「子どもが遊ぶ場所も、特別ないような田舎で生まれ暮らしていました。昔から絵を描くことがすきで、チラシの裏などを見つけては何かを描いていた子ども時代。画材は普通の鉛筆からのスタートでした。小学校に入学した際、教材のセットに色鉛筆が入っており、次第にそちらを使うようになります。画材屋さんもないような田舎で、インターネットショップも発達していない頃でしたので、身近にあったものから手になじんだのだと思います」
そうしたのどかな出身地で、いまもご活躍されているというOrcaさん。色鉛筆は筆圧の変化が現れてしまったり、芯の減りが早かったりと難しい点が多い。さらに画材としての特性上、光に当たると色彩が弱くなってしまうということに気がつき、現在はアクリル絵の具を使用した作品が多いのだそうだ。
「実家では、2歳離れた弟と過ごしました。子どもの頃にはよく親戚が洋服やお菓子を送ってくれたのですが、その中にVHSが何本か入っていて。自分用かなと思われる”セーラームーン”と弟用かなと思われる”ウルトラマンティガ”を再生してみると、”ウルトラマンティガ”の音楽も映像もかっこいい、新しい世界に強く惹かれました。デザインや容姿も衝撃的で、こんな世界があるんだ!と衝撃を受け、そこから特撮作品を見るのがすきになりました」
「”ウルトラマンティガ”をすきになったことがきっかけで、いまでもいろいろな特撮作品を見ています。自分が制作しているものも、特撮が軸になっていると感じます。映画やアニメの中ではエフェクトがかなりはっきりと入っており、インパクトが強いのが特撮の特徴です。コンマ1秒の世界でタイミングを合わせていく、素晴らしい作品たちのそうした一面に心が震えたため、わたしも制作する作品の中のエフェクト的要素に力を入れています」
特撮の世界とOrcaさんの作品世界観がつながってくるお話では、さまざまな要素が密接に絡まりあっていくOrcaさんならではの哲学を、Orcaさんご自身の言葉で聞かせていただくことができた。ずばり注目されているのは”モチーフの中のエフェクト”なのだそうだ。
「水の中の絵を描くなら、水中に発生している”泡”など、”モチーフの中のエフェクト”に力を入れています。写真が1枚の絵になるような感覚で仕上げているのかもしれません。また絵を飾るときに使う額縁を、私は窓だと考えています。お客さんに窓のなかの作品を覗いていただくのももちろん、”こっちからも見ているよ”という気持ちになりながら制作しています」
「作品の構想となるものが特撮なので、実際の映画やアニメの二次創作にならないように心がけています。そこで”何と融合させるか”というテーマが私にとって重要です。モチーフになることが多いのは、人のほか、動物や都市伝説上の生き物など。人面魚のようなモチーフも面白いですよね。また怪談にも、パワースポットとしても話題に登場するような、神社やお寺へなどもよく頭に浮かびます。 ちょうどいま私が気に入って読んでいる、日本警察の近代史を扱うマンガがあるのですが、この作品を読んでいると多くの人が関わり、たくさんの人が犠牲になったうえで、いまの日本警察の骨格ができているのだなと感じます。 面白いなと思ったのは、こうして努力を積んで、命を張って人を助けている人たちが集まる場にこそ、盛り塩されていたりするという点です。日本警察だけでなく消防・自衛隊の人たちのほか、命を懸けている人たちは盛り塩をしていて神棚を設けていて、1番神様を信じていると思っています」
伝説や恐怖と人の情熱的な一面のつながりについて話を聞かせてもらうことができた。Orcaさんのお話を聞いていると、戦隊ヒーローや日本警察などと勇気に満ち溢れており、人のために行動ができる方たちの物語がおすきなのかなと感じさせる。幼い頃より正義感の持ち主だったのかもしれない。今回のインタビューでは、Orcaさんの眩しい志もたくさん伺うことができた。最後の一言まで聞き逃しならない貴重な時間を、読者に皆さんにも届けられれいれば幸いに思う。
「特撮作品に出会ったことは、作家としても、作品を愛する身としても、自分の芯になっているのかもしれません。しかし原点はあくまで原点です。私も少しずつ光に、その背中に、追いついていきたいと思います」