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Interview: Sachie mine

一生懸命生きているすべての鑑賞者へ、ぽっと灯を灯したい

 
 

“ 息遣いに衝撃を受けて „

 
 
「3歳から絵を描くことが好きでした。小学校から高校まで、周囲に絵の上手な人が必ずいて、叶わないなと感じていました。刺激を受け、難しさを感じながらも負けじと書いているような感じでしたね。地域に米軍基地があり、アメリカの文化がリーチしてきやすい環境で育ちました。音楽も絵もとてもポップで、その息遣いに衝撃を受けて。それまでは日本らしく控えめな色づかいを意識していましたが”好きな色で塗っていいんだ!”と教えてもらいました。学生時代に挫折をした時、部屋に籠ってずっと絵を描いていた時期があります。描いてはくしゃくしゃにしていたものを、拾って飾ってくれていたのは母でした。昔から、悩んだ時にはいつでも絵を描いていたのだと思います」
 
絵を描き始めた頃からの熱いエネルギーを語ってくれたSachieさん。周囲の絵の上手な人に影響されたのは、Sachieさんの芯の部分が絵を愛していたからではないかと筆者は思う。絵のほかに、歌も、文字を書くことも好きだというSachieさんは、詩集のように文字とイラストのコラボレーション作品も発表されている。かわいらしいフォントの文字も文章の構成もすべてご自身でされているそうだ。
 
「挫折をしたり、絵をやめようと思ったことは何度かあります。環境を変えて子育てにシフトしようと移住したこともありました。しかし転機が起き、島の人の依頼で成人式のイラストを頼まれて…。絵をやめることをやめよう、と思うようになりました。好きなことって、続けるのが難しい状況になってもきっとやることになるんだなと、いまは感じています。自分の絵に出会った人がハッピーで元気な気持ちになったり、落ち込んでいる時に見てもらって”なんか楽しくなってきたな”と思ってもらえる絵を描きたいです」
 
 

 
 

“ いろいろな表現を楽しむ „

 
 
「24歳の時、路上で絵を描く人に出会いました。その人にインスパイアされて仕事を辞めて、私も路上で絵を描くようになります。はじめは見よう見真似でしたが、自分なりの絵のエッセンスを足していくようになります。墨で文字を書いたり、床に布を敷いて描いたりしました。その後、全国各地を回って色々なところで作品を描きます。カフェでお客さんに向けて、即興で絵を描くこともしましたね。移住先の島に出会ってからは、島のスーパーのオーナーさんが作品を褒めてくださって、トートバッグやTシャツなどのオリジナルグッズを販売しています」
 
さまざまなテイストの絵を描き、さまざまなテイストのアートに触れているSachieさんの豊かな経験と自由な探究心は、見る者をどきどきさせてくれる。インタビューの日もご自分の作品がプリントされたTシャツを着て、素敵なお話をしてくださった。Sachieさんの作品を初めて目にした時に筆者はふとバンクシーの作品に宿るエネルギッシュさを感じたが、路上や街頭での表現活動をされるSachieさんにとって、何か思い当たることはあるのだろうか。質問をしてみた。
 
「気持ちは近いかもしれません。表現は違っても思いは一緒というか。私は昔から、社会に対して思うことがいろいろあります。若い頃は反発して訴えかけるようにしていました。対して今は少し違う対処で、確かに自分の中に気持ちが残っており、逆境になればなるほどパワーが湧いてくるような感覚です。個展もギャラリーもいいけれど、みんなが通るところに描くときには、ダイレクトに一気に、短距離走のようなエネルギーのぶつけ方をしています」
 
 

 
 

“ どんな状況でも描くと決めたから „

 
 
「島の港の玄関口に、20メートルの大きな絵を描くことになりました。屋外広告が引っかかってしまうのではないかということで、私が自分で資格を取り、グループの皆さんと力を合わせて完成させ取り付けることができました。地域を盛り上げるためのアートとして認めていただいても、日本は公共の場の使用に厳しいし、地域の条例により使用していい色が決まっている場合もあるんです。私はすごく派手な色を使いたい時もあれば、モノクロで仕上げた時もあり、その時の気分で制作を進めていきます。リクエストをいただいた制作は、その人のイメージカラーが浮かんでくることもあります。何かを見たときにパッと出てくるイメージは、描き終わるまでなくなることなく自分の中に残っています。作風がいろいろありすぎて迷ってしまったこともありましたが、今は思いのままに全部を表現していけたらいいかなと思うようになりました」
 
法律面での制限もある地域や街でのアートに対し、ご自分で解決できる方法を探し出してパワフルに挑戦していく姿はとてもクールだ。ご自分の表現したいことを繰り広げていく表現方法から”鑑賞者のための表現”に移り変わってきているというSachieさん。ご自分のことを、直接話すよりも絵や文字に書いた方が伝えやすいタイプだと感じているそう。作品を通して、大変な毎日で一生懸命に生きている人に灯を灯していきたいと話してくれた。
 
「自分の軸を大切にした制作から、なにが残せるかな?と考える制作になってきました。子ども時代の自由さを忘れず大人になってほしいなと、自分の子どもたちを見て思っています。楽しくぶわーっと絵を描いた瞬間を何かのきっかけで思い出してほしいです。世界に向かって国境を超えて描いていきたいという目標があります。世界の子どもたちへ自由でいいんだよ、いろんなことがあるけれど大丈夫!と伝えていけたらいいなと思います」
 
 

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