佐野馨
Kaoru Sano
佐野馨
Kaoru Sano
東京・日本橋の路地裏に、夜だけひっそりと明かりを灯す不思議なバーがある。その名は「GATAGATO」。 店のカウンターに立ち人々を迎えるのは、画家としてのもう一つの顔を持つ異色の経営者、佐野馨(さの かおる)だ。 彼女はキャンバスの上に幻想的な物語を描き出すと同時に、バーという空間そのものを一つの作品として育て続けている ─── 1975年に山梨県で生を受けた佐野氏は、多摩美術大学大学院で油画を専攻し画家としての道を歩み始めた。画家として着実にキャリアを積むと同時に、2010年には自身が経営するバー「GATAGATO」を東京・日本橋にオープン。店内には佐野氏自身が描いた絵画が飾られており、酒を片手に彼女が創造した世界に浸ることができる唯一無二の空間となっている。画家と鑑賞者が直接出会い、語り合うことができる。そんな ”生きたギャラリー” こそが、GATAGOTOなのだ。 佐野氏の代表的な作品は、2匹の黒猫「GATA」と「GATO」が登場する「GATAGATO」シリーズ。このシリーズでは、バー「GATAGATO」そのものが意志を持ったかのように、深海から宇宙まで時空を超えて旅をする。物語性豊かなこの作風は、観る者をノスタルジックでどこか切ない空想の世界へと誘い、まるで一枚一枚の絵画が”旅の記憶を切り取った絵葉書”であるかのようにも思わせる。 画家としてアトリエでキャンバスに向かう孤独な時間と、バーの経営者としてカウンターに立ち、人々と賑やかに交わる時間。この両極を往来することが、佐野氏の創作の源泉となっていると言う。バーでの出会いや会話が新たなインスピレーションとなり、それがまたキャンバスの上の物語を豊かにする。「GATAGATO」という空間は、彼女にとって作品を発表する場であると同時に、次なる作品を生み出すための土壌でもある。画家が営む ”旅するバー” の物語。日本橋の路地裏に灯るその小さな光は、これからも訪れる人々の心に、温かな物語を届け続けることだろう。 ▼展覧会予定 2025.12.13(土)~21(日) 月曜~金曜:15:00open / 18:00以降は通常のBar営業のため1,000円のチャージが発生 土日:11:00~19:00(Bar営業なし。入場無料) 会場:GATA GATO(ガタガト) 住所:東京都中央区日本橋堀留町1-2-9 ※新作展示の他、ポスター、ポストカード、カレンダーの販売、仙台のパン屋「まいにちのパン日々」のシュトーレン販売もあり。