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Interview: 玉城博香

内側から溢れ出る“衝動”を表現するアーティスト

 
 

“ 教員時代を経てアーティストへ „

 
 

――アートに触れたのはいつ頃からですか?

「小学生の頃から絵を描き続けていて、中学で美術部の部長を務めた後、美術系の高校へ進学しました。沖縄へのあこがれと自由な校風から沖縄県立芸術大学へ入学。その後、中高の美術教員として3年ほど働いた時期があります」

 

――アーティストとして独立したきっかけを教えてください。

「教員時代は私立と公立の学校で務めたのですが、学校が求める美術の在り方に疑問を感じるようになりました。授業には『ここまでに完成させなければならない』という制限が出てきますし、子どもたちを椅子に座らせて課題をやることが苦痛になってきたんです。美術はもっと楽しいものだという思いを伝えたくなり教員を辞めてアーティストとしてやっていく決意をしました」

 

――現在はどのようなスタイルで創作活動を行っているのでしょうか。

「メインとなるのはライブペイントです。大学時代からライブペイントに興味を持っていて、作品が出来上がる過程を皆さんに見ていただくことに魅力を感じています。初めてイベントに参加したときはすごく楽しかったですし、これが自分の天職じゃないかと思ったんです。ただ描くだけではなく、私自身も作品となり、踊りながら描いてます。こんな描き方もあるんだと、子供をはじめ、たくさんの大人に知ってほしいです」

 
 

 
 

“ 殻を破った瞬間と作品へのこだわり „

 
 

――昨年は、ご自身の中で大きな変化があったそうですね。

「私は今まで美しいものを描かなければと思っていました。ライブペイントでは音楽に浸りながら夢中で描いていますが、終盤になると龍や蝶など『最後は形がわかるものにしなければ』という意識が出てきて、それがとても嫌だったんです。6年間試行錯誤した末に、『なんかわかんないけど、かっこいい』と思える絵にしようと決心して、最後まで勢いを失わず楽しんで描けるようになってきました。中途半端に整った絵から、ダイナミックな勢いある線たちが画面を覆いつくす絵になったんです。同時に、闇にスポットを当てる作品を描くようになりました。田舎で暮らしていると、人も自然も『綺麗』と『怖さ』の両面があり、だからこそ美しいのだと感じます。そういうことを表現したくて、『きれいな絵』から『生々しい絵』へと変化していきました。」

 

――変化した後の、お客様からの反応はいかがでしたか?

「『玉城さんらしいものができたね、感動した』と、言ってくれる方もいましたし、作品を気に入って購入してくださった方もいます。私がいいと思ったものはしっかり伝わるんだと感動して、そのとき初めて涙が出ました」

 

――作品を作る上でのこだわりはありますか?

「基本的に、アクリル絵の具の白、赤、青、黄色の4色のみを使用しています。そうすることで発色がよくなり、鮮やかな絵が際立つからです。大学の授業で色糸を張り巡らせた作品を作ったとき、空間に浮いている透明な糸と糸の重なりを見て4色のみを使う手法を思いついたんです。空間には目に見えない色が漂っていて、それが重なり合って、色が見えている感覚がしました。それを3原色+白の鮮やかな色を使用し視覚化してます。また、闇の部分を意識するようになってからは黒や紫も使うようになり、作品の幅が広がったと感じています」

 
 

 
 

“ 自然の中で独自の世界観を貫く „

 
 

――現在はライブペイントだけでなく、ワークショップも開催されていますね。

「そうです。先日も地域のお寺を会場にして、子どもたちが自由に遊べるイベントを開きました。ほかにも自宅の庭を会場にして、水に溶いた絵の具をみんなでぶつけ合うイベントを定期的に開催しています。自宅は山の中にあるので、子どもたちがどれだけ騒いでも大丈夫。古民家を改装した家で薪風呂もあるので、最後はみんなでお風呂を焚いて汚れを落とすまでがセットです。子どもたちが思いっきり遊ぶ横で、ママさんたちはのんびりくつろげるようにしているので人気のイベントになっています」

 

――自然が豊かな場所で暮らしていることも作品に影響を与えていますか?

「自然から受ける影響は大きいと思います。私は人と接することに苦手意識があり、子どもの頃は特にその傾向が強かったんです。いつも自分の思いや考えが伝わらないというもどかしさを抱えていて、よく自然の中で絵を描いたり遊んだりしていました。きっと根底にあるものは変わっていなくて、こうして自然の中で暮らせる今がとても楽しいです。作品にも木々の木漏れ日や風、匂いなどが表れていると思います」

 

――最後に今後の目標とメッセージをお願いします。

「目標は、海外で活動をすることです。ライブペイントや作品の展示など、何かしらの形で海外の方々に見ていただきたいと思っています。私はライブペイントやワークショップだけでなく、壁画を描いたり粘土を使った作品づくりをしたり、さまざまなことを手掛けています。ジャンルごとに全く違う自分がいるのですが、その全てがあってこその私です。Instagramではライブペイントやワークショップの様子をアップしているので、ぜひそちらもご覧いただければ嬉しいです」

 
 

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