Interview注目の作家

三木彩嘉
人間がもつ本当の豊かさとは?絵を通して伝えたい想い
私たちが忘れかけてしまっているもの
見上げるような高い建物に、森のようなダイナミックな壁画を。そうかと思えば小さなハガキに、花や小鳥の繊細な絵を。 大きなものも、小さなものも、三木彩嘉の描く世界は、いつでも鮮やかで美しい。 ー三木さんの作品は“和風”を基調としたものが多いです。その背景には、どのような想いがあるのでしょうか。 私たち日本人は古来より自然を愛し、八百万の神々を崇拝して暮らしていました。そして命というものを、大切に見つめてきた民族だったのです。それが明治時代に様々な価値観がやってきて、規制が敷かれたあたりを境に、どんどん変わってしまった。 この現代は、心を病んでしまう人が多いですが、私はそれと無関係ではないと思っています。だからこそ古来日本の良いところを。この豊かな精神をもう一度、見つめ直しませんかと。そうした想いを抱いている部分がありますね。 ー作品のインスピレーションは、どのようなきっかけで浮かぶのでしょうか。 まずはプロとして、依頼主様のニーズを第一にしています。ご希望があるときは、それにとことん耳を傾けて、納得されるまで描き直すこともあります。ただ自由なテーマを頂いたり、私自身が描く普段の絵は、また違う発想から生まれることも多いです。ふと日常に降りてきて、そのイメージがアトリエで溢れだす感じでしょうか。何か気がついたら、すでに描き出しているときもあります(笑)。
人も景色も、体験したすべてが作品の糧に
ーアートにおいて憧れを抱く方や、師匠のような方はいらっしゃいますか。 過去に3人いました。いつも素晴らしいアーティストや尊敬する方から、多くを吸収したいと思っていまして。中には通常ではお目に掛かれないような方に、師事したこともありました。 しかし学びや気づきは、必ずしも技術だけではありません。画家としての在り方や、生き方のようなことまで。気が付いたら自身を俯瞰して見ることが出来るようになり、また表現できる世界が大きく広がりました。 ー日常で、何かしら趣味などはお持ちですか。 私にとって絵は好きすぎて。ここからが趣味だとか、あまり境界線もないのですが。あえて言うのであれば、旅行によく行っています。世界中の色々な場所をしょっちゅう訪れて、建築や植物や、歴史に触れるのが好きです。 ーなるほど。とくに心に刻まれているような場所はありますか。 資源が多く、独特な“いけにえ”文化など、歴史の深いメキシコは、とくに印象に残っていますね。あとはプーケットのコーラル島。あの海の色は忘れられず、宮古島でその色を見つけてからは、宮古島によく行っています。 ーそういえば作品には、南国をイメージしたものが多数ありますね。 多くの体験から生まれた私のコンセプトは、自然崇拝で。たびたび訪れる宮古島を、よく描いていますね。
3つの絵画指導
・心のクリニック ・通常の教室 ・月1美術で遊ぼう ー三木さんが出向されている“心のクリニック”とは、どのような教室ですか。 この現代、心を病んでしまう人も多いです。そういう方が作品づくりを通じ、もういちど自分を認め、新しい可能性に気づけるようにと。ただ、これをやるという縛りは、何もありません。とにかく“楽しい気持ち”が表現できるよう、声をかけています。 ーうつ状態のときに、創作活動は難しくないでしょうか。 その通りですね。さいしょは紙に黒一色・・何かをちっちゃく、ぐちゃぐちゃと、それしか描けない方もいます。とにかく少しずつ。でも、そこから最終的には、どんどん個性的に堂々と。紙の表にも裏にも描き切れないほどに。そこまで行くんです。 そうすると本人も「自分、なかなかイケてるじゃないか」なんて思ったりして(笑)。そして、みんなの作品を一斉に飾ったとき、それが全体で一つになって。それがまた、素晴らしくて。皆さん、輝くものをぜったい持っているんです。 ー幸せを伝播するエネルギー、その原動力はどこにあるのでしょうか。 実はこう見えて、かつては私自身が心を閉ざしていました。幼少のころ家庭では大人たちが争い、めちゃくちゃで。絵だけが本当の私を出せる、居場所でした。それがアートを通じ、心のブロックが少しずつ解放されて。そんな経験があったからこそ、人の痛みに寄り添えるのかも知れません。 ーありがとうございます。最後に何かメッセージがあれば、お願いします。 日本人が、古来から抱いていた精神を。生きとし生ける、すべての命への尊敬と尊重を、世界中と共有したいです。国も企業も、自然を乱伐すべきではありません。本当の豊かさを失えば、人の心も荒みます。子供のころから奥底にもっている綺麗な魂を、どうか皆さん、忘れないでください。