
作品の中に入り込んでいる動物はそれぞれ選ぶ基準などはあるのでしょうか?
今この場所に、ここにはいないものが
今この瞬間に、私の目の前にいたら
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小学校の帰り道も今もそうですけど、目の前に今はいないんだけど、もしここにライオンがいたらどう行動するんだろう?など考えることがあって・・・これが作品のインスピレーションとなり作品の出発点になっています。通る?
例えばライオンが寝そべった瞬間に「あ、この状態良い!」と思ったら脳内でシャッターを切ります。その脳内でシャッターを切った空間を手で絵に起こします。
独特なんですが、なんとなく伝わってくれれば・・・なぜそこまで動物に惹かれているのですか?
自分の描く作品世界はあくまで現実と非現実の世界のハザマなので。レセプションパーティの時、距離感も大事というお話がありました。
動物の大きさは実際の大きさですか?
意識的に人間の姿を消したのですか?
現実と現実を足して非現実を創り出していますね。
ファンタジーではないんです。作品はつけペンで描いているそうですね。
そうです、基本的にはマンガを描いているときから使っている「つけペン」を使っていて、その中でも最も細いペン先の丸ペンを使っています。部分的に筆を使っているところもあるのですが、全体的を描いているのはつけペンですね。あとは手の加減で線の太さを変えています。一つの作品を描くだけでも気が遠くなりそうです・・・例えば30号の作品を描くのにどのくらいかかりますか?
黒木リン
サイズ:91.0 x 60.6 cm
号数:M 30号
技法:画材:墨・アクリル絵具 支持体:パネル・和紙
価格:168,000円
備考:送料:2,500円
SOLD OUT
細かい作業は嫌いではないですが、やりながらつらいと思うことはあります(笑)オラウータンだとどのくらいかかりました?
HAZAMA-20 Orangutan
黒木リン
サイズ:45.5 x 33.3 cm
号数:P 8号
技法:画材:墨・アクリル絵具 支持体:パネル・和紙
価格:56,000円
備考:送料:2,500円
SOLD OUT
例えば建物など細かい部分がたくさん入っていると、ペンの強弱や重なりなどで濃淡をつけていくので、黒い部分が多いとそれだけ時間がかかるんですね。墨で塗りつぶすこともありますが、濃い部分は基本的に全部線を重ねて描いているので濃いところが多いほど時間がかかります。だから作品の大きさが小さければ早いということではないです。
ちなみに私は筆もカラフルな色付けもあまり得意ではないので、、、だから私の武器はつけペンだ!と思うようにしています(笑)気の遠くなるような話をしていただいていますが(笑)年間何枚くらい描いていますか?
影響を受けた画家さんやどなたかに師事したことはありますか?
”表現者”として在りたい以前写真を撮っていることを聞いたからかもしれないですが、黒木さんは純粋に”表現者”という言葉がしっくりきます。
絵を描くのがすごく好きだから絵を描いているというよりも、自分が表現したいものに絵が最も近いから今は絵を描いていて、それが「HAZAMA」のシリーズなのだと思います。作家として最も嬉しかったことはなんですか?
その心地よさは絵を描き始めたからずっと意識してきたことですか?
印象的な言葉をよく使いますね。
逆につらかったことはどんなことですか?
ハザマシリーズで最も自分らしいなと思う作品はどの作品ですか?
黒木リン
サイズ:91.0 x 60.6 cm
号数:M 30号
技法:画材:墨・アクリル絵具 支持体:パネル・和紙
価格:168,000円
備考:送料:2,500円
SOLD OUT
草食動物なので警戒心が強いから、、、向こうもこちらの存在に気付いているので、私が動いたら逃げちゃうだろうなぁ。でも今この瞬間を止めていたいから動けない!っていう状況です。これからどんなことに挑戦していきたいですか?
黒木さんにとって絵とはなんですか?
自分の中の感覚を表現する手段の一つだと思っています。