鮮烈な色彩で描かれた富士山や花。よく見ると点描で緻密に色づけられており、その細やかさにも圧倒される。この作品を描いたのはタニシ マシロさん。日本各地で展示を行い、フランスやニューヨークの展示にも参加している。のびのびと、描きたいものを描くというタニシ マシロさんだが、学生時代は今とは正反対の絵を描いていたのだとか。
「学生時代は色はほとんど使わず、ワントーンで仕上げる絵を描いていました。講義の中で批評会があって、教授が生徒の作品を批評していくのですが、もし自分が表現したいものを見せて、滅多打ちに批評されたら立ち直れないと思っていて。やりたいことに蓋をしていました。 大学受験で浪人していた時も、絵を描きたくて美大に行きたいのに、受験を乗り越えるまで描き続けていると、描くことが苦しくなってきちゃうんですよね。 そんな経験もあって、学生時代は描きたいものを描くより、批評会で自分のレベルや技術を示すために描いていました。他の人がやっていないことをやろうという気持ちはありましたが、自分が表現したいものとは向き合っていなかったと思います。」
もともと美術教師になりたかったというタニシ マシロさん。大学卒業後は県立高校、公立中学校の美術教師として教壇に立つ。その後、手に職をつけたいとネイルアートの世界へ。
「最初は自分の爪を綺麗にしたいと思って始めました。専門知識を学んでいろんな資格もとって、知り合いに頼まれたり、お仕事をいただいたりするようになって。 でもその後、ネイル溶剤でアレルギーを発症してしまったんです。かなり落ち込みました。熱を入れて勉強してきて、これからっていう時にどうしようもなくなってしまって。ネイルアートの仕事からは遠ざかってしまいました。」