【解説】
「千夜一夜物語」の名でも知られる中世イスラム世界で編(あ)まれた大説話集(だいせつわしゅう)から、シャガールが恋愛と冒険にまつわる4つの物語を選び、印象的な場面を絵画化したものである。アメリカ滞在中の1944年に愛妻ベラを失い、1年間筆を取ることができなかったシャガールが、娘イダと新しい恋人ヴァージニアに支えられて悲しみから立ち直り、カラー・リトグラフに初めて取り組み、戦後の出発点をなした作品である。 『アラビアン・ナイト』は、国中の若い女性と一夜をともにしながら、その女性たちを次々と殺していた暴君シャーリヤール王を思い止まらせるため、大臣の娘シェヘラザードが語り部となり、王の閨(ねや)で千一夜にわたり連綿と話を聞かせて心を奪い、王の蛮行を止めさせたという夢幻的な物語である。「アリババ」や「アラジンの魔法のランプ」の物語がよく知られるが、シャガールはなかでも艶やかな話を選択した12点(豪華版は13点)のリトグラフには、官能的に抱き合う男女や、神秘的な動物、エキゾティシズムあふれる衣裳や異国の王宮の場面がきらびやかに彩られている。(『シャガール 私の物語』図録、2008)
描かれている4つの物語『カマール・アッ・ザマーンと宝石細工師の妻』 『海王の娘ジュルナールとその子にしてペルシア王 バドル・バーシム』『陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語』『黒壇の馬奇談』作品に関するお問い合わせは下記メールアドレスまでお願い致します。
art@nihonbashiart.jp1944年に愛妻ベラを失い、1年間筆を取ることができなかったシャガールが、立ち直り初めて取り組んだカラーリトグラフ作品「アラビアンナイト」をご紹介致します。