Interview作家インタビュー

書画
Ryo
書道を4歳からされているRyo氏。お手本通りに美しく、丁寧なお習字を厳格に習ったのちに、現在は「書道とほかの芸術の交錯」を発信しているという。長い年月をかけているからこその視点の変化など、今回のインタビューでは興味深いお話をたくさん伺うことができた。
アートとの出会いを教えてください

5歳の時に、通っていた幼稚園で書道教室があり、そこで書道を始めたことがきっかけです。祖父の弟にあたる方が、家のすぐ近くで書道教室を開いていたため、小学校に上がる頃には、姉と一緒にそちらに通うようになりました。大学進学を機に上京したことで、それまで通っていた書道教室に通うことができなくなり、しばらく書道から離れていた時期があります。

その後、社会人になってから、知人から、もったいないから、もう一度書道をやってみたらと声をかけていただく機会がありました。そこで、もう一度やってみようかなと思い、再び書道を始めたのが、今から8年ほど前になります。

「音 ― Rhapsody of Ink」 作:Ryo
アーティストとして意識していることを教えてください

自分にしかできない表現を通して、誰かの心を動かせる作品を作ることを大切にしています。幼い頃、自分が書いたものを見た方から、感動した、心を動かされたと言っていただいた経験があります。その経験が、自分の中ですごく大きな意味を持っていると感じています。自分自身が取り組んだことで、自分らしさやユニークさを評価してもらえた瞬間でした。その時に、自分が生きている意味のようなものを感じ取ったのかもしれません。

それ以来、自分にしかできないことや、自己表現を通して誰かの感情を動かせることに、大きな喜びを感じるようになりました。その経験は、今でも自分の制作における軸になっていると思います。何かを作る時には、綺麗だな、すごいなと思ってもらえることももちろんですが、最終的には、少しでも誰かの心を動かすことができる作品を作れたらいいなと意識しています。

アイデアはどのように生まれますか?

美術館に足を運んだり、テレビなどでさまざまな作品を見たりする中で、これいいなと感じたものが、アイデアのきっかけになることが多いです。そこから、これを自分の作品にするなら、どのような表現ができるだろうと考えていきます。アイデアの種自体は、日常のさまざまな場所から拾えるのではないかと思っています。
ただ、思いついたものをそのまま作品にできるわけではなく、何か違うな、しっくりこないと感じることも多く、そこから試行錯誤しながら形にしていきます。

私は、文字を文字以外のもので表現することを意識しており、書道のジャンルでは前衛書に近い作品を発表しています。アイデアの生まれ方には、漢字から入るパターンと、イメージから入るパターンの両方があります。
例えば、ある漢字を見て、この漢字をどう表現したら面白いだろうと考えることもあれば、先に浮かんだイメージに対して、これを表す漢字は何だろうと考えることもあります。

これまで制作したものは、心象風景や景色、人物などを直接題材にするよりも、既存の絵画や彫刻、音楽を書道と組み合わせたものが多く、作品から次の作品を生み出すというのが、自分の制作においては一つの特徴かもしれません。

「羽 — Wings of Victory」 作:Ryo
尊敬するアーティストと、そのアーティストに惹かれたポイントを教えてください

ジャンルは全く異なりますが、レオナルド・ダ・ヴィンチと、印象派のルノワールが好きです。
ダ・ヴィンチは、絵画作品ももちろん好きなのですが、その考えや芸術感がすごいなと思っています。
単に絵を描くだけではなく、さまざまな分野に関心を持ち、それらを絵画に落とし込んだ時に現れるものが面白いと感じています。非常に緻密に計算されていたり、その背景にある世界観や思考の深さだったり。芸術の興味深さを知るきっかけになったアーティストです。

一方、ルノワールは、実際に作品を見たことがきっかけで好きになりました。学生の頃にパリを旅行した際、オルセー美術館で作品を見て、すごく綺麗で、引き込まれるような感覚がありました。柔らかく暖かみのあるタッチがとても印象的で、こちらは理論どうこうではなく、心が動かされた経験、理由もなく自分のお気に入りという感じです。

制作過程や思考から興味を持ったダ・ヴィンチと、実際の作品を見た時の印象から好きになったルノワール。理由は違いますが、どちらも私自身がアートに興味を持ったきっかけになったアーティストであることには違いありません。

アートに対する考え方は、年齢や経験とともに変化しましたか?

大きく変化したと思います。長く書道を続けてきましたが、高校生くらいまでの間は、作品を提出する先やゴールが決まっていたように感じます。コンクールや、月刊で開催される書道協会の賞など、掲載されるか、入賞するかといった評価軸を目的に、書道をしていたような気がします。とにかく先生に直していただいた通りに、綺麗に書くという思いが強かったです。

その後、社会人になり、自分で作品を発表するようになってからは、作品を直してくれる人がいなくなったので、自分自身で研究するようになりました。展覧会に足を運んだり、Instagramなどで他の方の作品を見たりしながら、どうしたらこういう表現になるんだろうと考え、筆の運び方、持ち方、墨の濃淡を試行錯誤しています。
また、書道だけではなく、他のアートからインスピレーションを得て、自分の表現に取り入れることについても考えるようになりました。

以前は、綺麗に書くことが一つのゴールでしたが、今は自分だったらどう表現するかを考えることが制作の中心になっています。そういう意味では、誰かに評価してもらうための書道から、自分自身で表現を探していくアートへと、考え方が変化したのだと思います。

「ダンス — Rhythm of Form」 作:Ryo
今後の展望・目標を教えてください

一つ目は、これからも人の心を動かすことができるような作品を作り続けていくことです。そしてもう一つは、書道と他の芸術との接点を作っていくことです

これまで書道を軸に作品を制作してきましたが、他のジャンルのアートと組み合わせることで、まだ自分でも見たことのない表現が生まれるのではないかと思っています。
日本だけではなく、海外の方にも自分の作品を発信していきたいと考えているので、将来的には、国やジャンルを越えて、自分の作品を見てもらえるような活動にも取り組んでいきたいです。

幼少期の褒められた、感動してもらえたという純粋な原体験を胸に、人の心を少しでも動かす作品作りを続けるRyo氏。学生時代の正解を求める書道から一歩踏み出し、現在はルノワールやダ・ヴィンチといった絵画からもインスピレーションを受けながら、自分だけの自由な表現を探求している。ゆくゆくは海外への発信も視野に入れる彼の、今後の活動の広がりにますます期待が高まる。

インタビュー: 2026/07/27