Interview注目の作家

水墨画・墨絵・書
山本翔麗
小学1年生の時、友達に誘われて書道教室に通い始めた山本翔麗氏。OL経験やグラフィックデザインの仕事を経て書道の世界に戻り、師範代として自らの教室を持つまでになった。一発勝負の線の芸術と真摯に向き合い、品位を保ちながらアート書道という新たな表現にも挑戦し続ける彼女の想いに迫る。
書道を始めたきっかけを教えてください。

小学生1年生の時に友達に誘ってもらって書道教室に通い始めたのが最初でした。習い事なら何でもさせてもらえるというわけではない中で、書道教室については母は二つ返事で許可をしてくれました。おそらくそれは、母方の祖父が書家だったからでしょう。ただ、祖父は早くに亡くなったので祖父から直接書道を教わる機会はありませんでした。大学でも教鞭を取っているような人だったので、教えてもらいたかったなという思いは今もありますね。 書道教室は中学で部活をやるようになってから辞めてしまいましたが、高校生の時は選択授業で書道を選択したりと、書道との付き合いは学生時代も細々と続いていきました。

文字を書いているととても集中できるんです。書道は線の芸術とも言われたりしますが、絵画などとは違って消したり書き直したりはできません。一発勝負ですから、日頃から鍛錬していないといざという時に良いものを紙におさめることができない。目の前の文字に対して精神を研ぎ澄ます感覚が好きです。

 

職業として書家になるまでの経緯を教えてください。

私は一度は普通に就職し、OLも経験しています。だけど書道はやっぱりずっと好きでしたから、生活に余裕ができたタイミングで、もう一度書道を学び直したいと思い、今の師匠に門下生として師事しました。どうせなら、と高みを目指し師範代になったので、指導ができる立場になりました。始めは師匠の元で雇われ講師から始まったのですが、素敵な縁の巡り合わせがあり、知り合いに場所を貸して頂けることになり、こんな機会はそうそうないと思い、自分の教室を持つことにしました。

教室のコンセプトとアート書道について教えてください。

当初はよくある、初心者の方に段や級を取って頂くような教室でしたが、場所も自分で借りてより裁量を持って運営するようになってから、自分が一番楽しめるようなクラスを作ろうと、クラスを増やすことにしました。そこから始めたのがアート書道のクラスです。

もともと私のキャリアの中で、4~5年ほどグラフィックデザインの仕事をしていた時期があります。その時に培った色を使う、要素をレイアウトするといった感覚が、アート書道に繋がっていったと思います。  
アート書道の方が、一般の方には受けが良かったりもするんです。書道人口というのはどんどん減っていってますから、まずは間口を広くすることが大切だと思います。

「Love 〜冷静と情熱のあいだ」 作:山本翔麗
作品づくりで大切にしていることは何ですか?

これは教室でアート書道を教えるときの考えにも通ずるのですが、品位を保つことです。書道には絶対的な存在として、中国から受け継がれてきた古典があります。私自身、古典を学び古典を再現することが好きです。けれど同時に私たちは現代に生きているので、今と昔の架け橋を模索してもいるのです。

古典の良さというのは長年やってみないと分からない部分があり、アート書道でも初心者の方はつい古典に無いようなやり方で表現過多になってしまいがちです。現代のものに頼りすぎると品位が落ちていく。このバランスには正解が無く、私自身今も模索しているところですが、品位・品格を保つというのは最も心掛けていることです。

題材にする文字や、書き方はどのように決めているのでしょうか。

まず、題材の文字は漢詩や禅語、論語などから取ってくることが多いです。言葉には意味がありますから、言葉選びは慎重にならざるをえません。自分の人生の背景や内側から出るものが言葉になって、見る人にも伝わると思います。実際に書き始めるまでに、私はとても時間がかかるほうだと思います。  

書き方については、その言葉が持っている雰囲気や言葉から連想されるイメージは最低限大事にします。例えば力強いイメージを持つ言葉を、か細い線で書いたら説得力がないですね。ただ、力強さの中にも色々ありますから、そこから線の質や道具を更に工夫していきます。先ほども言ったように、伝統も重んじつつ発展が無くならないように、現代に生まれた道具を使うこともあります。
読めないくらいに文字の形を変えてしまうスタイルの書家の方もいるのですが、私は文字として読めるという前提は失わないようにしています。

実は、過去の作品を見るのはあまり好きではないんです。それは過去の自分であって、今の自分ではないので、気持ちはもう次の作品に向かっています。展示会に出展する時もなるべく書き下ろしの作品を出すようにしています。私にとって書は、とても刹那的なものなのかもしれません。

書家としての今後の展望を教えてください。

作品づくりに対しては、置きに行くのではなく、挑戦することを大事にしたいです。そのためには勉強してどんどん新しいものを取り入れることが必要だと思っています。まだまだ書道に対しては、やればやるほど足りないところを思い知らされる感覚を味わっています。周りの人の作品を見たり、書以外の美しいものからも影響を受けたりしながら、それを自分の作品に昇華していきたいと思っています。

やればやるほど足りないところを思い知らされると語りながらも、置きに行くのではなく挑戦することを大事にしたいと前を向く山本翔麗氏。古典と現代の架け橋を模索しながら、これからどのような作品を生み出していくのか、その歩みに期待が高まる。

インタビュー: 2024/09/06