日本文化を継承するアート販売Webメディア

Interview: MICHIKO

風をあやつって自由に表現する
アルコールインクアートの世界

“ アルコールインクアートとの偶然の出会い „

近年SNSで耳にするようになった「アルコールインクアート」。
既に海外では人気を集めており、愛好者やコレクターも世界中に広がっている。
MICHIKOさんは、国内でいち早くアルコールインクアートに取り組んだひとり。
日本ではまだ珍しい、アルコールインクアートの技法から伺うことにした。

 
 
アルコールインクにはいくつか種類があるんですが、有名なのは漫画家やイラストレーターが使っている「コピックインク」。わたしはその補充インクを使っています。
そのインクを専用の用紙、いわゆる耐水紙の上に垂らしてエタノールでのばしていき、それをドライヤーで乾かします。
インクを垂らしたところに風を当てると、風の方向にインクが流れていって、滲んだり色が混ざったりして思わぬ模様が現れるんです。
いろいろな色のインクを垂らし、「偶然」を楽しみながら、一方では自分でイメージして風をあやつって作品を創り上げていくのが「アルコールインクアート」ですね。
 
 
MICHIKOさんはアルコールインクアートに出会うまではアートに馴染みがなかったという。
 
 
まったく接点はありませんでした。むしろ美術は苦手で、絵画鑑賞に行くことすらあまりなかった。カナヅチとかノコギリを使って工作するのは好きだったんですが。(笑)
アルコールインクアートに出会ったのは全くの偶然でした。たまたまアルコールインクアートを見かけた友人が、ワークショップに誘ってくれたんです。
今でこそSNSなどでアルコールインクアートを目にするようになりましたが、当時は何も情報が無くて。私も「アルコールインクアートって何だろ?」という感じで、ほんとうに気軽に参加しました。
Zoomでの講習だったので、「これでいいの?」 「これであってるの?」の連続でした。それでもっとちゃんと理解したいと思って対面の講習を受けたんです。そこですっかりはまってしまいました。
 
 
 

“ アルコールインクアートの魅力 „

 
 


 
 
MICHIKOさんは、偶然出会ったアルコールインクアートのどこに惹かれたのだろうか。
 
 
最初に圧倒されたのは、その「色」です。
コピックインクは358色も用意されているんです。せいぜい36色の色鉛筆しか身近に見たことのなかった私にとって、これはちょっと衝撃でした。(笑)
さすがにそこまでは揃えられないですが、自分でも100本くらいは揃えています。
それぞれの色のもつ透明感も、アルコールインクアートの大きな魅力ですね。
他の画材ではこんな透明感は出ないと思います。
 
 
自由な技法ゆえに難しい部分もあるという
 
 
アルコールインクアートは偶然によるところが大きい技法です。いくら狙って色を置いても、なかなか思い通りに広がってくれませんし、2度と同じものは描けない。
特にオーダーを受けたときは結構悩みますね。注文してくださる方には、ご自分のイメージがあるわけです。もちろんそれに応えなければならないのですが、これがなかなか難しいんです。「これ」と思う色を使っても、インクの微妙な量や風の加減で広がり方が違ってきますし。そんな中でどのようにイメージに近いものを仕上げていくか。
自分が思うようにいかないところがアルコールインクアートの難しさでもあり、面白さでもあります。
 
 
描く前に明確なイメージを決めているわけではない?
 
 
まず思った色をぱっとつけてみて、「こういう雰囲気に見えるな」というところから始まります。最初から明確なイメージがあるわけではない。描いているうちにインスピレーションがわいてくる感じです。
だから仕上がった時に自分で満足のいく作品もあれば、そうでない作品もある。
ただ、完成した時点では「いまひとつ」と思っていた作品が、時間を置いて見てみると、見え方が違って「いいな」と思えたりするんです。その時の心の状態が影響するのかもしれませんね。
 
 
 

“ 色鮮やかな作品から「色を抜いていく表現」へ „

 
 


 
 
MICHIKOさんの作風は時を経て変化している
 
 
始めたころは色を重ねるのが楽しくて、色とりどりの作品になっていました。今は逆に「色を抜いていく表現」に取り組んでいます。
鮮やかな作品を見ると「きれい」と思うんですが、自分で描く時は「これでいいんだろうか」と思って正解が見えなくなってしまって。行き着いたのが「色を引いていく表現」でした。
一見、色をあまり使っていないように見えると思いますが、実はたくさん色を入れているんですよ。一度全面に濃く色を入れて、そこから抜いていくんです。淡い色もいろいろな色のインクを組み合わせて引いていった結果なんです。材料の無駄遣いと言われますが。(笑)
インクの美しい発色を活かして、鮮やかな色を重ねた作品が多いなかで、色を引いた作品は私の特徴にもなっているのかなと思います。
 
 
MICHIKOさんは今後どのような方向に進もうとしているのだろうか
 
 
アルコールインクアートをもっと広めていきたい。
自分の作品を知って頂きたいのはもちろんですが、それだけでなく、多くの人にアルコールインクアートの楽しさを体験していただきたいと思っています。
多彩な色、透明感のあるインクを「風」を使って自由に描く。作品に取り組んでいる時間は、「夢中」だったのが、いつのまにか「無」になっていく。瞑想の感覚に近いかもしれません。
時を忘れて夢中になれる時間というのは、大人になってからは貴重なのではないでしょうか。
 
それから、今、チャリティーにも取り組んでいます。今回、犬猫の殺処分に関する寄付を募るためのチャリティーに参加させていただくことになりました。
絵を描いて誰かに買っていただくだけでなく、作家である自分も、購入していただいた人も知らず知らずのうちに社会に貢献できる。そうした作品を通したつながりも大切にしていきたいです。

戻る