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Interview: 永都叶千インタビュー

画家・講演家・著者マルチな才能を見せ、
根底にある日本人としての”情緒性”を追究


(写真は太田市に松平元康寄贈時)

簡単に自己紹介をお願い致します。


愛知芸大の日本画科を卒業し、日本画をずっと描いています永都叶千(ながとやすゆき)です。常に「日本画とは?」や「古典性と現代性」の融合を考えて描いています。古典の模写に長く従事しており、平成16年まで名古屋城の本丸御殿の模写の仕事に従事していました。大学出たては白鳳時代の法隆寺壁画模写に従事。プライベートで江戸時代くらいまでの絵画の模写をよく行っておりました。 

比較的現代に近い「戦後の日本画」ではなく、もっともっと前の「日本画のルーツ」のようなところから勉強してきました。今生活する中でその古典性と現代性を融合させることなどを常に意識しています。例えば、私が非常に影響を受けたのは、横山大観先生です。大観先生が明治時代に日本画の改革をすることができたのはその時代だけではなく、その前の時代の江戸絵画のことをよく知っていたからこそ「改革」ができたのだと思っております。

私は戦後の洋風文化に育ちながら、日本の文化に憧れてきました。絵画の内容は「自分たちの中に眠っているDNAレベルでの昔からの日本的情緒のようなものを探りたい。」絵の具は「昔からの因襲的な使用でなく革新的なものを追求していきたい。」ということを考えております。
清らかな太古の情緒や、江戸の平和な時代に作り出された美術品ような、「おおらかで伸びやかな世界」を描きたいなと思っています。


絵を描き始めたきっかけを教えてください。


幼稚園の時だと思いますが、父に連れられ行った展覧会で、横山大観先生の絵巻「生々流転」に出会い不思議な感覚を体験したのがきっかけです。水辺の描写でしたがそれを見た瞬間にまるでその場にいるかのように湿った空気が入ってきたのを感じたのです。

その瞬間幼いながらも興奮しちゃいまして、絵画の専門家につかないで(元々書道もやっていたので)墨と水彩画など中学くらいまで遊びで描いていたのが始まりです。

こどもの時は割とおとなしかったですか?


いや、結構活発でしたね。当時から侍文化が好きで剣道もやっていました。
今の武将のシリーズなんかもそれが元になっているように思われます。


今教室もやっていらっしゃいますよね?


一時かなり増やしてしまったのですが、制作との両立を考え今は名古屋で「相互に勉強をしていきましょう、研究していきましょう」という趣旨の絵画研究会という会と四日市の白揚というカルチャーセンターで日本画とデッサンの教室を受け持っています。

他は自宅で個人レッスンを少しやっています。


ご多忙な中かと思いますが、年間何枚ほど制作されますか?


年間で50枚ほどです。理想としても、今後そのくらいのペースで描き続けたいなと思っております。ただ一作ずつではなく、多くの作品を同時進行で気が乗った順に制作しているので、コンスタントに完成ペースというのでなく、フィニッシュが何点か重なる時もあります。


絵を描くためにに心がけていることなどはありますか?


スケッチと取材です。
大きい旅行は最近行くことが少なくなりましたが、日々の生活でも何か感じたらすぐにその場で描くようにしています。

写真で描いたりなどはされますか?


参考までに写真もとります。
ただ、もしかしたら古い教育なのかもしれないですが、手が先に動いちゃうんですよ。今の方は映像でしっかり撮ったりする方もいるかと思うのですが、私は落書きでも良いから自分の中で感じたところ線の一本、ラフスケッチでも良いから描くようにしています。

自分の中でもっとも大事なのは感動だと思うので、まずラフスケッチする時構図と配置を意識して、そして何よりその時の対象物を目の前に描きたいと思った感動を少しでも描きとめたいと、、、参考に撮った写真も色彩が撮った時とズレが出てくるので、現地で描いてきたスケッチを参考に自分の意識の中に確認して本制作しています。


作品を描いていない時は何をしていることが多いですか?



いや、もう絵を描いていない時は絵を教えているくらいですね。だから絵漬けです(笑)

手を動かしていないとしたら、常に美術に関わるありとあらゆる本を読んでいます。本の中にはまだまだ自分の知らない世界が広がりワクワクし、読んだ事を家族にうんちくたれてます(笑)


確か絵画とは直接関連しなかったと思いますが、歴史関係の書籍も出していましたよね?


本は「日本甲冑図鑑」を出しています。これは甲冑研究家と共著で甲冑の成り立ちを500図以上のイラストで説明している本です。甲冑は歴史的成り立ちの考証や時代的変遷の決まりごとが多くイラストを描いていくにも甲冑研究家とのディスカッションで自分の方にも知識が必要な事が多くあり勉強しながら描いていく作業で大変でした。

他に書店書籍とは関連しないですが、今年の1月に健康関係の挿絵も頼まれ描いています。

あとは歴史関連として、いろんな寄贈作品をしています。後世までその志しや生きざまを伝えたいと、松浦武四郎という北海道の開拓に尽力した方の作品を松浦武四郎記念館に寄贈しました。また、桑名の村正工房あとがあってそこでイベントがあり、村正が刀剣を作っているところを作品にしました。それはそのイベントを開催した企業様が所有しています。

また津の市役所に「甦る津城」という、在りし日の津城を復元した姿の作品を寄贈しました。
「音を描く」
片岡球子先生から受け継いだ、
作品追求のDNA



作家人生でもっとも嬉しかったことは何ですか?


気が乗って描いた絵が仕上がった時です。どれがどうとか、誰がどうとかではなく自分の中での追求で、「99%納得できたな」という時の満足がもっとも嬉しいことです。

師匠である片岡球子先生にも「これ一生懸命描いているか?」とよく言わました。自問自答を繰り返すわけです。だから誰かがどうこうではなく、自分の作品に対してどれだけ燃焼できるか?それを過去よりももっと、現在より次、さらに次という風に追求していくわけです。

師匠も大観先生に色々言われていたようで、先生が受賞した時に大観先生からお酒をすすめられた折り、大観先生がおちょこを指で「ぴーん」と弾いて、「この音を描けるか?」と言われたそうです。ようは「音を描けるか?」ということで、それをずっと先生は気にされていました。だから師匠はずっと自分の絵を追求してきたわけです。

私も師匠に色々な絵を見ていただいた時に言われた言葉で「君、これ本当に本当に、真剣に描いているのか?」と言われると確かに、「ここらへんまでやりました」と堂々としていてもやはり自問自答するわけです。それがずっと続いてます。

師匠が亡くなって11年くらい経ち、今は公募展を少し休憩してもっと自分を追求したいという考えがあるから、それの延長戦に今がある感じですね。なので、作画の時は何を描きたいのか?何を言いたいのか?を自問自答しています。

では一番辛かったのはどんな時ですか?


家族に迷惑かけていることですかね。
それと絵画の師匠片岡球子先生と模写の師匠田中穣先生と大好きだった作曲家の武満徹の死です。


ご家族が大変だろうというのは?


私が美術だけにのめり込んでいますからね、諸々、生きていく上での諸々。それを家族が支えてくれるという構図なので。

ただ、今危惧していることは、私の息子(永都卓)も含めて、今の美術界は色々な人がいて、変則的な中で若者がすごくやりにくそうにしているのがなんというか、、、
これからの世代が花開いていくことを祈るばかりです。  


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美術史を知る事が作家活動の助けになる


これまでの作品の中で最も自分表現できたと思う作品はありますか?


う~ん、、、それぞれの作品はそれぞれその時点での答えです。 

1年前の答えと、直近の答えや感じ方、言いたい事は変わってくるので各作品に対してどうではなく、それぞれの時点でのベストだと思っています。
あえて挙げるならヨーロッパの大聖堂のシリーズ。自分のなかで仕上げるときの陶酔した満足感がありました。

今後の活動予定を教えてください。



6月には銀座並木通りの創英ギャラリーさん、9月は親子展を四日市の近鉄で、12月には近鉄と名古屋の画廊若林にて個展を開催します。まだ発表できる状態ではない、開催見込みの展覧会も年内にあります。

今後どのようなことに挑戦していきたいですか?



一つは自分の絵画の追求ですね。展覧会があってもなくてもここは変わりません。

あとは啓蒙活動です。

公の学校の先生はやっていませんが、美術教育です。少しでも次の世代や今の世代でも、美術が一生の生きがいになっていただくような、楽しめて盛り上げていけるようなことをやっていきたいです。時間は無限にありませんので、制作できる時間も限られある程度絞る必要はでてきますけれども、、

あとは今、四日市の中日文化センターというところで月1回ずつの美術史講演会もあります。4月28日、5月26日、6月23日で行います。

啓蒙活動の中で絵画をより楽しんでいただくためには、描いているだけではダメなんですね。公募展や、ギャラリーを借りて描いている人なんかでも「思うように行かない、思うように発表できない。」など結構悩んでいる方がいるんですけども、歴史はこう流れているとか色々知っていくと急に気が楽になるんですよ。

私は古典の勉強をしているため色々な美術史を知るのですが、例えばいま熱狂の若冲ブームですが当時のリアルタイムでいうと画壇主流狩野派の圧倒的人数の中でのわずかな画人の一人ですからね。だから現時点で生きている人の中でも、「あ、こういう中に私はいるんんだ!」ということがわかるわけです。特に今日本は人口が減少して美術の買い手が少なくなってきていたりする状況で、美術史を知ることで自分の発表や描くことがすごく楽になる。

だから美術史の専門家ではないですが、勉強してわかったことをみなさんにお伝えしてみんなで考えていこうという啓蒙活動をしていきたいです。

《 美術史は、過去と現在そして我々の未来地図です 》

テクニックを伝達するだけではなく、そういったことも伝えていきたいです。 

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作品名:桃山櫻
制作年:2014年
ジャンル:日本画
サイズ:P 8号
価格:400,000円


【紹介ページはこちら】



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作品名:松間旭日図
制作年:2017年
ジャンル:日本画
サイズ: 8変
価格 400,000円


【紹介ページはこちら】



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作品名:天龍降臨図
制作年:2017年
ジャンル:日本画
サイズ:6変
価格:330,000円


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作品名:青不二
ジャンル:日本画
サイズ:300×363mm
価格:150,000円


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