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Interview: 山崎香住

水の上で色を踊らせながら

 
 

“ 自分もこういう絵を描きたいと思ったことで „

 
 
「小さい頃から絵を見たり、描いたりするのが好きでした。小学校の時も賞をいただいたり。ですが高校、大学と絵に集中することはなくて、サラリーマンになっても休みのない会社だったため、絵の教室に通えずにいました。定年後にインターネットで教室を探してたとき、あべとしゆき先生という、水彩画で素晴らしいものを描かれる作家さんの絵を見て、空気感とか透明感にものすごく惹かれて、自分もこういう絵を描きたいなと思うようになりました。それを機に教室に申し込みをしました」
 
絵画教室は人気のため満席で、なんと4ヶ月間待ちの状態だったが、運がよくあべとしゆき先生の教室で習うことができたという。あべとしゆき先生の作品との出会いが画家・山崎さんの原点なのだそうだ。現在は山崎さんが初めてあべとしゆき先生の絵を見た時に感じたのと似たような感想を、鑑賞者にもらうこともあるという。
 
「今は作品をアップしているInstagramがあります。投稿には”空気感や透明感にすごいドキドキした”などのコメントをかなり多くいただけるようになりました。もともと田舎育ちもあって、風景画が自分として違和感なく描けるのかなと感じています。風景画が好きなのは、先生の影響もあるかもしれません。定期的に材料を求めるために旅行して、写真をたくさん撮りに行きますよ。基本は写真通りに描くんですけれど、色味は自分で感じた色を付け足すこともあります」
 
 

 
 

“ 気になる景色を探す旅 „

 
 
「学校で使うような水彩は、後ろの色がなんであれ次の色を上から塗ることができます。緑の上から、より明るい白を入れられるんです。ですが透明水彩は、緑を塗ったらもう白には戻せません。透明というだけあって、下の色が写り込むんですよね。同じ水彩絵の具でもそういう違いがあります。明るい部分を残したいという時は、最後まで塗らずに取っておきますよ。透明水彩の魅力は、透明感と空気感、そして色の混ざり合いの美しさにあるのではないでしょうか。3つの魅力が融合することによって、見る人はあたたかみを感じることができます。そうしたところが透明水彩の魅力だと私は思いますね」
 
自身も透明水彩画に惹かれた経験を持つ山崎さんは現在、透明水彩画の魅力に人々を引き込む立場として活躍している。国内旅行で見つけた素敵な風景を描かれるのがお好きだそうだ。特定のモチーフにこだわらない作品のなかで、光と影をテーマに創作する想いについてを伺った。
 
「透明水彩の特徴に、滲みというものがあります。水の上で色を踊らせるという感覚で、何色かの色を重ねて、その滲み具合をコントロールするんです。それが透明水彩の醍醐味かもしれません。先生にテクニックを一通り習って、自分なりにたくさん数を描いて、やっとだんだんできるようになってきた感じですかね。わたしは”花の絵””人の絵”というふうにモチーフを中心に描くことがあまり得意ではありません。どれかに焦点を当てるのではなく景色の調和を描きたいと思っています。私の作品の重要なポイントは光と影だと思っているので、物や人などのモチーフにこだわらず、作品が持つ臨場感に触れてもらえたら嬉しいです」
 
 

 
 

“ 家族と過ごす時間から生まれた作品とは? „

 
 
「普段はあんまり人を描くことはないんですが、”景色の中の一部としての人物”などは描いていきたいなと思っています。人物が映る数少ない作品のひとつに、うちの孫たちと義理の息子(娘さんの旦那さま)が海で遊んでいるというものがあります。仕事が休みのときに子どもを遊びに連れて行ったようで、後日その時の写真を見せてくれました。砂浜の色と人物の影に物語性があったので、プレゼントしようかなと思って秘密で描き始めたのがこの作品です。今は、娘と孫たちの家に飾ってありますよ。この作品は、全国日曜画家コンクールで銀賞をいただいたんです」
 
和やかな休日を連想させるような1枚は、ご家族との何気ない会話から生まれたという。水辺を美しく透明感あふれるように描くことができる透明水彩の魅力と、ご家族でのあたたかなシーンの魅力を、互いに引き立てあっているかのように筆者は感じた。2024年は80枚ほど作品を描かれたという山崎さん。今の予定は未定だそうだが、作品をアップしているInstagramがとても充実しているので、気になる読者の方はぜひ一度チェックしてみていただきたい。
 
「去年2024年には、初めての個展を開催しました。原画をみたいなどのお声を数々いただいての開催でした。たくさんの方にご来場いただけ、やってよかったなあという思いです。リアルに近いけれど絵ならではの柔らかさやあたたかさ、透明感が伝わる作品を作って行けたらいいなと思っています。これまでもこれからも気の赴くままに、描きたいものを描いていきたいです」
 
 

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