時は江戸時代。紅色の着物をまとった一人の美しい女性が町を歩いていた。天気は快晴。空は青く澄み渡っていて、遠くの富士山がよく見える。しかし、ふとした瞬間に嗅いだこともないような臭気とともに暗雲が立ち込めた。その時、女は雲や煙の中に何かを見た。 幾百年の時が流れ、時代は令和というらしい。街を見渡すと、変わった装いをした人々が神妙な面持ちで舗装された道を歩いている。皆が広い心で助け合うのが普通だと思っていたが、道行く人々は目を合わせず、少々自己中心的に見える。日本人自体はほぼ変わらないが、どこか色褪せた服を着ている。かつての閑静な面影は無く、目が眩むほどの電飾が瞳孔を貫き、騒々しい交通音が黒煙をあげて鼓膜を揺らす。所狭しと並べられた建造物が人々の息を詰まらせる。鉄に押しやられた自然は消えたようだ。私たちは自然と共生し、廃棄物を極力出さず、汚物でさえも再利用している。しかし、彼らは大量の既製品を消費して生活を営んでいる。それは食生活にまで及び、得体の知れないものを口に運んでいる。どこか力士のような体格の男がやけに多い。そして、各人が黒い板を持ち、何人かはそれを上に掲げては喜んでいる… 女はふと我に返り、辺りを見回した。動物たちが自由気ままに動き回り、遊んでいる子どもたちのころころとした笑い声が響いている。大人たちは陽気に声を交わし、ゆっくりと時間が流れている。先ほど見たものは何だったのか。色があるようで色の無い未来が現れたのか。あれが先進した未来だとしたら興味深い。用事を思い出した女は先を急いだ。
コピックの手描きで制作しています。何百色もあるコピックの特性を利用して、カラフルに仕上げるのが好きです。作品のテーマは、人間の感情や社会問題、自然とヒトの対比やそれらが互いに与える影響など、多岐にわたります。将来は色々な場所で絵を展示し、個展を開いたり、様々なメディアにも取り上げていただくこと等を目指しています。また、日・英語が話せるので、国内外を問わず活躍したいです。
【略歴】 2000年 ・茨城県生まれ 2019年 ・学習院大学文学部入学