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Interview: 桃尻ビロード

作品づくりのテーマは「探求の具象。解放の抽象。」

 
 

“ 漫画家になることを夢見ていた頃 „

 
 

-絵を描き始めたのは、いつ頃からですか?

「子どもの頃から描いていて、高校卒業後は東洋美術学校短期グラフィック科に進学しました。もともと漫画が好きで、将来は漫画家になりたいと思っていたんです。でも当時はアナログの時代ですし、売れっ子にならない限りアシスタントをつけることは難しい。ちょっと面倒な所も、全て自分でやらなくちゃいけないのが厳しいと思っていました」

 

-卒業後も漫画家を目指していたのでしょうか?

「卒業してすぐの頃は、働きながら漫画を描いていました。でも、仕事をしながらだと時間が取りづらく、集中してたくさん描くことができません。それに、売れっ子の作家さんは〆切に追われて時間がないというイメージがあり、自分は一つの作品をじっくり描く方が向いていると思うようになったんです。でも物語を考えることは好きなので、それ以降は漫画ではなく、絵本や小説など別の形で創作活動を続けてきました」

 

-ちなみに桃尻ビロードというお名前には、どんな由来があるのでしょうか?

「10年ほど前に飼っていた猫が由来です。猫が振り返った姿を写真に撮っているとき、お尻が桃尻だったんです。猫のお尻って、触ると柔らかくて気持ちいいんですよね。ちょうど作家として活動するに当たって『面白い名前はないか』と探していた所だったので、猫の桃尻から着想を得て名前にしました」

 
 

 
 

“ 作りたいものに合わせて技法を選ぶ „

 
 

-2006年にフリーランスとして活動を始められたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

「これといって、大きなきっかけがあったわけではありません。それまでもデザインの仕事に携わっていたのですが、このまま人から言われたことをやり続けていたら、いつまでたっても自分のやりたいことができないと思ったんです。年齢的にも年を重ねるほどフットワークが重くなると考えて、フリーランスになりました。きっと、あれが自分にとってフリーランスになるタイミングだったんだと思います」

 

-日頃からよく使う画材や技法はありますか?

「カラーの場合はアクリル絵の具が多く、モノクロは鉛筆やシャープペンシルをよく使います。ただいろんな表現方法で描きたいので、作品によって画材や技法を変えています。キャンバスだけでなく紙自体も好きなので、和紙や凹凸のある紙を選ぶこともあります」

 

-画法や技法を選ぶ基準はありますか?

「私は具象画も抽象画も描くのですが、具象画は描きたいものがあって、『これを描くなら色はどうしよう、どんな表現にしよう』と考えることが多いです。一方、抽象画は色や気分によって決めることが多いように思います。私の中で『探求の具象。解放の抽象。』という言葉が、一つのテーマになっています」

 

-これまで、作品づくりに対する行き詰まりやスランプを感じたことはありますか?

「それはもう、しょっちゅう感じています(笑)。スランプというか、紆余曲折ですね。最初は『こういう構図で、こういう絵を描こう』と思っていても、途中で二転三転します。最終的に自分が描きたいものを描いて、『よし』って思う。その繰り返しです」

 
 

 
 

“ 全ての活動に通じる“幸せ”への思い „

 
 

-気分転換に取り入れていることはありますか?

「旅が好きなので、国内海外問わずに時間があればどこかしら旅に出ています。冬はスキー、夏には海、と定期的に自然のある場所でエネルギーチャージをしてますし、国内なら京都や瀬戸内が好きでよく行きます。3年に一度の瀬戸芸には必ず出向いて、島巡りしながらアート作品に触れることで、自分自身も創作意欲が湧きますね。どうしても旅に行けないときは、近場をドライブして非日常の感覚を取り入れるようにしています」

 

-絵を描く以外にも、さまざまな活動をされていらっしゃるんですね。

「東京の江戸川区で『白耳ギャラリー』を開いています。ここはギャラリーだけでなく、雑貨や文具、パワーストーンジュエリーなどのショップ、レンタルスペースなど、私のやりたいことが詰まった秘密基地のような場所です。作家としての活動だけだと視野が偏りがちですが、さまざまな取り組みを通していろんな目線を持つことが自分の性格に合っているみたいです」

 

-さまざまな世界観が、作品の多彩さにつながっているのでしょうか?

「そういう面もあると思います。よく、『個展なのに一人グループ展みたいだね』と言われます。私は小さい頃から霊感が強く、不思議な体験や多くの人には見えない世界を見てきました。自分にとっては普通のことですし、そうした特性を生かしてカウンセラーやセラピストとしても活動しています」

 

-作品を見た人に向けて、メッセージをお願いします。

「以前、『ハッピー、ラッキー、エンジョイ、スマイル』というテーマで個展を開いたことがあります。作品はもちろん、いろんな活動の根底にあるのは『どんな人もハッピーでラッキーでエンジョイできて、笑顔になれますように』という思いです。今後は絵本の制作をはじめ、グループ展の定期開催および、地球環境を考え、リサイクル品を使ったアップサイクルアートにも積極的に取り組んでいく予定です。アップサイクルアートに触れる人が、少しでも地球や宇宙の環境に目を向けるきっかけになれれば幸いです」

 
 

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