Interview注目の作家

油彩画
山口ミドリ
兄の姿や大友克洋氏、寺田克也氏への憧れから絵に関心を持った山口ミドリ氏。WEBデザインの仕事を15年続けた後、絵を描きたいという気持ちを思い出し、専業画家としてスタート。風景画から始まり、現在は人物画にも挑戦している。画家は頭で考えずに筆で考えろという言葉を胸に、手を動かし続ける山口氏の想いに迫る。
絵を描くようになったきっかけを教えてください。

若い頃から絵を描きたい気持ちはありました。絵に関心を持ったきっかけは、兄がグラフィックデザイナーを目指していたのを見て、かっこいいと思ったのが最初のきっかけです。また、大友克洋さんや寺田克也さんへの憧れもあり、イラストレーターになりたいと思ったことも大きかったです。

ただ、仕事にするのは難しいと感じていたため、WEBデザインの仕事を15年ほど続けていました。ですが、次第に将来への行き詰まりや仕事への情熱の低下を感じるようになり、そこでふと、「絵を描きたい」という若かりし頃の気持ちを思い出しました。

専門的な知識はありませんでしたが、2年ほど絵画教室に通い、その後仕事を辞めて専業の画家としてスタートすることを決意しました。無謀だとは思いましたが、一度きりの人生なので、チャレンジしたいという意志が勝ったのだと思います。

画家としてのスタート当初はどのような状況でしたか?

最初は完全に手探りでした。始めた直後は、仕事を辞めなくてもよかったのではないかという焦りや迷いもありました。ドキドキしながら画廊やギャラリーをまわり、作品を見てもらったり話を聞いてもらったりする機会を少しずつ作っていきました。

何を描けばいいか悩んでいる私に、ひとりの画商さんが風景画を描いてみたらどうかとアドバイスしてくださいました。もともと登山などアウトドアが好きだったので、撮りためていた風景写真や現地でのスケッチをもとに制作を始めました。そうしているうちに初めて作品が販売になり、私の絵に共感してくれる人がいる。続けていけば何とかなるのかもしれない。という希望が湧いてきたことを覚えています。

「わたしの心の中の鳥」 作:山口ミドリ
制作するうえで大切にしていることは何ですか?

絵は描きたいけど、何を描いていいかわからないという、シンプルながらキツイ悩みはつきまといます。ずっとその悩みに苦しんできましたが、最近は何を描こうということはなるべく考えず、キャンバスに向かったらとにかく手を動かすようにしています。不思議なもので、何かを描いていると、小さな思いつきの連続で絵ができてくるのです。
最初描こうと思っていたものとは全く違う作品ができるので、それがまた面白くて。計画通りにいかない、思いつきが転機になるという、絵を描くことは人生と少しリンクしている部分もあるんです。ある本に書いてあった「画家は頭で考えずに筆で考えろ」という言葉、まさにその通りだなとつくづく感じます。

もう一つ、絵が面白いのは競争などがないこと。絵については同じ景色を見ていても、描く人が違えば違うものになりますし、買ってくださる方の好みも十人十色で、見た人の気持ちや印象にゆだねられます。そんな争いがない世界なのも良いところだと思っています。

最近の制作環境や変化について教えてください。

現在は埼玉県狭山に住んでいて、自然や公園が多くあるので、最近までは描画のためにお花を見るなどしていました。ただ、何か自分の道を切り開くヒントが欲しくて昨年の春から秋ごろに、手持ちの油絵の参考書の著書である講師が運営する絵画教室に、片道2時間半かけて通いました。

そこでは多くの生徒さんが人物画や静物画を問わず、自由にのびのびと取り組まれていました。教室にはエネルギーが充満しているようでした。それを見て、絵は綺麗に描いたり、技術を磨くことだけがすべてではないのだと強く感じました。自分が描きたいものを描くことが今の私にとっても良いのではないかと、最近は人物画にも挑戦しています。

「あなたに花束を」 作:山口ミドリ
今後の作品や目標について教えてください。

最近では人物画を描くことが増えてきましたが、風景画をたくさん描いてきたことは、間違いなく作品の背景や世界観を出すことについての勉強になっています。

今後のテーマにはなりますが、自然の美しい色彩と自分のイメージを合わせて、ファンタジックな要素を持った、非現実的な世界のようなものを描き出していきたいと考えています。また、もっと自由に表現の幅を広げてみたい。という気持ちから、今年は公募にもチャレンジしています。7月までに4回出させてもらい、そのうち3回は入選することができました。来年もチャレンジしてみようと考えています。

自分の絵がどんどん変わっていく感覚がありますし、どんどん描いていくことで、まだ明確になっていない私の作風も固めていきたいと思っています。多くの作品を描いてきましたが、自分が100%完璧だと思う作品は未だありません。もちろん、描き上げた時は良いなと思うのですが、今は1か月前に描いたものでも古く感じてしまいます。自分自身がアップデートされているからというのもありますし、『もっと良い作品を描きたい』という強い意志があるからだと思います。内から湧き出てくるイメージを自分自身が見ていきたいです。

そのためにはさらに多くの作品を描いていくことが大事だと考えています。そうやって成長していく、変わっていく私の作品を見ていただいたり、応援していただいたりしたら、これほど嬉しいことはないです。

WEBデザインの仕事を15年続けた後、絵を描きたいという想いを思い出し専業画家へと転身した山口ミドリ氏。何を描けばいいかわからないという悩みに苦しみながらも、キャンバスに向かい手を動かし続けることで作品を生み出してきた。風景画から人物画へと挑戦の幅を広げ、自然の美しい色彩とイメージを合わせたファンタジックな世界を描き出そうとしている。100%完璧だと思う作品は未だないと語り、自分自身をアップデートし続ける山口氏の今後の活躍に期待が高まる。

インタビュー: 2024/08/07