Interview注目の作家

デジタルアート
coyonac
東京都出身のcoyonac氏は、個性と遊び心あふれるスタイルで感情の赴くままに作品を描く画家。2022年から国内外の展示に参加し、数々の受賞歴を重ねながら活動の幅を広げている。デザイン学校での学びを経て、独自の表現スタイルを確立した彼女は、現在、絵本作家を目指しながら人生観や死生観を「隠し味」として込めた作品制作に取り組んでいる。初のWEB個展での挑戦や、恩師との出会いなど、創作を続ける原動力となった体験とともに、coyonac氏の作品世界に込められた想いを紐解いていく。
簡単に自己紹介をお願いいたします。

出身は東京都です。作品コンセプトはcreativeをこよなく愛し、武骨な個性とfunkyなノリで、心の赴くままに描くスタイルです。
自由きままな遊びゴコロ・イタズラゴコロは欠かせません。まめつぶサイズのLucky&Happyをふわっとまき散らし、小さな元気をそっと届けられたらと、制作に励んでおります。
活動は2022年から国内外の展示に参加する機会が増えました。これまでに「百花繚乱芸術最高金賞(春夏秋冬部門)」「MIX ART FES 芸術大賞」「第2回 ART博 in パリ 日本藝術名誉大賞」などを受賞いたしました。また、フランスのアート誌「Republique des Arts」にも取り上げていただきました。今後もゆっくりマイペースながら、神出鬼没に活動していく予定です。

経歴としては、あまたの社会経験、幾多の挫折を味わった末、2019年にデザイン業界に就職・転職するための学校。へ入学しました。グラフィックデザイン、Web、映像、イラスト、デッサン、ブランディング、プロモーションなど幅広く学び、時には難し過ぎる授業について行けず、泣きながらも、創作意欲ひとつでなんとか乗り切りました。貪欲な姿勢に、「もう教えることがなくて困る」と、恩師より冗談交じりの一言を頂いたことも心に残っています。
現在は絵と向き合いながら、絵本作家を目指して修行中です。

 

「OH MY MORY 御守り」 作:coyonac
印象に残っている展覧会や出来事はありますか?

初めてのWEB個展「Gloovin’ Rainbow」は、特に印象に残っています。お話を頂いたときは、自分の作品だけで構成することへの不安や緊張で押しつぶされそうでした。他の展示準備とも重なり混乱する中、それでも逃げずに向き合い続けたことで、新しい表現への挑戦や溢れる想いにつながりました。
制作途中や個展をご覧くださった方々からのエールには、涙が出るほど励まされ、本当に嬉しかったです。また、日本橋Art.jp様には、私の個性的な作風を寛大に受け止めていただき、のびのびと挑戦できたことに心より感謝しています。
ちなみに開催直前、自分のスペルミスに気づくというハプニングもありました。「Gloovin’」というタイトルは、「groove」と「glow」を組み合わせた造語です。急遽の苦肉の策でしたが、かえって忘れられない思い出となりました(笑)

画家活動を始めたきっかけは何ですか?

デザイン学校で学ぶ中で、素材をゼロから創りたいという思いが強くなり同校のイラストコースを受講したことがきっかけです。その道一筋、イラストレーターとしてご活躍の経験豊富な師匠は、私の武骨なタッチから表現の方向性を見いだしてくださいました。「逆にうまくならないでほしい。絵本に合いそうだから描いてみたら?」と思いがけず背中を押してくださり、絵本の世界へ足を踏み入れるきっかけをいただきました。プロとしての貴重な経験談も時折うかがい、大変勉強になりました。
また、卓越した美的センスで、まさに“匠”と呼ぶにふさわしいグラフィックデザイナーである恩師からは、創作の本質をあらゆる視点から実践的に教わりました。脳がフリーズしがちな私に、的確でわかりやすく、時に根気強く指導してくださいました。「楽しんで創る」ことの大切さを教わったことが、遊びゴコロを忘れぬ原点となりました。
こうした一流の先生方からの学びが、今の私の表現につながっていると強く感じています。振り返れば、トンチンカンな私を、よくここまで面倒を見てくださったと、ひたすら感謝の気持ちでいっぱいです。
並行して、絵本制作や表現の模索を続けていたところ、日本橋Art.jpさんからお声がけいただき、現在の活動につながる流れとなりました。

「すっ極楽になーれ♪」 作:coyonac
作品にはどのような想いを込めていますか?(制作のコンセプトなど)

私の作品には、人生観や死生観、その時々に感じることを“隠し味”のようにスパイスとして込めています。「作風が哲学的」と言われることもありますが、哲学を学んだことはなく、自分の知見や経験に基づく想いを描いているにすぎません。届かぬ想いに耳を傾け、癒えぬ傷を慮る、そんな作品を目指しています。
例えば「すっ極楽になーれ♪」は、初めて死生観に触れた作品です。温泉ではぁ〜極楽、極楽と一息つくゆるさを届けたいと思い描きました。
ハムレットのオフィーリアにインスパイアされて描いたリスッコは、ただプカプカ浮かび、歌っているうちに天国へと流れ着く。生と死をひとつの延長線上として捉え、宇宙も何もない静かなゼロポイント視点を軸に表現しています。平たく言うと、ピンピンコロリ、ピンコロリが描きたかったのです。
本家オフィーリアは悲劇的な存在ですが、リスッコオフィーリアは、あくまで喜劇的な終焉の始まりのようなイメージで捉えていただけたら嬉しいです。

「funky √55 粋ザマ chaos」 作:coyonac
今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。また、そう思う理由 なども教えてください。

私にとって最も自分らしいと思える作品は「funky √55 粋ザマ chaos」です。自分なりの気概を込めた、今一番のお気に入りの作品です。人生の荒波に、無理だとわかっていても気持ちひとつで突き進む姿を描いており、その混沌さに自分でも思わず笑ってしまうほどです。
元気で滑稽、何がどうなっているのかわからないけれど、とにかく楽しい。気分が上がればなんとか乗り切れる、そんな感覚を表現しました。人生のハンドルがすでに外れているような状況も、自分らしいと思います。大丈夫、キモチで行けるんで!というライトな勢いで、未来はわからないけれどアドリブで生き抜こうとする想いを込めています。

今後の作品制作に向けての想いをお聞かせいただけますか?

私は、個性が強すぎるせいか、社会になかなか馴染みづらく、ちっぽけな存在だと感じることもあります。何を試そうがうまくいかない中、たどり着いた安心の場で、ようやく心から愛するものに出会えました。絵を描くことも、はたから見ればちっぽけなことかもしれません。それでも想いを描くために生まれたのだと、信じてみようと思っています。絵を見てくださった方が、ほんのひとときでもクスッと微笑み、心の中にそっと虹をかけることが出来たなら、私にとってこの上ないほど誉れです。
そんな想いを胸に、これからも自由な気持ちで描き続けていけたらと願っています。

coyonac氏の独創的な表現とユーモアあふれる世界観で、見る人に小さな幸せや驚きを届ける。自由な発想を大切にしながら、今後も新しい表現に挑み続ける姿にさらなる活躍が期待される。

インタビュー: 2025/10/24