●Inside mindとは●
shimshiroが日々の暮らしの中でふと感じた「ポジティブな感情」「ネガティブな感情」を黄色と紫色、そして丸・三角・四角などの図形で表現したアート作品。
▲アーティストになった理由▲
「あなたが何を考えているのかわからない」
「あなたがどう思っているのかわからない」
「その笑顔の下には何を隠しているの?」
とよく言われるため、自分の心の中の状態を文字ではないもので表現したかったから。
Artist shimshiro shimshiro
WORKS 作品
INTERVIEWインタビュー
shimshiro
簡単に自己紹介をお願いいたします。
私は1995年に長崎で生まれました。幼い頃から、感情の起伏は確かにあるのですが、それを言葉にして他者と共有することがどうしても得意ではありませんでした。心の中では色々な思いが渦巻いているのに、それをうまく言語化できない。そんなもどかしさをずっと抱えていたように思います。その感覚は大人になっても消えることはなく、むしろ年齢を重ねるごとに強くなっていきました。
そうした中で生まれたのが、制作シリーズInside mindです。このシリーズは、言葉にならない曖昧な内側の感情を、いったん世界の外側へ取り出すための手段として生まれました。Inside mindでは、日々の暮らしの中でふと湧き上がってくるポジティブな感情とネガティブな感情を、黄色と紫色という強いコントラストを持つ色、そして丸・三角・四角というシンプルな図形で表現しています。色と形だけで構成されているため、一見するととてもシンプルに見えるかもしれません。けれども、その奥には私自身の心の揺らぎや、日常のささやかな感情の動きがそのまま封じ込められています。
作家としての活動歴自体はまだ長くはありませんが、オンラインを中心に作品を発表しながら、アートを通じたコミュニケーションの可能性を少しずつ実感してきました。私にとって創作とは、自己紹介であり、自己対話であり、そして誰かと静かにつながるための大切な行為でもあります。これからも、自分の内側にある感情を形にしながら、見てくださる方々と何かを共有できたら嬉しいです。
印象に残っている出来事はありますか?
一番強く心に残っているのは、自分の作品が初めて売れたときのことです。自分の感情を形にした小さな作品が、誰かの生活空間に迎え入れられたということが、信じられないほど嬉しく、今でも鮮明に覚えています。
それまで作品は、あくまで自分の内側にある感情を外に出すための手段でした。けれども、その作品を欲しいと言ってくださる方が現れたことで、自分の感情の一部が別の誰かの生活空間へと移動し、そこに居場所を持つという事実に、驚きと同時に深い安堵を感じました。
この作品が好きだとか飾りたいと思ってもらえることは、創作を続けていく上でこれほど大きな力になるものなのかと、その時初めて実感しました。自分一人で制作していると、どうしても孤独な作業になりがちですが、誰かに届いた瞬間、作品が新しい意味を持ち始めるように感じられました。
この経験は、私の表現が自分だけのものではなく、誰かの感情に寄り添ったり、共鳴したりする可能性もあるのだということを教えてくれた、非常に大きな出来事です。それ以降、制作に対する向き合い方も少しずつ変化していったように思います。
「腰痛」
作:shimshiro
画家活動を始めたきっかけは何ですか?
昔から何を考えているかわからないと言われることが多く、それが私にとって長年のコンプレックスでした。感情がないわけでは決してないのです。ただ、それを言葉にうまく乗せることができないだけで、内側にはいつもいろいろな声が渦巻いている感覚がありました。嬉しさや悲しさ、もやもやした気持ちや、名前のつけられない感情。それらが確かに存在しているのに、外に出せないもどかしさを感じ続けていました。
むしろ、言葉で説明しようとすればするほど、本当の気持ちから遠ざかってしまったり、表面だけの意味に削ぎ落とされてしまったりして、本当の自分を取りこぼしてしまう感覚がありました。言葉は便利である反面、どこか不自由でもあると感じていたのです。
そんな中、ある日ふと言葉ではない表現を探すようになり、試行錯誤しながら自然と辿り着いたのがアートでした。絵なら、言葉のように正解も誤解も存在しません。見る人それぞれが自由に受け取ることができますし、私自身も無理に感情を整えたり、綺麗にまとめたりする必要もなく、そのままの感情を置いておけるという自由さがありました。その感覚が、自分にとって唯一しっくりくる表現方法だったのかもしれません。
作品を描くとき、私は説明をしているのではなく、痕跡を残している感覚に近いです。その日感じた気持ちの温度や、心の揺れ動きをそのまま色と形に変えて、画面に留めておく。それが私にとっての制作であり、自分自身と向き合う大切な時間になっています。
作品にはどのような想いを込めていますか?
私の作品は、鑑賞者の方に特定の意味や解釈を求めるものではありません。これはこういう気持ちですと明確に提示することを、どこか避けている部分があります。こう読み取ってほしいという押しつけもなく、ただ、こんな気持ちを抱えている人なんだと軽く触れてもらえるだけで十分だと思っています。感情というのは、誰のものも本当に複雑で、形を持たず、定義することも難しいものです。だからこそ、私の作品では感情そのものを説明ではなく雰囲気として伝えたいという意図があります。
黄色と紫色、図形の重なり方、余白の広さなど、それらすべてが、そのときの私の心の音や温度を表しています。ある日は図形が画面いっぱいに広がり、ある日は小さく縮こまっている。それは私の気持ちがそうだったからであり、その揺れ動きをそのまま画面に定着させています。
鑑賞してくださる方が、私の感情のどこかに少し触れたり、何か反射的な気づきを得たりしてくれたら、それで十分です。ただ心というものがここにあったと気づいてもらえれば、それは作品にとって何より豊かな対話だと思っています。
今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。
「Inside mind-53-『カラオケ』」は、自分という人間の本質をもっともよく表している作品だと感じています。
私はひとりカラオケにたまに行くのですが、カラオケという場所は私にとって非常に特別な空間です。楽しい、落ち着く、解放される。その一方で、不安や孤独といった感情も同時に押し寄せてきて、自分でもうまくコントロールできない感情の波が生まれます。ポジティブな気持ちとネガティブな気持ちが入り混じり、それが複雑に絡み合いながら渦巻いている感覚です。
その、ごちゃごちゃだけど嫌ではない感じをそのまま絵に落とし込んだのがこの作品でした。気分が大きく揺れ動く瞬間も、静かに沈んでいく瞬間も、全部が自分の一部であることを認められた気がしました。
良い感情だけが自分ではなく、複雑で矛盾した感情すべてが自分を形作っているのだと、制作を通して実感することができたのです。思考や感情が流れるように変化していく、その独特のテンポや揺らぎを作品として形にできたことで、ああ、これが私のInside mindなのだと強く感じられた一枚です。
作:shimshiro
今後の作品制作に向けての想いをお聞かせいただけますか?
現在は制作を一時お休みしていますが、表現したいことがなくなったわけでは決してありません。むしろ少し距離を置いたことで、以前よりも自分の内側の動きに敏感になれたような気がしています。制作から離れている時間も、実は自分と向き合う大切な時間だったのだと、今になって感じています。
2026年には、心のペースに合わせて制作活動を再開したいと思っています。焦らず、無理に形にしようとするのではなく、日々の生活の中で生まれた感情の粒をひとつひとつ丁寧に拾い上げて、またInside mindというフィルターを通して表現していきたいです。離れていた分、新しい視点や深さが必ず作品に反映されると感じています。これまでの作品よりももっと自由で、もっと自分らしい表現を追求できるのではないかと、とても楽しみにしています。休んでいた期間に積み重なった想いや気づきが、きっと次の作品たちに静かに息づいてくれるはずです。これからも自分のペースを大切にしながら、創作と向き合い続けていきたいと思っています。
「新しい年」
作:shimshiro
長崎出身のアーティスト・shimshiroは、言葉にできない内面の感情を、色と図形で可視化する制作シリーズ「Inside mind」を展開している。黄色と紫色という対照的な色彩で、ポジティブとネガティブの感情を表現し、シンプルな図形の組み合わせによって日常の心の揺らぎを作品に封じ込める。その日の気持ちを作品に込め、見る人の心に寄り添う。彼女の繊細な感情表現が今後より多くの人の心に届いていくことが期待される。