Interview: 斉藤和

美しいと思う気持ちと向き合い続ける日本画家

 
斉藤さんが絵を通して伝えたいことを聞いた。
その答えは、「時間を忘れて美しいと思い、時間を忘れて感動するということ」
 
 

名も無き 380.455 2020.5

 
 

斉藤さんの絵は有機的である。つまり生きている。


京都出身、農業を営む家庭で育ち、
幼いときから家族総出の田植えを手伝っているうちに自然と「何かを生み作り育てる人になりたい」と思ったと言う。
美しいと感じる感情とは?そして、何かを生み作り育てたいというその「何か」とは?
それは、芸術作品という物質的な表現を超えた、精神世界に存在するものなのかもしれない。
斉藤さんにとっての作家活動は、その答えを探すための旅のようなものなのだろう。

 
 
「子供の頃から不思議なほど変わらず今にいたります。
そのときの感情の何故を解明していっているのかなと思えます。」
 
 

雪の舞う530.530 2020.5

 
 
画家を志したのは高校3年生のときという斉藤さん。
 
「絵を描くことで生きている人がいることをそのとき初めて知りました。
それまで画家というものの存在を、現実として知りませんでした。」
 
この場合の絵を“絵を仕事にする”というのは、
「絵を描く、あるいは絵を通して生きていくことが人生の中心にあること」だと語る。
 
斉藤さんが選んだ画法は、日本画だった。
 
「高校3年生の夏に出会った先生が描いていた日本画がきっかけでした。
初めて見た天然岩絵具の輝く美しさと、日本画の絵画空間の自由さに一瞬で魅了されました。」
 
 

天翔ける 530.530 2019.5

 
 
斉藤さんは日本画の魅力を
 
「縛りのない自由さと美しさ。
今も残る過去の日本美術の気品のようなものが根本にひそんでいて、それでも自由である懐の深さ」

 
と形容する。
 
“日本画の自由”とは具体的にどういうことなのだろうか。
 
「目に映る事象を再現する必要がなく、
心象的というか観念的というか、表現することが第一で、
人が空を飛んでも良いし、遠くのものが大きくなっても構わない、そんな自由さがあります。」
 
自由な表現を歓迎する日本画だからこそ、美しさを最大限に抽出することができるのだろう。
夕日を見たときの心が焦がれる感覚や、月を見たときの安心感のようなものなど、
美しいものに触れたときに生まれる感情を言葉にするのは難しいが、
その感情と向き合い続けた中の一つの答えが作品に収められている。
 
「日常に出会う非日常の瞬間を描き続けることで、何故それを特別に美しく感じているのかを考えています。
当たり前にそこにあるものが、深く私の心を捉えてやまないことの不思議と、私は対話しています。」
 
ストイックなまでに「美しいとは何か」を作品に落とし込む斉藤さん。
創作活動を行う上で大切にしていることを聞いた。

 
「見るということ聞くということを出来るだけニュートラルにすること。
偏見を持たずに、出来るだけ大きく沢山受け入れてゆければなあと思います。
そしていつも、何故を持っていたいと思います。」
 
 

再雨 455.455 2016

 
 
朝、散歩をして、思考をニュートラルな状態にしてからアトリエに入り、
アトリエに入ったら、まず手を洗い、うがいをするという斉藤さん。
 
「よし!というリセット。
そして絵に触れる、触れるかも知れない手に油分などを残しておかないためにやっています。」
 
 

蕪 455.455 2013

 
 
幼い頃から始まった何故と何かを追い求める“表現の旅”。
その旅にゴールはない。

 
「絵を描くことを辞めようとかそういう感覚がないんです。
(絵を描くことが)人生の中心なのだと思えます。
描きたいものが、宿題が、増えていくばかりです。」
 
 
最後に、斉藤さんの今の目標について聞いた。
 
「妻と一緒にたんぽぽプロジェクトをやっているのですが、
日本画の素晴らしさを世界中のどこまでも伝えていくことです。
今は気兼ねなく展覧会で絵を楽しむことが難しくなっていると感じていて、
昨年たんぽぽプロジェクトで「斉藤和日本画作品集 絵言葉」を発行しました。
そばに置いて楽しんでいただけましたら嬉しいです。」
 
「斉藤和日本画作品集 絵言葉」ページ
 
 

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