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Interview: 横山智子

2020年7月の展覧会も含めて、現代作家として私にできることを模索しています

 
 

簡単に自己紹介をお願い致します。

 

 
東京都出身です。絵画を中心に版画やオブジェも制作しています。
「生と死、そして愛」をテーマに、自分の経験したこと、感じたことを作品にしています。モチーフは青い薔薇を描いています。薔薇は固い蕾の時から花盛りを迎え、枯れてもなお微かな香りをたたえ、どの瞬間も美しく存在し続けます。私が描こうとしているのは魂や生命の象徴としての薔薇であるため現実には存在しない青い薔薇を描いています。
ペインティング作品は、キャンバスにアクリル絵の具、色鉛筆、そして薄い和紙を張り込んで透明感のある奥行きを表現しています。技法とコンセプトが合致してオリジナリティーが生まれると考えています。
 
 

印象に残っている展覧会や出来事はありますか?

 

20代の頃ロンドンナショナルギャラリーでレオナルド・ダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」のデッサンを観ました。
「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」は、木炭、黒と白のチョークで描かれたデッサンで、 このデッサンは8枚の紙を糊で貼りあわせた大きな紙に描かれています。本画のための下絵だとも言われていますがこの下絵をもとに描かれたダヴィンチの油絵は今のところ存在していません。私の記憶では当時「岩窟のマリア」の奥に作品保護のため薄暗くされた小部屋があり、そこに「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」が展示されていました。約500年前の紙作品なので、色は変色しているものの、多くの人によって長い間守られてきた(また祈りをささげられてきた)美しさは圧倒的で存在そのものがすでに「絵画」を超えていると感じられ、この世のものとは思えなかったのです。
「この前で今死んでしまったらどんなに幸せだろう」と思いました。あの体験は、今も、私が描くことの「核」となっています。
 

絵を描いていない時間(お休みの日など)は何をしていますか?

 

子供の頃から運動は苦手で、今でも好きなわけではないのですが、たまにランニングをしています。走り始めは、仕事のことや諸々いろいろ考えながら走っているのですが、だんだん体が辛くなってくるとそれどころではなくなり、何も考えられず頭の中が空っぽになります。
作品作りをしていると、本を読んでも映画を観ても、無意識のうちに制作と結びつけてしまいます。頭の中を真っ白にリセットできる運動は、私にとって必要な時間のように感じています。
 

画家として最もうれしかった時、最もつらかった時は?

 

東日本大震災の時に、恐怖から逃れるように一枚のドライポイントの作品を制作しました。その版画は震災が私に描かせた作品と思い、チャリティー版画として自分で販売しようとしたのですが、なかなかうまくいきませんでした。ちょうどその時、小池真理子さんの連載小説の挿絵を描いていたのですが、私の行動に賛同してくださり素晴らしい文章を書いて協力してくださいました。そのおかげもあり予想を超える寄付をする事ができました。それ以来、小池さんとは仕事を超えたおつきあいをさせていただいております。
 

今までの作品で最も「自分らしい!」と思う作品があれば教えてください。また、そう思う理由なども教えてください。

 

自分らしいとはむしろ逆なのですが、下絵や構想通りに絵を描き始め、描きあがったと思うところで違う作品を描き始めるのですが、前に描いた作品もアトリエの見えるところに必ず置いておきます。手を入れなくなって暫くすると、絵の方から絵がなりたがっている姿を私に教えてくれる事があります。その声に耳を傾け、描きすぎているところを消したり潰したり、加筆することもあります。そうしているうちにふと気がつくと、作品が出来上がっていて慌てて筆を置くということもあります。
 

2020年7月には銀座三越での展覧会が控えています。今どのようなお気持ちですか?

 

   過去の個展風景

 
この春、私たちは未だかつてない経験をしました。新しい世界では作品を発表すること自体が大きく変わって来るかもしれません。しかしながら、私に美術が必要なように誰にでも美術が身近にある人生は素晴らしいと信じています。この展覧会も含めて、現代作家として私にできることを模索しています。
 

  横山智子作品展 「七月の輪郭を揺らすとき」  

 
 

 


 

  横山智子  


武蔵野美術大学 油絵学科卒業
パブリックコレクション
神奈川県立近代美術館 / 神奈川

▼個展
2018‐2019年 空の深度 -雪月花(銀座三越/新潟三越/名古屋栄三越/静岡松坂屋)
▼装画
2016年 『律子慕情』 小池真理子/著 (集英社) 
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