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Artist k.naoya k.naoya

k.naoya

INTERVIEWインタビュー

k.naoya

アートとの出会いを教えてください。

高校3年のときに進路を決める際、美大を受験しようと決めたんですが、それまでは絵を描くのが好きなわりに、あまり描いていなかったんです。でも受験を決めてからは一気に火がついて、毎日必死に描きました。ただ、アーティストになりたいという気持ちは、もっとずっと前からありました。
幼稚園のころにはすでに自分は将来アーティストになると自然に思っていて、自分の中ではそれが当たり前の感覚だったんです。自慢みたいに聞こえるかもしれませんが、当時から絵を描くのが得意で、自分は絵がうまいという根拠のない自信がありました。

印象に残っているのが、幼稚園でお父さんとお母さんの絵を描きましょうという課題が出たとき、みんなが大きく顔を描いて肌色を塗る、似たような絵を描いていたんですが、僕はあえて棒人間を描いたんです。もっと自由に描こうよ、同じじゃつまらないという思いからでした。大げさに言えば、みんなを目覚めさせたかったんですよね(笑)
本当に自慢したいわけではないんですが、当時から自分には何かできるという確信のような感覚がありました。いわゆる根拠のない自信というか。でもその感覚があったからこそ、今もアートを続けていられるのだと思います。

作:k.naoya

どんな作品を制作しているのでしょうか?代表作と感じるものがあれば教えてください。

2点あるのですが、まず1つ目は新聞紙を使った作品です。タイトルはあえて『アンタイトル』としています。大小さまざまなサイズを制作したのですが、どれも自分の中でとても印象に残っている作品です。制作のきっかけは、特別な構想があったわけではなく、“ふと作ってみよう”という直感的なものでした。

新聞紙を何枚も重ねて帯状に畳み、それを板に貼り付けていくのですが、実は外側しか接着していません。だから内側は少し浮いていて、剝がれ落ちそうな、ギリギリの状態になっているんです。その浮きが生むわずかな影や空気の隙間が、見る人にとってはまるでこちらへ迫ってくるように感じられる。安定しているようで不安定なそのバランスが、作品全体に独特の緊張感やドラマを生み出しているように思います。

作った当初はほとんど直感的で、感覚に任せて作った作品でした。でも、自分の中では常に“社会と関わり、何かを問いかける作品を作りたい”という思いがあります。特にこの新聞紙の作品では、SDGsの考え方を少し意識しています。普段、私たちの生活の中で“ごみ”として扱われてしまうものにこそ、美しさや可能性がある。そうしたものを作品に変えることで、新しい価値を生み出すことができるのではないかと思ったんです。単なる素材のリサイクルではなく、“価値を転換する”行為そのものが作品のテーマになっています。

「アンタイトル」 作:k.naoya

2つ目の代表作品を教えてください。

これは大学のキャンパス内で制作した作品で、机を非合理的に配置したインスタレーションです。タイトルは特に付けていませんが、見た人に日常の当たり前を問いかけることを意図しています。普通、机はお店や教室では座りやすく、使いやすいように合理的に配置されていますよね。しかし、この作品ではあえてその常識を外し、美しいと感じる配置に置き直してみました。

意図としては、日常に埋もれた「普通」や「当たり前」の感覚を揺さぶりたかったのです。私たちは普段、気づけばスマホを触っていたり、自然のない環境で何も疑問を持たずに過ごしたりしています。でも、それは実は偏った、不自然な行動であり、その日常の流れに慣れてしまうと違和感を感じなくなります。そうなることで、問題の解決方法も限定されてしまう。だから、その固定概念を打破することを目的に、この作品を作りました。

机を美しいと感覚的に感じさせることで、人が本来持っている美意識を呼び覚ます。その感覚は、従来の合理的な思考ではたどり着けない問題解決にもつながると考えています。非合理的に解決することで、新しいアイデアや発想が生まれる。それを実験するような感覚で制作しました。見た人が日常を違う角度から見るという小さな経験をすることで、感覚や思考が少しずつ柔軟になります。その積み重ねが、やがて新しい創造や発想につながる。だからこの作品は、見て楽しむだけでなく、考えるきっかけになることを意図しています。

k.naoya氏が選ぶ2つ目の代表作品 作:k.naoya

制作において最も大切にしていることは?

制作において最も大切にしているのは、手法よりも作品のテーマや、人にどのような影響を与えられるかです。自分のこだわりに縛られてしまうと、新しい表現は生まれません。だからこそ、固定概念にとらわれず、自由に試すことを常に意識しています。大学では油絵を専攻していますが、表現方法を限定するつもりはなく、最初からこれは違うと決めつけず、どんな素材や手法にもまず挑戦すること。それが今の自分の姿勢です。この作品も、感覚的に始めた試みが自分の中で形になった例のひとつです。こうした素材や価値の逆転が、人に何かを伝えたり、気づかせたりするきっかけになるのだと思っています。

 

幼少期から自然とアートに惹かれ、幼稚園時代には「将来アーティストになる」と自然に感じていたk.naoya氏。大学で油絵を学ぶ一方、素材や手法にこだわらず、直感的に制作を行うことを重視している。新聞紙や机の配置など独創的な表現を通じて、日常の常識や価値観に疑問を投げかけ、見る人の感覚や思考を揺さぶる作品を展開。自由な発想で挑戦を続けるその姿勢は、これからの表現世界への期待をさらに高めている。