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Interview: 東俊達

東洋・西洋絵画の神髄を融合して表現される東俊達の絵画。
油絵のような重厚感ある明暗、印象派の色彩と、水墨画のような生きたタッチ。
使われているのはたった6色の絵具と、1本の筆 ―

 
父親は水彩画家の「東富有 (ふゆう) 」。
兄は「東有達 (ゆうだ) 」、妹は「東達美(たみ)」、ともに水彩画家として活躍する、水彩画一家である。

 
「父曰く、生まれたときから筆を持たせていたそうです。幼少期の時、父は私達のことを子供として接するのではなく、大人同然に父の持つ深い芸術と思想を教えてくれました。」
 
幼い頃から公園で写生をしたり父が教える絵画教室で兄妹とともに絵画を学び、また広い芸術の歴史を知るために中国、イギリス、フランスへの留学経験を持つ。フランスの町を写生していたとある日、ふと感じ取った感覚があるという。
 
「何故かはわからないんですが、僕は将来一流の作家になれるという感覚が降りてきたんです。
根拠があるわけじゃないんですが…きっとうまくいってたんでしょうね、絵が(笑)」
 
そのときが年齢にして18歳。当時降りてきた自信が確信に変わったのはその2年後。20歳のときに開催した初の展覧会で作品がすべてソールドアウトしたのだ。
 
「作家の定義は作家それぞれですが、僕は人に感動を与えられるのが作家だと思ってるんです。
例えば”辛いときにあなたの作品を見て感動しました”と言われたときや、
絵画の前で涙を流している人がいるのを見たときに僕は作家なんだなと自覚しました。」
 

波 / 19歳の頃の作品。寒い冬の厳しさの中に透き通るような透明感ある白い波に感動して描いた。

 
作家として一流になったと実感しても、いつまでも超えられない存在がいる。
父親の「東富有」だ。人生で一番尊敬する人だと語る。

 
「僕自身長年絵を描いてきて、そろそろ父を超えるかなと思うんですが、
うまくなればなるほど父の偉大さに気付かされてきます。
また多くの海外の著名な画家との交流やいろいろな土地を歩いたり、多くの学生に絵画を指導してきました。そんな今でも、自分の父だからではなく、客観的に厳しい目で見ても父の絵の深み、父のすごさを感じるんですね。
父がよく言うのは”作品と人間性はつながっている。その人がどういうふうに生きたかでその絵画の品が決まる”と。父のそういう生き方や哲学も尊敬しています。」
 

左、東俊達氏 右、父:東富有氏

 
 
その教えに従い、絵はその人自身を映し出す鏡であると自覚して、制作にあたっている。
 
「どういう色を使ったり、抽象と具象のバランスをとるといった感覚は人それぞれ違うと思うのですが
絵をみると、描いた人が考えてることや精神が伝わってくるんですね。
だからこそ、周りの評価のために描くんじゃなくて、自分が感じた美を純粋な心で描いています。
絵を見てくれる人たちはそれぞれの人生の中で多くの美に触れ、美に対する高い教養があります。だから彼らに対して期待に応えられるような素晴らしい作品を見せられるように描いています。
永遠に作品に満足することはないんですが、納得した絵を描けるように毎日深い思考を心がけています。
自分が発見した美の本質を最大限に伝えることがプロとしての意識だと思っています。」
 
夢の中でも絵を描く過程を見ることがあるというほどインプットに費やす時間が長い。
そのためか、描くときはあまり考えないそうだ。

 
「描く前に分析、インプットして、描くときは自由自在に気持ちよく描いています。
絵画は視覚芸術なので理性的な分析は欠かせません。
一方で、感性がない絵も写真みたいにかたくなってしまいます。頭は最大の理性を保ち、心は最大の感性でその美の本質の印象を捉えています。そして一筆一筆に奇跡が生まれるように祈りながら描いています。」
 

制作する東氏

 
 

[su_quote]最小限の筆数で最大限を描く[/su_quote]

「この6色があれば どんな色でも作れるんですよね。
他の色があればもうちょっとだけ(混色が)早いとは思うんですが、作れるならばいらないなという気持ちです。
父が選んだこの6色が、一番透明感のある6色なんですよ。
透明感のある作品に余計な色はいらないです。」
 
その6色を一般的な表現で言うと、「緑・青・水色・茶色・黄色・ピンク」
どう混ぜても作り出せない色を使っている。

 
「ピンクはオペラという名前の色なんですが、赤と黄色でオペラの色は出せない。だからこのオペラを使っています。
白を使わない理由は、紙の白を使えばよくて、それが一番透明感が出ます。
白い部分は素紙の部分を残してますね。
黒を使わない理由は、黒は存在しないと思っているからです。一般的に言われる黒は青と茶色で作るんですが、
青っぽい黒、緑っぽい黒があったりと、いろんな黒があるんですよね。
混ぜる量で変えて微妙な深い色の変化を表現しています。」
 
その他にも東俊達にはこだわりがある。
水彩画では紙の白を生かすために水彩画ではマスキングという技法を用いることがあるが、絵が硬くなるため、使わないという。そして、下描きはしない。使う筆は一本。それも書道の筆のような大きい筆である。

 
「細筆も平筆などなど、色々な筆を研究して、巡り巡って今の1本に戻ってきました。
多分、この1本の筆で描けるから、というのが一番の理由ですかね。木や猫の絵など、細かいところもこれ1本です。
書道でも細い筆でひとつの字を形成して書くと味がなくなると思うんですね。
水墨画もそうなんですが。 1本で描くからこそ味が出てきます。」
 

休日 / 猫の優雅な休日に癒され温かい気持ちになった。

 
 
“東洋絵画と西洋絵画のバランス” や “理性と感性のバランス” など、
バランスは東俊達の作風を語る上で外せないキーワードにも聞こえる。
そんなバランスは絵画を完成させる上でも語られる。

 
「僕の概念に“絵の失敗”はないんです。
人間だから、描きたかったイメージと違うなと思っても軌道修正して表現したい美に近づけていきます。
脳の問題でもあるので、落ち込んでいるときは失敗に見えてしまったりします。
だから完璧は求めるけど、全て美しく描こうとはしません。全ての部分が美しいとそれは全体的に見ると美しくありません。完璧は部分で捉えるのではなく全体で捉えるべきです。美しい美の本質を表現するために作品の上での調和が必要です。だからこそバランス主義の考え方が一番良い作品を作れると僕は思います。」
 
父や兄、妹とともにAZUMAsとして企画展を行なっているが、
兄や妹についてはどのような思いがあるのか。ライバル意識について聞いた。

 
「確かに気になりはしますけどね。どういう絵を描くのか。また良い刺激を受けています。
僕たちは絵を20年以上描いてるんですけど、
そうなってくると技術の勝負ではなく、自分が発見した美は何か、描いた題材が何かがより気になってきます。でもやはり人それぞれ審美も違って、感動するビジョンも違うので、芸術を比べるのは難しいですね。」
 
東俊達にとって “ アート ” とは?
 
自分が感動した美の本質を伝える手段
 
 

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