静寂の中に見つけたもの────
最初にその絵を見たとき、何を感じたのか。
正直、すぐには言葉にできなかった。
派手な色彩があるわけじゃない。
強く訴えかけるメッセージがあるわけでもない。
それなのに、足を止めてしまった。
静かだった。
自分の中の何かが
ふいに、鳴ったのかもしれない。
けれど、その静けさの中に、
確かに “何か” が息づいている気がした。
光が滲むような色彩
ふと吹き抜ける風の気配
触れられないのに、そこにある“余白”
視線を向けるたびに、違う表情を見せる作品。
近づけば近づくほど、遠い記憶の扉が、そっと開くような感覚。
強く訴えかける言葉も、そこにはない。
──無音の静けさ
けれど、その奥に 確かに “ゆらぎ” が息づいていた。
目を逸らしても、また見たくなる。
視線を向けるたび、違う音が聴こえる。
描かれた線
塗られた間
削ぎ落とされた空間────
すべてが、それぞれの “響き” を持っている。
現代は、言葉と意味であふれていて、
だからだろうか────。
ふいに、隣で立ち尽くす誰かの背中──
その沈黙が、言葉よりも強く明確な “感受” を伝えてくることがある。
あゝ私たちは今、同じものを
“聴いている” のかもしれない。
ENAMIのアートは、見せるものではなく、
──響かせるもの。
それを見た人の中で、どんな音が鳴るのか。
その余韻こそが、作品の完成なのだと思う。
かたちを持ったものの中に
無音の旋律が宿るとき
────静かな対話が、始まっている。