野崎ふみこ
“線から点へ、46年の表現哲学が辿り着いた新境地“
東京生まれの野崎ふみこは東京都出身。1977年、22歳の時に「週刊少女コミック増刊号」に掲載された『フリータイム30日間』で鮮烈デビューを飾り、以来46年間にわたり漫画界の第一線で活動してきた。
専門分野:アクリル画
少女漫画から食の温もりへ ─
作風の深化と転換
デビュー当初、野崎は人間の心の機微を描くことに定評があった。『オリーブと3人ポパイ』『神さまの贈りもの』などの代表作では、日常の中に潜む人生の機微を繊細なタッチで描いてきた。特筆すべきは、彼女の作品テーマが徐々に「食」へと移行していった点である。
この転換の頂点が2018年、『たまこ定食 注文のいらないお店』で「料理レシピ本大賞 in Japan 2018」料理部門・コミック賞を受賞したことだ。この作品は、毎日の夕飯に悩む主婦たちの心に深く寄り添い、食の大切さと家族の温もりを描いた感動作として高く評価された。
これまでに彼女が発表した作品数は261にものぼる。『ホスピめし みんなのごはん』では病院食を通して命の大切さを、『天国堂喫茶店 アラウンド・ヘヴン』では喫茶店を舞台に人生模様を、『心のイタリアごはん』では食を通した心の交流を描く。これらは単なる料理漫画ではなく、「食を通して人がつながり、心が癒される」という彼女の信念が込められている。
“ドットアーティスト”としての
新たな旅路
2021年、65歳を迎えた野崎は驚きの転身を遂げる。それが、“ドットアーティスト”としての再出発であった。「漫画家として長年、人間の心、行動、喜怒哀楽、空、景色、物語、時間を描いてきました。五年前にドットアートという表現と出会い、一つの点に物語や時間、想いが全て表現出来ることに衝撃を受け、魅せられ、それ以後、ドットに夢中になっています」と本人が語るように、この転向は単なる表現手法の変化ではなく、彼女の人生観・芸術観の深化を示すものだった。現在は「江里碧乃(えり あおの)」という別名義でドットアーティストとしても活動し、年2回の個展を東京・京都・大阪で開催している。
さらに、野崎の活動は国内に留まらない。表参道や京都での個展をはじめ、パリの公募展で審査員特別賞を受賞するなど、活動は国内外へと広がっている。漫画家として培ってきた物語を紡ぐ力を背景に、彼女はドットアートという新たな表現領域で独特の可能性を追求し続けているのだ。
69歳にしてなお
進化し続ける表現者
現在、野崎は静かな住宅街のカフェでドットアート講座を開催している。「宇宙を描いたような美しい作品を作り上げることができる」と謳うその教室では、専用のペンやキャンバスを使って無心に点を打つ豊かな時間を提供している。1つ1つの点が集まって曼荼羅のような美しい作品になるそのプロセスは、まさに人生の縮図でもある。
2026年2月現在、69歳となった野崎ふみこだが、その創作意欲は衰えることを知らない。2024年3月には東京・恵比寿で開催された展覧会で、漫画家としての45年間とドットアーティストとしての新たな挑戦を同時に披露。80年代から90年代にかけて表紙を担当していた占い雑誌『My Birthday』のイラストがアパレル商品化されるなど、新たな展開も始まっている。
2026年2月現在、69歳となった野崎だが、その創作意欲は衰えることを知らない。2025年12月には東京・銀座で個展を開催。漫画家としての46年間とドットアーティストとしての新たな挑戦を同時に披露。
80年代から90年代にかけて表紙を担当していた占い雑誌『My Birthday』のイラストは2026年7月~9月弥生美術館で展示されることが決まっている。
「線の人」から「点の人」へ。野崎ふみこのキャリアは、日本のマンガ文化の発展と共に歩んできたといえるだろう。そして今、彼女は新たな表現領域で「人生100年時代」の新しい熟年像を提示し続けている。野崎ふみこは、年齢にとらわれず新しいことに挑戦し続けるその姿勢こそが、最大の魅力なのである。




