Artist 上田 圭一 Ueda Keiichi

INTERVIEWインタビュー
恩師の言葉を胸に、真摯に描き続ける20年
画家への背中を押したのは、一枚の絵と恩師の一言
多摩美術大学大学院を修了後、上田さんが日本画家としての道を歩み始めてから20年近くが経とうとしている。百貨店の美術画廊などへの展示を中心に日々忙しく創作活動に取り組む上田さんが日本画と出会ったのは、上田さんが高校3年生の時、父親が夕食時に何気なく持ち出したとある話題だったという。
「父親はデザイン系の仕事をしていて、その関係で日本画について授業を受ける機会があったようなんです。それで、ある日の食事時に『日本画って面白いんだよ』と言って日本画について面白そうに細かいところまで教えてくれて。それまでは絵を学ぼうと思ったこともなかったのに、話を聞いているうちにどんどん興味がそそられていくのを感じました。その流れで美大というものの存在も知り、絵は昔から好きだったのもあり美大を受験してみようと決意しました。」
無事に美大に合格した上田さんだが、大学入学当初は「絵描き=食べていけない」というイメージが強く、卒業後は一般企業に就職しようと考えていたそう。そんな上田さんも、入学後に触れた周りの同級生たちの熱量の高さに影響され、絵を描くことの楽しさにのめり込み始める。さらに画家としての一歩を後押ししたのが、とある恩師の一言だった。
「そもそも志望校を決めるときの決め手になったのが、その大学で教鞭をとっていた平松礼二先生という方の存在です。美大予備校のクラスメイトから平松先生の話を聞いたとき、初めて聞いた名前にもかかわらず何かがビビッと来て、この大学を受験しようと決めました。実際、大学3年生の時に平松先生に絵を講評してもらえる機会があり、その当時の全力を出し切った風景画を作成したところ、先生から絶賛していただいたんです。その時に『君は絵描きの道に進みなさい』と言っていただいたことが、僕が日本画家として活動しようと決めたきっかけです。その時胸に浮かんだ熱い想いはいまだに自分の中で燃え続けていますし、きっとこれからも消えることはないと思います。」

絵に誠実に向き合い、探し求める”テーマ”
インタビューを通じてもっとも印象的だったのは、質問に対して慎重に少しずつ言葉を紡いでいく誠実な姿勢だ。“今までで最も自分らしいと感じる作品は?”という質問を向けた時も、誤魔化すことなくひとつひとつの言葉を考えるようにこう答えてくれた。
「作品を描いたその瞬間は『やり切った、最高傑作だ』と感動したり達成感を抱いたとしても、時間が経って見返すと『今ならもっと上手く描けるのに』という気持ちが先に来ることが多いです。それは絵を描く技術が上がっていることもありますし、面白いと思うものや興味を持つもの、いわゆる描く対象になるものが変化していっていることも理由のひとつかもしれません。」
確かに上田さんの作品群を見ると、風景画や静物画があると思えば、動物をモチーフにした作品も多くあり、描く対象が変遷していることが分かる。絵のテーマについて上田さんはこうも語った。
「画家にとって”テーマ”というのはとても重要なもので、『自分は生涯これを描き続ける』と覚悟を決めて、何を言われても貫き通す人も多くいます。それは画家の美学だと思っています。恩師である平松先生も、フランスで出会ったモネに感銘を受けて以来、ジャポニズムをテーマに作品を作り続けています。なので、僕自身もテーマを探し続けているというのが近いかも知れません。一生描き続けることになるものだからこそ、無理矢理これだと決めつけるのではなく、いつかビビッと来るものに出会えたらいいなと。そのためにも、コロナ禍で外に出られなかった約3年間を取り戻すように、少しずつ色々なところへ足を運ぶように心がけています。」
絵に対して嘘をつかない上田さんが、どのようなテーマを見つけるのか、またそこに辿り着くまでにどのように変化していくのか楽しみである。

思う存分表現できる場を求め、仲間を探す
大学院を修了後、平松先生を師事し、同氏が主導する画塾で活動するため群馬県吾妻へ移り住み、町おこしの一環で中之条ビエンナーレなどの立ち上げに携わったという上田さん。それ以降は平松先生に声をかけられてグループ展に参加したり、個展を行ったりなど精力的に活動し続けてきた。この10年ほどは百貨店の美術画廊への出展が主な活動になっているというが、上田さんにはどうしてもやりたいことが2つあるのだという。
「1つは個展です。美術画廊への出展は勉強になることもたくさんありますし、ありがたいことにコンスタントに声をかけていただけることで忙しくさせてもらっています。ただ、どうしても場所や大きさなどに制限があるので、自分が描きたいものを100%表現することは難しいのも現実です。特に大きい絵は購入されづらいこともあって美術画廊では中々出展できません。なので、自分の好みの展示場所で、迫力のある大きな絵を飾れるような個展を開きたいですね。そのためにはまずは自分が納得のいく作品を数多く描かないといけないので、今は少しずつ描き溜めている段階です。」
「もう1つは、グループ展を開くことです。10年ほど前、平松先生が所属していた”横の会”という日本画家の一時代を築いたグループに憧れて、自身でもグループを作ったことがありました。ただ、当時は若かったので反省点も多く、中々活動が続いていないのが現状です。絵に対する価値観や気が合う人たちと集って、本音で議論を交わしながら発展していけるようなグループを作って活動したいですね。それこそ個展を開いた際には、そういう人たちとの出会いの場にもなればいいなと思っていたりします。」
日本画家として20年近く活動を続けている上田さんだが、画家としての活動はまだまだこれからだという情熱が強く感じられ、今後のますますの活躍が楽しみになるインタビューだった。

EXHIBITIONS展覧会情報
2023.02.01 ~ 2023.02.28
WEBグループ展|早春の花図鑑
2月のWEBグループ展は、 「早春を飾る花木」「鮮やかな色合いの花々」 をテーマに開催いたします。 お部屋のアクセントになるような華やかなアートを 多数...