Interview作家インタビュー

かな書
美香
かな書を軸に、古典の歌に息づく情景や作者の想いを筆に託して作品を生み出してきた美香。 2023年まで書壇に所属して書の基本を磨き、現在はフリーの書家として公募の展覧会や海外の展覧会に出展を重ねている。 近年はカリグラフィーにも取り組み、東洋と西洋の文字が響き合う新たな表現に挑む。 かなの美しさを絵画のように味わってほしいと語る彼女に、書との歩みと作品への想いを伺った。
「令和時代」作:美香
書家としての歩みをお聞かせください。

かな書を中心に作品制作をしています。

2023年まで書壇に所属し、そこで書の基本を一から学びました。
線の運びや墨の扱い、文字の姿や余白の取り方など、当時身につけたことは今の私の土台になっていると感じます。

現在はどこにも所属せず、個人で公募の展覧会や海外の展覧会に作品を出展しています。

印象に残っている展覧会を教えてください。

初めて海外に出展させていただいた、フランスでの「サロン・ド・アール・ジャポネ」です。

日本の作品を海外の方々に観ていただける嬉しさの一方で、この作品はどのように受け止められるのだろうという緊張もありました。

「禅」作:美香
書家を志したきっかけは何ですか。

子供の頃に書道教室へ通っていた時期もあったのですが、なかなか長続きしませんでした。
しかし、大人になってから、自分を最大限に活かせるものは何だろうと考えていたときに、ふと「書」がおりてきたような感覚があったのです。

不思議なことに、子供の頃には続かなかった書が、大人になって改めて向き合うと、とても魅力的に感じられました。

それから師匠と出会い、書の素晴らしさや価値を少しずつ見出していきました。
字を書くという身近な行為の中に、これほどの美しさや奥深さがあるのかと、学ぶほどに驚かされます。

作品にはどのような想いを込めていますか。

私は古典作品が好きで、なにを制作するか考えるときには、選んだ歌や文章をそのままではなく背景や作者の想いなどを想像しながら書いています。

千年以上も前に詠まれた歌でも、その根底にある喜びや切なさは今を生きる私たちと変わらないと部分もあることに、想いを馳せる時間を大切にしています。

かな書は日本人でもなかなか読めず、海外の方々にとってはなおさらだと思っています。
そのなかでもかなの美しさというものを絵画と同じように受け取っていただければという思いで日々制作に向き合っています。
読めなくても心が動く、そんな一枚になればと願っています。

歌に込められた作者の心に寄り添うことで、文字の形としての美しさ、そしてその奥にある雰囲気、情景、さらには筆者の気持ちまで届けられたらというところを常に心がけています。

「日本の夜空」作:美香
最も自分らしい作品はどれでしょうか。

フランスでの「サロン・ド・アール・ジャポネ」に出展した、「日本の夜空」です。

この作品は万葉集に収録されている、柿本人麻呂の歌を書いています。
夜空の美しさを想像しながら筆を運びました。
深い藍色の紙に金色の線が浮かび、星のまたたきや月の光が感じられるよう、線の強弱や余白の取り方にもこだわりながら、人麻呂が見上げた空を思い浮かべながら書いていると、時代を超えて同じ夜空を眺めているような気持ちになりました。

初めての海外出展という節目の作品でもあり、自分らしく表現できたと感じています。今でも見返すたびに、あのときの気持ちがよみがえってきます。
いまでは作品を前にした方が、どんな感情を抱いてくださるのかを想像するのも楽しみのひとつです。

夜空を見上げた人麻呂の心持ちが、少しでも伝わればと願っています。

今後の展望をお聞かせください。

一昨年頃からカリグラフィーを学んでいます。
東洋と西洋の文字が融合したら面白いのではないかと考えたのが始まりです。

筆で書く文字とペンで書く文字は、道具も線の表情もまったく違いますが、その違いが重なり合うことで、新しい魅力が生まれるのではないかと期待しています。

これからも古典を中心とした書を大切にしながら、東洋と西洋のマリアージュとなる作品を国内外で発信していきたいです。

古典への深い敬意を胸に、かなの美しさを一枚の絵画のように届ける美香の作品は、言葉の壁を越えて見る人の心にそっと寄り添う。

カリグラフィーという新たな扉を開いた彼女の挑戦はまだ始まったばかり。
東洋と西洋の文字が出会う先に、どのような景色が広がるのか。

書を通じて日本の美を伝え続ける彼女の歩みは、これからも多くの人の心を静かに揺らしていくだろう。国内外へと広がっていく今後の創作と活動への期待が高まる。

インタビュー: 2026/09/19