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Aki.Haku.は、不条理や社会的抑圧をモチーフに日常の中で感受する森羅万象のときめきを余すことなく描く。象徴主義の詩人を思わせる大胆で繊細な詩とあどけない微笑みを浮かべる天使の表象を綯まぜ、Aki.Haku.は自らが抱えてきた葛藤を昇華し、この世を寿ぐ讃歌を奏でる。デジタルとアナログを融合したハイブリッドな描画技法は軽妙で心理的に鑑賞しやすい素地を築く。軽妙なパステルカラーで描かれる天使たちの傷だらけの心は、独特なセンスのことばの連なりによって壊れないよう継ぎ合わされる。東京美術学校にて工芸(鋳金)の教授をつとめた香取秀真(かとりほつま)は曽祖父にあたるが、彼の詩人としての才能が彼女にも色濃く受け継がれている。父もまた東京国立博物館の学芸員であり、母も女子美術大学のテキスタイルの教員と幼少期からアートに囲まれる豊かな環境で育つ。
一方でAki.Haku.によれば、物心つく以前から生物学的性別とジェンダー・アイデンティティの不一致による理解されない苦しみや孤独を感じていたと言う。複雑で抑圧的な家庭環境から度重なる絶望を感じ、生きることに対する苦悩を抱えていた当時、日々を”溺れながら”生きていたと語る。Aki.Haku.にとって、生きることへのやり場のない思いを解放できたのが、まさに絵を描くことだった。
淡いタッチで現代的にカワイく描かれる内的世界は彼女の隠れ家であり魂を慰安するリトリートだ。柔らかで浮遊感溢れる画中には、この世に生きていていいとする魂の癒しが込められている。それは全存在への承認を自らに与える自癒行為なのだろう。使徒たちが奏でる歌声はすべてが満ち足りていたあの頃の余韻となって鑑賞者の心と共鳴する。作品は彼女の人生の記憶の一部と再構成され、コラージュとして生成される。絶望と葛藤に浸った若年期の自分を救うかのような心情の吐露が哀歌となって画面から沸き立つ。自身の源体験を抽象化、共有することで、今現在も陰鬱で抑圧的な渦中にいる他者の救いとなり得る。彼女の作品は、聞け!天使達の歌を、という類の仰々しいものではない。吐息がかかるような距離で優しく讃美歌を語りかけるのだ。
【略歴 Career】
1987年 東京都生まれ
2010年 筑波大学第二学群比較文化学類 卒業
2012年 多摩美術大学造形表現学部デザイン学科 入学
2014年 多摩美術大学造形表現学部デザイン学科 途中退学
2022年 7月 新宿眼科画廊 個展「傷だらけの幸福論」
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Artist
Aki.Haku.
Aki Haku
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