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Interview: 横木真理子

心で見た感動を、熱く、厚く…アクリルの輝きで描く



「絵のテーマは、、、花が好きです。花の持つ色のパワーとか、その造形の美しさって凄いなと思うんです。お花屋さんにもよく行くんですよ。自分で選んでアレンジして。でも、それをそのまま模写するのではなく、花を眺めたときの気持ち、そこからインスパイアされたものを描いています。心象ですね。心の目で見たものに仕上げています。
花に始まって、空とか風とか光とか。改めて観察すると感動することが多くて。自然の美しさを自分で解釈して描いているという感じです。」

横木さんの作品は、実在するものを具体的に描く「具象画」ではない。自分でアレンジした花や撮影してきた風景というモデルを、心の目で見て描く「心象画」だ。

たとえば秋が深まっていく季節の印象を描いた作品があれば、ある日の印象深い晴天の空の輝きを表現した作品もある。この作品は海外のコンペティションで芸術功労賞を受賞した。

モデルを見て受けた感動をキャンバスに筆でのせる。心の昂ぶりをそのまま表すように絵の具は厚く盛り上がる。

「アクリル絵の具にメディウム(絵の具のテクスチャーを変化させる添加剤)を混ぜて素材感や立体感を出しています。立体感のあるアーティスティックなものに魅了されるし、それを表現したいという気持ちが凄くあります。」

“ 立体の世界はすごく身近なものだった „

「建築の仕事に関わってきたこともあって、私にとっては立体、3Dの世界というのはすごく身近なものなんですね。絵で立体感を出せたらいいなとすごく感じていて。素材感に拘るのもやっぱり建築をやっていた影響なのかもしれません。」

横木さんは、一級建築士の資格を持つ。学生時代に建築を学び、数年設計の仕事に就いて住宅や店舗の内装を手掛けた。その後、グラフィックデザインや雑誌の編集などいくつかのクリエイティブな業界を経験し、この10年ほどはイベントプランニングの仕事に携わってきた。その仕事が絵画制作にもインスピレーションを与えることもあるという。

「デザインとか文章を書くとかアウトプットする形は違うけれども、組み立て方や考え方のプロセスは、クリエイティブな分野はすべて同じだなって感じているんです。絵も表現を構想するのは同じ思考のプロセスなのだと思います。」


横木さんが絵を描き始めたのはハードな仕事に打ち込み過ぎて体調を崩してしまったのがきっかけだった。退職し、ようやく回復してきたころ、日ごろやりたかったことを一通り全部やってやろうと思った。2021年の夏だった。

「お花を習ったり、ピアノを再開したり。絵は筆で抽象的な表現をしたいな…という気持ちにふと駆られて、イラストと抽象画の講座をオンラインで受けたんです。海外の講座だったのですが、マインドに従って筆を動かせばいいのよ…って感じで自由で楽しいなと。その時間が余りにも心地良く没頭できたので、こつこつ描き始めたという感じです。その後、建築というバックグラウンドがあったからか立体的な表現を出来たらいいなと思って、テクスチャーアートの先生を探して講座を受けました。
海外と日本では描かれるテイストが違うと感じていたので、きっかけとして海外の講座を受けたのは大きかったと思います。」

“ アクリル画とイラストは制作活動の両輪 „

横木さんは、アクリル画だけでなくイラストも描いている。主に女性をモデルに描くお洒落なタッチのドローイングだ。アクリル画を描いたら次はイラスト…といった感じで交互で取り組んでいる。全く違うタイプの作品であることが功を奏しているようだ。

「アクリル画の方は心象画、それに対してイラストは具象画。具体的な人物の姿を描くことに面白みを感じています。こころを揺さぶられるのはアクリル画の方で、思いっきりキャンバスに向かって没頭して描くと言う感じ。イラストはサクサク描いてリフレッシュする感じ。それがいいバランスになっているようです。」

横木さんの作品は彼女のインスタグラム ( @mariko_artist814) に紹介されている。イラストは日常も描かれていてお洒落な日記のような作品も。ウイットに富んでいて楽しい。

「イラストは、ファッション画を描いていきたいと思っています。デティールは省略されるんですけれど、お洒落な感じでさささと描いていけるようになったら心象画とは違う自分の引き出しになるので。またバランスの取り方も難しいなと思ったりするので、ペインティングとは違うドローイングゆえのチャレンジかなと。」

絵を始めて2年半で描いた作品はアクリル画50作品、イラスト50作品くらい。


「納得がいかない作品は処分しちゃいます。今、部屋に飾っているものはどれも愛着があるものばかり。自分の部屋を自分の作品で埋めたいって思いがあるんです(笑)
自分が魂を込めて描いた作品を手放すのは、ちょっと寂しい思いもありますが“もっといい作品を描こう”というモチベーションになりました。」

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