ご挨拶 子どものころ、紙一枚と鉛筆一本あれば遊び相手がいなくてもあまり退屈するということはなかった。子ども向け月刊誌の少年画報やおもしろブック、冒険王などに載せられている挿絵画家の作品やマンガのキャラクターなどをその紙の上に写してひとり遊びをしていた。 根が絵を描くことが好きなものだから続けているうちに、挿絵の武者姿や馬などをそっくりに描けるようになり自分ながら自分の上達ぶりにびっくりしたものである。 自信を持った私はさらに戦闘場面の戦車や兵隊、ヒコーキなどを敵味方二手に分けて、その上自分の口で戦闘場面を演出して「ブーン!シュルシュルシュル~、ドカーン!ダッダッ!」などの擬音を口でつけ、ひとり遊びに没頭したものである。 クレヨン画はひとり遊びの延長線上にある。 同時代、母に連れられて見た母の故郷の風景、自分が生まれた町のねぶた祭りなど、灯りのにじみ出る様な光景を想い出の中から拾い上げたものばかりであるが、クレヨン画も想い出の中から、楽しかった忘れられない光景を拾い上げたものばかり。 廃校になった小学校の黒板を譲り受けて、好きな図柄を一枚の西洋紙から黒板に広げたクレヨンの黒板画は最初に白いクレヨンで全体を塗りつぶしてからデッサンし、塗り重ねながら描き上げた。自分の画業の世界で何を描くかいつも迷わなかったことが幸福だったことである。 2022/3/21 孫内 あつし